精霊
説明回みたいなもんです
聖夜の意識は宙を舞っていた。
──眩しい…なんだ…?
聖夜の意識がゆっくり覚醒していく。
──ここは─
「起きたか。」
「はあ…おはようございます?」
──俺は生きているのか…?それにこの部屋、木で囲まれている。ログハウスか?
目の前には白髪で長髪のお爺さんがいた。そしてそう思うのも無理はない。聖夜の体には傷はついていないうえにベッドで寝かされていたのだから。
「あの…ここは、どこですか?病院ですか…?」
「ふむ、ここは精霊界と呼ばれる場所じゃよ。」
「…は?」
──え、ちょっと待て待て、精霊界ってなんだよ。話が読めないじゃねぇか!
だかこの物腰の柔らかそうなお爺さんが嘘を言っているようにも見えないのだ。
「…精霊ってあの草木や花に宿ってると言われているあの精霊か?」
聖夜はすでに敬語ではなくなっているが頭が混乱しているため全く気づいていない。まあお爺さんも気にはしていないのだが。
「そうじゃ、その精霊じゃよ。」
「そう…なのか、でもどうして俺はここに?」
──にわかには信じがたいが、今は状況の把握からかな。
「そうじゃの…、精霊っていうのはどこにでもおるものなんじゃ。それでお主が死んだと聞いてお主の魂をこっちに持ってきたんじゃ。身体は直しておいたわい。ほっほっほ。」
やっぱり死んだのか。なんて野暮なことは聞かない。
ここが病院でない時点で生きている可能性を捨てていたのだから。
「ちょっといいか、精霊はどこにでもいると言ったけどなぜ見えないんだ?」
「なぜ…か、説明は難しいんじゃが、簡単に言えば精霊というのは概念なんじゃよ。本質的特徴である身体のない中身だけの存在じゃ。だから見えないだけで存在はするのじゃよ。ただ特徴であるはずの身体がないということはで個性と人格がとても濃いのが偶に傷なんじゃがな。」
「…つまり精霊には変な奴が多いってことか?」
──この人も多分精霊なんだろうな。
聖夜には難しかったようでその言葉にお爺さんは苦笑しか出てこない。
「まあそういうことじゃな。ほっほっほ。それで次にお主をここに呼んだ理由じゃな。」
「…ああ、頼む。」
そう言った瞬間お爺さんのいかにも好好爺です。みたいな顔から真剣な顔になったのを見て聖夜も顔を引き締める。
「その理由とはな、お主の世界とは異なる世界で──
「ちょ、ちょっと待ってくれ!その異なる世界っていうのは地球のあった世界とは違う世界ということか…?」
──頭がこんがらがりそうだよ。自分で聞いてて変な質問だとは思うが。
混乱しても無理はない。異世界なんて漫画やゲームでしか馴染みがなかったのだから当然なのだ。
「そういうことになるかの。じゃがお主の世界と同じように人がおる。何が違うかと問われれば亜人や魔人もおり、魔法というものがある。そして何より、人の命が軽い。」
「亜人…?魔人…?あと魔法って…」
──亜人や魔人は分からないけど、魔法ってゲームとかで出てくるあの魔法か?それに人の命が軽いだって…?
聖夜は別にオタクと呼ばれるような人種ではないためそういう言葉には疎いのだ。
そして最後の言葉に息をのんだ。
「うーむ…、例えば犬の亜人がいたとするならこの亜人は人間よりも鼻が利くし足も速いという風にすぐれておるんじゃ。そしてその特徴として犬の耳と尻尾がついてたりする。」
「つまり猫の亜人だったら猫耳がついてすばしっこかったりとかそんな感じなのか。」
──ある意味特定の人種が喜びそうだな。
聖夜は学校の友達を思い出して微笑んだ。
けれどもその友人に一度だけ無理やり聖地と呼ばれる場所に連れていかれ、さらにはメイドカフェにまでも連行されてしまい猫耳メイドに免疫のない聖夜は恥ずかしすぎて注文する前に走ってカフェを出て行ってしまったことを思い出し顔が真っ赤になる聖夜であった。




