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ニセモノ

想像するとちょっと怖い話ですが、極力、そういう表現は控えてあります。

僕の中に”いる”ものが何なのか、確かめてみようと思った。

何がこの掌を流れていて、どうやってこの指を温めているのか。

ただ確かめてみたかっただけなんだ。


でも、出てきたのは赤いだけの液体。

がっかりだ。こんなものが僕を生かしていたなんて。

もっと違うものを求めていたのに。


神様、僕を動かすのは本当にこんなものなんですか?

たったこれだけで僕は生かされているのですか?

ねぇ、神様。人間なんて、こんなつまらないものだったのでしょうか?


裂け目から流れる温かい液体は流れる時とともに冷たく固まって、動かなくなった。


二日後。僕が確かに切った傷口は濃い赤から紫に変色していた。

一週間もするとそれは塞がるどころか広がっているように見えた。

脈動する手首から、じわり、じわりと滲み出てくる液体に僕はワクワクした。

やっぱり、”あれ”だけが僕を動かしているんじゃなかった。

そう思うだけで嬉しくなった。


それから段々と薄い膜ができて、その中に何かが生きている気がした。


ある日、パチンと弾けた膜の中から白い管のようなものが生えてきた時、

僕はゾッとした。

身震いする体を抑えつけるので精一杯だった。

一日ごとに外に這い出してくる細く長いもの。

生えてきたのは根だった。


体の中を、外を。乾いた白い根っこが伸びていく。

初めは服に全て収められる程度だったが、根は足へ、首へと伸びていって

やがて僕は僕から生えてきた”それ”に全身を覆われるまでになり、

繭のように暖かいその中で眠るように目を閉じた。

白く暖かいそれの中で、僕は意識を手放した。


僕が望んだものとは違ったけれど、確かにそれは僕を生かすものだった。

そして僕を殺してしまうものになり、僕はいなくなる。

いつかこの根はまた「僕」を作り出すのだろうか。


僕は、その先を知らない。

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