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燕の声
バイト先のコンビニに燕が住み着いた。
おかげで僕が出勤して一番にやる仕事は地面に落ちた糞の始末だ。
しかし、水で流しながらブラシで擦ると店長からは水の無駄遣いだと文句を言われ、
水を節約するとタイルにこびり付いた糞を流し切れず、先輩から嫌味を言われることになる。
勝手に住み着いた奴のせいで、何故僕がそんな目に合うのだろう。
一生ここで働く訳じゃない。
大した収入にもならない。
惰性で続けているような仕事だ。
苛立ちをぶつけるつもりで見上げた巣から落ちそうな程身を乗り出した雛たちは
大きく口を開け、叫ぶように餌を求めていた。
ただ我武者羅に生を求める彼らに此処にいる意味も見出せない男は言葉を失い、口を閉ざした。