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第二十一章 愚者たちのクリスマス


飯山と会ったその翌日から、俺はそれまで以上に勉強するようになった。

つくづく馬鹿な男だと思う。しかし、これが俺という人間なのである。仕方ない。

もちろん、理由はそれだけではなかった。家に帰って、久しぶりにプラス思考になった頭で考え直してみて、初めて俺は、自分が多くの人に期待されている、という考えに至ったのだった。

しかし、これまで何もしてこなかった分の代償は重かった。

十二月初め、周りの大半がセンター試験の過去問でそこそこの点数を取る中、俺はいまだに六割台を抜け出せそうにない状態であった。もはや間に合わないかもしれないが、それでも俺は必死でやり続けた。

あの予備校の冬期講習も申し込んだ。これはもちろん、自分のモチベーションも考えてのことである。

次第に勉強以外のことは考えられなくなってきていた。そんな矢先、ある笑える事件が起きたのだった。


十二月も中旬を迎え、世間はすっかりクリスマスモードに染まっていた。

放課後の教室にはいつものメンバーが集まっていた。

「お前ら、どうせ今年も寂しいクリスマスを過ごすんだろ」突然、小村が勝ち誇ったように言い放ち、そして笑った。

「小村、お前こそどうなんだよ」徳元が苦々しい顔をしながら言った。

「内緒」小村はニヤニヤしながら言った。一同がひどくイライラした。

「お前、飯山にも飽きたのかよ」俺は半ば呆れながら言った。まったくもってこいつはどうしようもない奴である。飯山にも飽きて、ほかの女にうつつをぬかそうというのか。それなら赦せない。飯山に謝れ。頭が削れるくらいに地面に頭をこすり付けて土下座しても足りない大罪である。

「ほんと、チャらい男ですねぇ」徳元が小村のほうを向いて言った。

「お前ら勘違いしてるわ」「まあ、詳しいことは秘密だ」そう言うと小村は上機嫌に笑った。

その後ろにいた藤岡もまた、ニヤニヤしていたのを俺と長沢は見逃さなかった。

「おい、藤岡、何笑ってる」長沢がピシャリと言った。こいつはどうやら本気である。みっともない。

「なんもないよ」藤岡が相変わらずニヤニヤしながら言った。

俺はもはや追及する気にもならなかった。というのも、もし、もし、仮に、こいつがクリスマスに女の子と一緒に過ごすようなことがあれば、学年の男子の約半分が発狂するに違いないからである。それだけは避けたい。

教室に居合わせた数人の男どもの間に不穏な空気が流れたまま、時間が過ぎていった。


月日は流れ、忘れもしない十二月二十四日。

その日は終業式の日だった。俺は夕方に冬期講習が入っていたので、手早く帰る準備をしていた。

すると後ろから藤岡が近づいてきた。ニヤニヤしている。何をしようというのか。

「今日は面白いことになるぞ」藤岡はそう言うとケタケタと笑った。

「どういうことだ」俺は藤岡に聞き返した。

藤岡が悪魔的な笑いを浮かべた。こいつ、何を画策している。

(第二十二章へ続く)

















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