追放、そして邂逅
「ここが迷いの森か」
勇者レオンがつぶやいた。
「ここに聖剣があるんだな……おいカイル!」
呼ばれて前に出る。
「分かってるな?」
俺は軽くうなずいて森の中に入っていった。
この森は文字通り人を迷わせる。森自体に意思があり聖剣を守っているのだ。
資格なきものは入ったが最後死ぬまでさまよい続けることになる。
だが俺にはそんなの関係なかった。
精神干渉耐性S——それが俺の特性だった。
しばらく森を進んだところで引き返す。
「大丈夫みたいだ」
「うむ、では行くか」
こうして勇者パーティー一行は森に入った。
「不気味な森だな……」
レオンが言った。
「そうね……これだけ魔力が濃いのにさっきからモンスターの気配が一切ない……」
魔術師フィーネが返す。
「本当にここに聖剣があるのか?」
剣士ガルドが言った。
「間違いありません。聖なる気配を感じます……」
聖女セシリアが答えた。
しばらく歩いているとレオンが叫んだ!
「おい、ここはさっき通った道だろ!」
「本当だわ。確かにさっき通ったわよ!」
「なんてことだ!俺たちは道に迷ったのか!?」
「神よ……」
勝手に盛り上がってるところ悪いが、道に迷ったわけじゃない。
さっきから印をつけながら進んでいるから一度着た場所というわけでもない。
だというのにこの慌てようは森が精神干渉しているせいに違いなかった。
「大丈夫だ。こっちから魔力の気配がする」
「嘘よ!そっちの方向にはなにも気配を感じない!」
「おい!カイル!お前が大丈夫だって言うから森に入ったんだぞ!どうしてくれるんだ!」
「大丈夫だ。俺の精神干渉耐性はSだ。安心してくれ」
「そ、そうだよなSだもんな……大丈夫だよな……」
なんとか皆をなだめながら先に進む。
するとしばらくしたら開けた場所に出た。
そこには石できた土台があり、その中心には一本の剣が台座に刺さっていた。
柄は青く細かな装飾が施されていた。高貴な印象を与える剣だった。
「おぉ!あれはまさしく聖剣!」
レオンが色めき立つ。
レオンはゆっくりと剣に近づき一気に引き抜いた。
すると一瞬剣が光を放ち、それに呼応するかのように木々が動き、森が割れていった。
「これは……?森が出口まで案内している?」
「聖剣に認められたからなのかしら?」
「神の奇跡です……」
「聖剣ユグドラシオンに認められた俺は真の勇者ってわけだ」
これでようやく旅の目的の一つが達成された。
「ということでカイル。お前はもう休んでいいぞ」
「そうか。帰りは道案内も必要なさそうだしな。でも休むのは宿に帰ってからにするよ」
「いやいやそうじゃねーよ。お前をこのパーティーから追放するっつってんの」
「何故……?」
「何故じゃねーだろ。精神干渉耐性以外役立たずのお前をこれ以上パーティーに入れておく理由があるか?」
「ここまで皆でやってきたじゃないか」
「そう、皆でやってきたんだ。戦闘じゃほとんど役に立たない鈍感なだけが取り柄のお前を守りながらの旅は苦痛だったぜ。王命だから仕方なく連れていたが、それももう終わりだ。聖剣が手に入ったらお前の役目はもうない」
「そうか」
「田舎に帰って精々農作業でもしてるんだな」
そう言い残してレオン達は去っていった。
去り際に
「ついてくるなよ?」
と言い残して。
ついてくるなよも何も帰り道一緒なんだがと思いつつ……しばらく待ってから帰ることにした。
だが、そこで俺は一つの事実に気づいた。——森の中にまだ大きな魔力の気配がある。
俺はその気配に向かって進むことにした。
俺は進みながら魔獣かなにかだったらどうしようと考えていた。
レオンの言う通り、俺は戦闘能力が低い。そんなのと遭遇したらひとたまりもない。
だがその大きな魔力には移動する気配がない。生き物の気配とも違っているようにも思える。
何より確信めいた予感があった
しばらく進むと開けた場所に出た。
そこには岩に刺さった一本の剣があった。
深々と岩に刺さった刀身は黒く柄には赤い宝玉が埋め込まれていた。
そっと近づき柄に触れる。そして一気に引き抜いた。
するとどこからか声が聞こえてきた。
「よく私を開放してくれたわ」
しかし辺りを見回しても誰もいない。
「何処をみてるのよ……ここよ、ここ」
よく聞いてみるとその声は俺が持っている剣から発せられていた。
「剣がしゃべった……!?」
「何を驚いているのよ。私ほどの魔剣になれば話すこと位わけないわよ」
「そうか。そういうもんか……」
「そうよ。それよりあんた仲間に見捨てられたみたいね?復讐する?協力してもいいわよ」
「まさか」
「サクッと言ってサクッと殺してきましょうよ」
「相手は勇者だぞ?俺なんかが敵うわけない上に、殺していい訳もない」
「ふぅん。お堅いのね。まぁいいわ——」
——瞬間、剣が光ったかと思えば目の前には少女の姿があった。
年のころは16、7、長い黒髪を頭の横で二つに束ねていて、目は鮮血のように赤かった。
「じゃ、世界滅ぼそっか」
……はい?
冗談には聞こえなかった。




