6/6
第6話「黒い航空券」
「ぜったいに誰にも話さないでね!」
少年は、真っ黒な航空券を差し出してきた。
端には『ARIZONA / One Way by ✟クロノ・来栖✟』と印字されている。
乾いた空。
でかすぎる街。
サンズが全盛期で、ダイヤモンドバックスが生まれたばかりの頃。
「ミスタービッグマウンテンになりたくてさ……」
アリゾナの太陽に当たっただけで、自分もレゲエの波に乗れると思ってた。
根拠ゼロの若さって、ほんま怖い。
何でもあるはずだった。
私だけ何もなかった。
気づくと航空券は消えていて、そこに映っていたのは、
「……今、サラリーマン」
黒い航空券。
片道切符。
マイレージは失効して、代わりに積み上がったのは、“ビッグマウンテン”じゃなくて、机の上の“スモールヒル”だけ。
今日も定時で積み上げ中。




