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第1話「黒いノート」
第1話「黒いノート」
「ぜったいに誰にも話さないでね!」
そう言って、少年は真っ黒なノートを差し出してきた。
ノートの表紙には小さく『History of Black by ✟クロノ・来栖✟』と書かれていた。
怖くなって手を引っ込めようとした瞬間、少年は笑った。
「開いたら、もう戻れないけど…いい?」
恐る恐るページをめくると、そこには見覚えのある文字が、血のように赤く塗られて描かれていた。
そしてページをめくるたび、少しずつ目の前も赤く染まりはじめる──。
思わずノートから手を放してしまい、私は、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「これ、昔書いてた……初めての小説っ!!」
ノートを閉じようと手を伸ばしたが、そこにはもう自分の手しか映っていなかった。
ただ、黒いノートの記憶だけが、私を見つめていた。