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ルナの森  作者: 葉山麻代


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10/11

投棄

「落とし物が、落とした本人に届きますように」

『それはどのような状態だ?』

「既に誰かの物になってしまった物は除外して、落としてしまったけど、未だ見つからずに有る物を、落とした人に返して欲しいです」

『聞き届けた』


 翌日から、側溝に落としたコインや指輪などの小物が、続々持ち主に届き始めた。


 これを祈ったのは、海で指輪を無くした友人を気の毒に思った心優しい少女からの善意の願いだった。


 恋人を亡くし、元気を出してもらおうと思って海に連れ出したのに、形見の指輪まで無くしてしまい、余計落ち込ませてしまったのだ。


 最初のうちは小物が届き、皆ワクワクと朝を待った。起きると枕元に小物が届いているのだ。思い出もあり、皆喜んでいる。無くしたピアスが届き、財布が届き、山歩き中に無くした御守りや、海風に飛ばされて無くした麦わら帽子が届いた。

 善人は良い、届く物も平和だ。


 願った少女の友人の元にも無くした指輪が届き、友人はとても喜んだ。2人で女神の元に赴き、どんなに嬉ったかを話し、しっかりとお礼を伝えた。


 お礼の成果なのか、少し大きな落とし物も届くようになってきた。


 少し素行の悪い人々に、投げ捨てたゴミが届き、枕元が埋まるほど届いた人は戦々恐々とした。火こそ消えていたが、吸い殻が山ほど枕元に届いた人は、回りから軽蔑された。


 大分素行の悪い人々に、不法投棄した大型家具や家電が届き、うっかり押し潰されそうになった者もいた。仕事レベルで不法投棄をしていた者たちは、己の体を頑丈な檻の中に避難させ、朝、押し潰されないようにするのだった。


 有る朝、マフィアの元に(から)の薬莢が届き、家宅捜索の前に海に捨てたはずの違法薬物とピストルが届き、再度、家宅捜索の警察官がやって来た。そのまま逮捕され留置場に泊まると、数日後には枕元に、バラバラにして海に捨てた死体が届いた。

 遺棄した本人すら、腰を抜かした。


 こうなることを予測していた警官が呟いた。

「こう言ってはなんだが、土に埋めた死体は届かないらしいぞ。海に捨てた物は、落としてなくした扱いのようだ」

「なんてこった」


 町はとても綺麗になり、少しだけ平和になった。

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