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『青の会』

とある普通の一軒家。


住宅地の中に埋もれるような、何の変哲もないその住居には、一般人とは言い難い者達が住み着いている。


大きな車が駐車場に到着すると、中から出てきたのは疲れ果てた様子のご一行だ。


「たっだいまー!!」


「おいおいあんまり騒ぐなよ。末広すえひろが起きるだろォ?」


黒髪ツインテールの幼い少女を抱えた楼久が家の鍵を開けて中へ。後続も同じように中へ入っていく。


ツインテール少女を降ろし、ため息で呼吸しているのではと思うほどげっそりした健一が玄関に上がると、


「遅かったね。失敗団」


「おいおォい、そんな言い方ねぇだろォ?」


「ねーだろー!!」


出迎えてくれたのは、ゴスロリ姿のままの泉愛莉夢。短い声掛けには明瞭な怒りが込められており、これ以上刺激してはいけないと楼久は文句を言うのをやめる。


後ろで健一が愛莉夢を見てビクビクと肩を震わせ、縮こまっているが、無視して楼久はソファに腰を下ろした。


その隣にツインテール少女が座ると、そのすぐ隣に別の少女が座った。サイドテールの幼い女の子だ。


漿しょうお姉ちゃん」


「わーずいー!!怪我ない?だいじょーび?」


「うん……お怪我してないよ」


顔が瓜二つでも性格が正反対なこの子達は双子の女の子だ。


一見すると微笑ましい関係の姉妹であるが、実態は何人も人殺しをしてきた大量殺人鬼だ。


「うるせぇな、こちとら寝てんだぞ、騒ぎ立てんなクソガキが」


髄と漿が楽しげに会話していると、幼女の高い声に目が覚めたらしい男が2階から降りてきた。


「末広ォ、ガキは騒ぐもんだぜェ?」


「黙らせることくらい出来るだろクソヤクザ。保護者名乗り出たのお前だろ」


「そう怒んなよ?頭に血が上るぜ?」


「黙れクソが。クソクソクソ」


イライラしながら髪を掻き毟る男の名前は末広樂すえひろがく。このアジトに住み着く『青の会』の一員である。


そして、彼の後ろには、この『青の会』のリーダーである者が立っている。


「S君」


愛莉夢が愛おしそうにあだ名を呼び、肩に抱きついた。その『S』と呼ばれる青仮面こそが、この『青の会』のリーダーであり、最強の殺害者である。


「悪いなS。逃がしちまった」


楼久が悪びれていない様子で謝罪する。青仮面は憤慨することなく頷いた。代わりに樂と愛莉夢が楼久を睨んだが、当の本人は何処吹く風だ。


「楼久は頑張ってたよ?だって急に襲われたもんね」


「おう、そうだぜ」


「その奇襲も予測できただろ」


「出来ても躱せないものってあるだろ?例えば死とかギャンブルでの負けとか地球の終わりとか、な。その類いだ」


目的意識が人一倍薄い楼久は、他の『青の会』と話が度々合わないことが多い。


本人の野望を、他人に話したことは無いが、それでもここにいるのを許されているのは、彼の能力の高さと、髄と漿の世話係になるから。


そして、頼まれたことは全て抵抗せずしてくれるからだ。成功するか否かは置いておいてだ。


1番考えていることを口に出すし行動や顔に表すから、リーダーのSが1番信頼している一員でもある。


「それより、そこの姉妹の母が何か助言を寄越したんじゃないのか?」


健一が髄と漿を見下ろして言う。2人は顔を見合せたあと、大きく頷いて、


「そう!!ママがね、すっごい嬉しそうにしながら言ってたの!!」


「天野快斗の周りの邪魔者を、排除しろって……」


「あの7京人の?あいつは殺さなくていいのかよ?」


「みたい!!ママはその人に興味があるんだって!!」


「あぁ?んだそれ、自分が用があるからほかの相手しとけってか?クソが!!」


怒号を飛ばす樂の周りに赤いオーラが漂い始める。そんな彼を「まぁ落ち着けよォ」と宥める楼久。


だがこの司令に反感を抱いたのは、何も樂だけでは無い。


「S君、どうする?」


愛莉夢が青い仮面を見上げる。眼帯で片目しか見えない少女の瞳に映る男は逡巡する。


「あの男、無能力だと聞いていたが、それとこの姉妹の母が興味を持つことに関係があるのだろうか……?」


「そもそも7京人って人数を殺害したって結果がある時点でおかしいんだがよォ、Sぅ?お前の言ったこたァ正しいんだろォなァ?」


リーダーは頷く。その反応に「そうかよォ」と追加で質問しないのはお利口と言える。


ここにいる者全員でかかったって、青い仮面を付けたSには勝てない。故にこのような擦り合わせの悪い者達でも集うことが出来るのだ。


「とりあえず、S君は疲れてるんだから、今日は終わりでいいよね?」


愛莉夢の言葉に、Sは無言のまま自分の部屋に戻っていく。


リーダーの言葉なしの行動に、皆釈然としないながらも各々の場所に戻っていった。


「なァ漿、髄。お前らの母親ってどんなヤツなんだァ?」


「うーんとね、秘密!!」


「髄ぃ?」


「ひ、秘密……!!」


「秘密かァ。じゃあしゃーないなァ」


「しゃーないー!!」


この何も考えていない3人だけは楽しげだった。


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