4.偉大な魔法使い
「東の魔女が悪い魔女というのは共通しているわね。もしかしたら、あなた方が知っているお話にヒントがあるかもしれないわ」
「え?!」
ロランスの言葉に、私と遥は同時に驚いた。
「オズの世界と共通するものがある可能性か…」
「それだったらオズのような偉大な魔法使いに会いに行けば日本に帰れる?」
しかし、オズの魔法使いにヒントが隠れているとして、私にとっては30年前に一度見た映画に過ぎずザックリとした話は思い出せるけれど、細かい部分は思い出せない。遥はどうだろう。カカシとブリキの木こりと臆病なライオンが存在するのか、不思議な力を得るためには東の悪い魔女の靴をゲットしなければならないのではないか? マルセルの話だと靴を履いたくらいで魔法は使えるようにならないという。だとしたらゲットする意味はあるのか?
そんなことを考えていると、マルセルが口を挟んできた。
「いや、そもそも東の魔女は悪い魔女ではないですから。お師匠、東の魔女とはクレマンス様のことを指していません?」
「あらあら、よく分かるわね」
「師匠にとっては愚痴のはけ口にされる面倒な相手かもしれませんが、私にとっては恩人ですよ」
「あらあら、あの女のことを庇うのね」
「いやいや、庇うとかではなく」
「あの!」
遥が2人の話を遮った。
「あらあら、何かしら?」
「この国で一番強大な力を持つ魔法使いには、どうやったら会えますか?」
遥は聞いた。
それに対してマルセルはムスっとした顔を返して答えた。
「失礼な。この国で最も偉大な魔法使いがお師匠です」
ロランスは驚いたような、でも満更でもないような顔をして笑った。
「あらあら、マルセルったら。照れてしまうわ。ただ、この国で一番強大な力を持つ魔法使いは私だけれど、この世界で最も偉大な魔法使いはサンバチスト様でしょう」
マルセルは「あ…」と思い出したような声を出した。
少し納得していないような顔もしているのが気になるところだ。
「その、サンバチスト様にはどうしたら会えますか?」
遥が尋ねると、ロランスは困った顔をした。
「あらあら、それはとても難しい質問ね」
「会えないということですか?」
「会えないと言うか、彼はある日突然消えてしまったのよ。それで、この世界は彼の加護を受けられなくなってしまって、私やクレマンスのようなそれぞれの国の魔法使いが、配下の村を加護するようになったの」