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第十三話 結論!

(魔王。運が悪かったな)


 と俺が考えた瞬間。


 ギルドがわっと湧いた。


「ほ、本当に来やがったーーー!」


「なんてこった、やったぜ!」


「ああ、まさに相手にとって不足無しだ!」


「俺たち全員でかかれば、魔王なんて!」


「よし、誰が最初に一太刀入れるか、勝負だ!」


「最後のとどめは俺にまかせろ!」


 冒険者たちは大盛り上がりである。

 金銀に輝く武器を高くかかげ、まさに士気は最高潮。


 俺たちが渡した最強の武器は、おそらく千人を超える冒険者たちに行き渡っている。

 彼ら全員でかかれば……魔王さえ、敵ではないだろう。


「みんな、準備はいいな!」


「行くぞぉ!」


 どどどどど……と靴音を響かせながら、彼らはギルドを出ていった。



「わしらも行くか!? 魔王討伐!」


 ビュンビュンと両手の斧を振り回しつつ、カリンがこっちを見る。


「いや……この盛り上がり。


 横から魔王だけ、俺たちがとどめをかっさらう……とか空気読めてない行為だろ。


 皆に任せようぜ。俺はもうひと眠りしたい」


「むう……こやつらの武器が強くなったのは、お主の作戦のおかげじゃろうに。


 そのうえ魔王討伐の栄誉までくれてやるとは、人が良いのもほどがあるのじゃ」


 ため息をつき、あきれ顔をする斧幼女。


「ティム様はいつも控えめですものね」


「弱体士だからな、サポートがメインさ」


 と、俺は聖女に肩をすくめながら答えた。


「その控えめなところが良いのです……


 またお休みになるのなら、わたくしも早めの日課をこなせるというもの」


 うっ、やっぱり討伐についてってみようか……

 いやその場合は、後ろから付け回されるだけか……


「それより朝飯じゃ! いやもう昼飯か!


 まとめて片付けようぞ!」


「そうだな、今日はギルド食堂は俺たちの貸し切りだ。


 給仕のおねーさーん! 注文おねがいしまーす!」




 ▼




 時は少し戻り……




「ははははは、二百年の時を超え! 三度復活の機会を得た!」


 魔王城中心部、『復活の間』と呼ばれる大広間にて……

 魔王ヴィルジリオが、魔法陣の中からその身を起こした。


 一見人間のようだが、瞳は血のように赤く、耳の後ろから大きくツノが飛び出ている。

 かなりの長身、漆黒の長髪をした美丈夫だ。


「二度も敗北の屈辱を味わったが! その屈辱が我をまた強くする。

 

 次こそは、人界など跡形も無く滅ぼしてくれようぞ!」


「ま、魔王様」


 そばで膝を折って魔王に進言しようとしているのは、長年副官をつとめる魔族長ダルランだ。

 魔王と同じようにツノが生えているが、副官のそれは短い。


 ダルランは魔王の復活を待つ間、生き残った魔族をとりまとめてきた。

 そして復活の瞬間まで、魔族を根絶しようとする人間どもを退ける……それが務めである。


「ごくろう、ダルラン。よくぞまた長い間、ここを守ってくれたな。

 

 他のものも、よく耐えた……ん。誰もおらぬな、貴様ひとりか」


「そ、それが……」


 ……


「なに? 二百年どころではない!? 六百年近く、我は復活できずにいただと!?


 どういうことなのだ!!」


 魔王が吠えた。ダルランは縮こまりながら、


「それが、私にも理由が分からないのです……!


 魔王城は大地における、魔力が最も多く流れる龍脈上に存在するもの。


 そこから二百年間魔力を得て、復活に繋げる源となってたはずが!


 どういうわけか、魔力を他の何かに吸い取られてしまったかのように……」


 おそるおそる報告する。


「こちらに流れて来なくなった、というわけか。


 ゆえにそれほどの時間がかかった、と」


「しかし昨日突然、魔力の流れが元に戻りまして。


 そのおかげで急ではありましたが、復活へと繋がったというわけでございます」


「ふむ……しかし。何かの障害が起こったものの、復活は復活だ。


 皆に知らせい。これより人界を攻め滅ぼす事には、変わりはない」


 ここでまた、ダルランは冷や汗をながし、魔族に起こった事を魔王に報告した。


「……なに?! 人間どもが、この城に残った同胞を全滅させた!?


 貴様だけを残して!? 貴様がいながら、なんだその体たらくは!!!!!」


 ごおっ、と台風もかくやという叫び声ひとつで、城全体が揺れる。

 ダルランはいっそう小さくなるが、かろうじて報告の義務を果たした。


「に、人間どもは。かつて魔王様を打ち滅ぼした、あの憎き金銀の武器を……


 オリハルコンとミスリルをどういうわけか大量生産し……


 それをもって、ここへ繰り返し攻め入って来たのです!」


 ぴくりと、魔王の眉がつりあがった。


「な、なんだと……あの、神の輝きをもつ、おぞましき武器を、か!?」


「それはもう尋常ではない数です。同胞も必死で戦いましたが……

 

 選ばれし勇者でもなんでもない、ただの冒険者ふぜいに全く歯が立たず!


 お逃げ下さい、魔王様! もうすぐにでも、」


 とダルランが言いかけたところ、大広間の正面扉が勢いよく開け放たれた。


「……ここにいたぞ!」


「魔王だ! ほんとに復活してやがった!」


「早いもん勝ちだ、うおおお!!」


 つめかけた冒険者たちは、その一人一人が金銀に輝く武器を装備していた。

 そして雪崩を打って魔王へと突進してきたのだ。その数、千人はいるだろう。

 

「……冒険者どもが押し寄せてくるところです」


 ダルランがうなだれた。


「くっ……早く言え!」


 ヴィルジリオが顔を歪ませ、左腕をなぎ払うように振るった。

 腕はダルランを真横からとらえ、吹っ飛んでいった副官は城の壁を突き破ってしまう。


(普通なら、あのような人間どもなど全くおそるるに足らぬ。


 だが、一人一人が妙に力を増している上に、あの武器……


 二度も、この身を打ち滅ぼした、憎むべき輝き……!


 復活への時間が伸びたうえに、同胞は全滅。一体、何が起こっているというのだ!)


 ぎりっ、と歯が砕けんばかりに食いしばった。


「全員キラキラギラギラと、目に痛い装備しおって……!


 くそお、かかって来るがいい! 我こそは、人界を滅ぼす魔王ヴィルジリオであるぞ!」

 

 マントをひるがえし、両手を広げて冒険者を迎え撃った魔王。

 今回の復活は、十分とは持たなかった。


「うぎゃあああああああ!! 理不尽だああああああ!!」


 名も無き冒険者の群れに、寄ってたかって打ち倒された魔王ヴィルジリオ。


 悲壮な叫びを残し、灰と化した。

 金銀に輝く武器を高々とかかげ、冒険者たちが勝ちどきを上げた。



「戦いは数だな!!」

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