突然
ほほほ。第一のヒロイン登場なのだわさ。
「ねえねえ、鶏肉だとどの部位が好き?」
「唐突だな。私が答えた部位を、女に対するセクハラ発言のように編集するつもりか?だが残念だったな。私が好きなのはつくねだ」
「被害妄想が過ぎるのは仕方ないとして、つくねは君の焼き鳥の好みであって、鶏の部位ではないからね。それと、唐突だって言うけど、こうでもしないとさすがに辛いんだよ。分かるでしょ?」
あの一件の後、我がクラスに漂う暗澹たる空気は改善されることがなく、恐ろしいまでの沈黙が守り続けられていた。
「そうか?静かで良いと思ったのだが」
「そりゃあ僕だって静かな所は好きだけど、こんな、独裁者が粛清した後みたいな静かさを求めてるんじゃないんだよ。怖いって」
「怖いな」
「どっちかというと、君が怖がられてるんだけどね」
そういえば、淫売と雄猿が退学になった。たった一度の過ちくらい許してやればいいのに、と水瀬に言ったら、「え、君が言う?」と半笑いで返された。そんな風に言われる覚えはないのだが。解せぬ。
「怖がられていると言ったって、奴らを退学にしたのは私ではないぞ?」
「まあそりゃそうだけど、あの動画を躊躇なく流したのは、間違いなく君だからね~」
「先輩殿はきっと、たくさんの人々に彼女の美しい姿を見せようと願って、私にあれを託したのだ。そうでもなければ、あれほど理解できない行動を、我々の同類がとるはずがない」
「暗に先輩をディスってんのは分かるけど、それだったら、あの動画、ネットに上げれば良かったのに」
「あいつらの醜態で、個人情報特定されたら嫌だろ」
「現実的な理由!!」
なんか私の名前を呼んでたし、奴らが制服で事に及んでいるシーンもあったので、さすがに色々バレそうだ。
「だが、あの動画は消したはずだし、私を陥れようとした証拠もないのに、なぜ退学になったんだろうな?」
「そこはほら、不純異性交遊がどうのとかで、なんやかんやで処理したんじゃない」
「風紀委員会強すぎないか?」
まあ、疑問ではあるが、もう終わったことだと切り替える。
「それで、好きな鶏の部位だったか。私はもも肉だな」
「はい、言質ゲット~。実は録音してました~」
「貴様...謀ったな!」
「消してほしかったら、いいかげん、この空気をどうにかしてくださ~い」
「いや、無理だろ」
「急に冷めないでよ。これでも真剣に頼んでるんだよ?」
☆
二人分の声しか響かない教室で一日の三分の一程度を過ごすと、帰宅の時間になる。
「よし、帰るか」
「あれ~?部活はどうしたのかな~?」
「退部できないなら飛び降りる、と窓から身を乗り出したら、簡単に辞めれたぞ」
「寝取られた後だと言葉の重みが違うからな....」
「ね...ねえ!」
「最初からこうすればよかった、と軽く後悔したぞ」
「なかなか最低な意見だね」
「ね、ねえってば!」
「(なんか、誰かがついてきてるけど、知り合いかい?)」
「突然小声になって、どうした?普通に聞こえないんだが」
「ねえ、聞こえてるでしょ!」
「うお!?なんだ、いきなり」
「さっきからいたじゃないか」
白々しい演技をしておいてなんだが、さすがに、気付かない程耳は遠くない。つまり、この声の主を無視していたのには、それ相応の理由がある。
「あんた、三組の大村よね」
改めて相手を観察する。気の強そうな目とぷっくらとした桜色の唇が印象的な、整った顔立ちだ。背丈は平均的だが、ウェストが締まっているので、綺麗なフォルムに見える。
つまり、見た目は美しい女性ということだ。
「そうだが。そう言う貴女は誰だ」
「はあ?去年同じクラスだったでしょ。なんで覚えてないの?」
「これはすまない。去年のことで記憶しているのは、幼馴染が寝取られ始めたことだけなのだ。他のことに目が行かなかった私を許してほしい」
それを聞いて、あ~そうだったわね、と何かを思い出した彼女は、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ま、まあ、仕方ないわよね。あんたも大変だったんだし。私も、そのくらいで怒るような器の小さい女じゃないわ」
「それはありがたい。では、質問に戻るが、貴女は誰なんだ?」
「私は......」
一瞬ためらった後、彼女は恥じらいがちに、けれども強い意志でこう告げた。
「あ、あんたの彼女よ!」
もし可愛くなかったら、お前、病院送りだぞ。
クソさくしゃ「ぷえ~ん。ポイントが伸び悩んでいるよ~」
神作家「お前の文章が読者を満足させれねえから、俺に奪われるんだろうがwなあ、読者w」
読者「そうよ、神作家の言う通りよ。寝取られたのは私のせいじゃない。私を満足させられないあんたのせいじゃない!」
クソさくしゃ「くっそー。文章に効く精力剤はないのか!」
僕が今日見る悪夢です。




