帰宅
とりあえず、導入終わりです。
これからもよろしくお願いします。
「それで、辞められなかったと」
「まあ、そういうことだな」
あの後、今さら部活に参加する気もなかったので、水瀬と帰路についた。
「いや~、馬鹿だね~。普通に、時間をかけて説得すれば、話を聞いてくれただろうに」
「説得と言われても、どうやって説得するんだ?時間をかけただけでどうにかなるような相手ではなかったぞ」
「まあ、妥当なところだと、「部活の先輩に寝取られたお。けど、あの先輩が悪いというより、運動部みたいな腰振るしかない部が悪いんだお。そんなとこ辞めて、僕は女の子を振り回したいんだお」って感じかな」
「寝取られておいていまだに性欲が残っている辺り、人間の業を感じるな。というか、腰振るのも女を振り回すのも、最終的には同じなのではないか?」
「まあそこはほら、ね?要するにさ、寝取られずに恋愛がした~い、みたいなことを言えば良かったんじゃない?」
「かなりしょうもない理由だが、頭がおかしくなったと思われて、案外いけたかもしれんな」
「でしょ!ああいう頑固っぽい人には、これくらいしかやりようないって」
これだけ人と話したのは、いつぶりだろう。
昨日まで、あの女だけが、自分の全てだった。あの女さえいれば、誰もいらなかった。
あの女を愛していた、幼い頃の自分を信じていた。その想いを守りたかった。あの恋は何だったんだろう。確かに、彼女を愛していた時はあった。だが、それは本当に、彼女に対する想いだったろうか。思えば、彼女を美しいと思ったことは一度もなかった。寝取られる前は、どこか意志薄弱なところのある子だと思っていたし、寝取られた後は、醜い肉塊だとしか思えなくなった。彼女が、偽りでもいいからもっと美しければ、とどれだけ思ったことか。
今、思い出してみると、私があの女に抱いていた愛情は、歪んだ、自己愛の表れだったのかもしれない。
『ねえねえ、美香ちゃん!僕と結婚しよう!』
『うん!いいよ!』
はにかんだ、自分と彼女の顔を思い出す。
あの時の私たちは、確かに純粋だった。そこには「自分」という感覚はなく、ただただ、二人はいつも一緒で、一つの存在ですらあった。お互いのことを想うのは当然だった。
それは、何も考えていなかったということかもしれない。けれども、あの頃我々が感じていた世界、その美しい無垢さだけは本物だった。
ならばせめて、
「だが私は、絶対に寝取られない女など存在しないと思うのだが」
私だけは高潔であろう。君を最後まで汚さないために。
「「女」だけかい?あ~あ。フェミニストに消されちゃうぞ」
「これはすまない。失言だった、全女性に謝罪しよう」
「良かった~。友人にこんなことで死なれると、寝覚めが悪いからね」
「だが、ふと思ったのだが、男は去勢できるが女は去勢できないだろう?その時点で、絶対に寝取られない男はいて、女はいないということが証明されると思うのだが」
「全てを快楽堕ちの観点から考えた、大暴論だね....。ていうか、女性は女性で、避妊手術というものがあってだね」
「それでは性欲が衰えないと、どこかのクリニックのホームページで書いてたぞ」
「なんでそんなん調べてんだよ、はあ..........」
高潔な私の新しい日々が、始まった。
「女性 去勢」で検索した私って............
ブクマ、評価、ありがとうございます。
モチベーションが上がるぜ~~です。




