新しい朝
祝!主人公の名前が決定!
翌朝。
私はいつも通り学校にいた。
「ねえ、あれが.......」
「そうそう、アイツがあの......」
興味、というより嫌悪感が混じった目で、クラスメイト達が私を見る。
「何があったんだ?」
素朴な疑問だった。彼らに嫌われるような行動を取った覚えがない。
その言葉を聞いて、憤ったように体を震わせる者もいたが、答えてくれる様子は無く、皆、冷やかな視線を投げかけてくるばかりだった。
「あれ?知らないの?」
緊張状態を破り、私に話しかけたのは、水瀬という私の友人だった。
「君が、先輩の彼女を寝取ろうとした上に、先輩に暴力をふるったって話。学校中に知れ渡ってるよ」
ほほう。それはなかなか......。
「そうなのか。それは意外だな」
「意外って..。じゃあ、君はやってないんだね?」
「それはどうだろうな」
「ねえ!君、状況分かってる?この話が本当なら、退学させられるようなことなんだよ?」
「可哀想すぎるな。そこまでしないで良いと思うが」
はぁ~、と水瀬は大きな溜め息を吐く。
「まったく....。他人事みたいに言って、本当に他人事なんだろうね?僕は心配してるんだぞ」
まったくだ。友の心遣いには感謝しかない。せめて、心配ぐらいは拭ってやろう。
「そうだ。他人事だ。」
「それはウソよ!」
余りにもあり得ない、あってはならない出来事に、私は戦慄した。
「ちょっと、美香。体は平気なの?」
「そうだよ。昨日あんなことがあったのに。しばらく休みなって」
「いいの。私は平気だから」
あれほど親切にしてやったのにな......。
「私なんかより先輩が....。グス...グス..」
「ちょっ、美香!?やっぱり、あんた今日は休んどきなって。アイツをどうするかは私らに任せてさ」
「グス..。ありがとう..。けど、これは私がやらなきゃいけないことだから」
そして、彼女は口を開いた。
「あんた、なにウソついてんの?私らにやったこと、忘れたとでも言うつもり?」
「そうだな。確かに身に覚えがない」
私は、厚顔無恥な厚化粧女に、彼女にとって最後ともいえるチャンスを与える。
「ふふっ。それで言い逃れできるとでも?」
「........」
やはり無駄か。
「ほら、これを見なさい!!」
馬鹿女が、私にだけ分かるような悪辣な笑みを浮かべて見せつけたのは、私が畜生を教育しているところと、自分自身が無理矢理寝取られた過程を、どうやったのか、間男役を私に置き換えた映像だった。
「うっわ......アイツ最低すぎ.....」
「まさか、本当だったなんて......」
「こんなやつ、死んじまえばいいのに.....」
脳内ピンク女の見せた“証拠”とでも言うべき映像を見て、有象無象どもが勝手なことを口にする。せめて、私に弁明の余地を与えてからにしてほしいが。
「これで決定的になったな。校長に今回の件を報告次第、お前には退学してもらう」
突然現れた担任まで、私の話は聞かずに、あの女を信じるようだ。
「大村.......」
本当に、今日は嫌な一日になった。だが,
「そんな顔をするな、水瀬。お前を心配させまいとした結果、面倒なことになったなんて、皮肉が効いてて絶妙に面白いと思わないか。」
「そんな顔ってどんな顔だよ。いつも通りの笑顔だろ。それに、僕を心配させといた方が面倒が起こらないって意味なら、全然笑えないからね」
私には友がいるようだ。
「なに軽口叩いてんの?美香はこんなに傷ついてるのに!あんた、本当にクズね!!!」
そして、あの女にも。
「たしかにそうだな。無知蒙昧に生きる者達を啓蒙しないのは、良識ある人類の一員として恥ずべき、クズの所業だ。私も誠実になろう」
「はあ?あんた何言ってんの?」
「まず、その映像は事実ではない。私がその発情猿を蹴ったことは事実だが、彼方から殴りかかってきたという事実が欠落している。次に、私が女を犯そうとした件について。五日前、先ほどまで流れていたのと全く同じような映像が、行為の本番ありで、私の元に届いた。これがそのビデオだ」
愚昧な人々に理解させるため、私は、あの女と対等な方法を用いることにした。
「では、流すぞ」
そこに映っていたのは醜悪そのものだった。男は女を征服し、女は肉欲に溺れ、思考を放棄しているようにすら見えた。
「あん!...........ここでやめちゃうんですか?」
「あぁん?なんだ?今日はもう良いぞ。さっさと大村んとこ行戻ればいいだろお、なあw」
「そう....ですけど」
「ほら、何かしてほしいんだろ?言えよ」
「.......イかせてください」
「聞こえねえな」
「....イかせてください」
「あ?」
「イかせてください!!!!!!」
「ん!ん!ぁん!」
「すっかりメスの顔になっちまったなあw」
「そんなこと...ぅん!ありませ..あん!」
「なあ、大村と俺、どっちが好きだ?」
「そんなの........あん!」
「答えによっちゃあ、今止めてやっても良いんだぜ」
「先輩の...イジワル...」
「なあ、どっちなんだ?」
「そんなの.....先輩に決まってるじゃないですか」
「へへへ、可愛いやつめ」
「あ、そんな急にされると...いやん!」
「まあ、こういうことだ」
さっきまで、自身たっぷりに私を責めていた奴等が茫然としている。淫売は顔を真っ青にしている。
間抜けなやつらだ。こんな映像を送りつけて何がしたかったのか。
「そこの女は、寝取られそうだったのではなく寝取られており、その相手は、私に蹴られたアイツ、というわけだ。ご理解頂けたかな?」
「まさか寝取られた側だったとは。御愁傷様です」
「本当に思ってるなら、そのにやけ面をどうにかしろ」
さて、とりあえずこれで解決したか。あ、そういえば、
「そこの淫売女の持ってきた映像、素晴らしい加工技術だっただろう。たしか、先輩(笑)殿のお兄様がCG系のお仕事に就かれていたはずだから、称賛の言葉はそこに伝えると良い。ちなみに私は、名誉毀損で訴える相手を探しているから、お早めに頼む」
「それはお兄様なのか?それとも......?」
何故か皆が震え始めたが、たしかに、こんなに面白いジョークはそう無いな。
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