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姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。  作者: しげむろゆうき


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 ある日、廊下に貼られた学科試験の結果発表を眺めていると、私——メリー・ロルイドにいつも良くしてくれているサマンサ学長が声をかけてくれたのだ。

 「おめでとうメリー。また、魔導技術の試験で一位ね」と、自分のことのように誇らしげな表情でピースサインもしてくれて。


「ありがとうございます、サマンサ学長」


 私がそう言って笑顔を向けると「ふふ、あなたはバルサ王国魔導学院始まって以来の逸材よ。期待してるわ」と、今度はガッツポーズも。何度も頷き、期待に満ちた表情を浮かべて。

 しばらくすると、その表情は徐々に曇っていったけど。


「みんなが、あなたみたいなら良いのだけれど。いえ、少しでもあなたのような模範的な生徒なら……」


 何しろ、サマンサ学長の視線の先には、恋人のように体を寄せ合いながらこちらに歩いてくる二人の生徒の姿があったから。

 しかも、こちらに気づいても態度を改めることもせず……

 貴族であり、校則を理解しているはずなのに。

 それはサマンサ学長が今度は二人の前に立ちはだかり、私が理想とする正しい指導者の姿で 「二人とも離れなさい! ここは学院よ! それにあなた達は貴族としてもっと自覚を持ちなさい!」と、注意をしても。

 二人は反省する素振りすら見せずに険しい表情を向けてきたので。


「ふん、言われなくても誇りはある。それに良いじゃないか。僕らは婚約者同士だぞ」

「そうよ! それに男女が距離を保てとか古臭い風習、今は誰も守ってないわよ、ねっ」

「ああ、ということだから僕達の邪魔をしないでほしい。まあ、それにするならまずは彼らをしたらどうだ? 婚約者同士でもないみたいだし」


 そう言い終わるなり男子生徒はある方向を指差してきて。彼ら以上に仲良さ気に体を近づけて談笑する男子生徒の言う通り婚約者同士でもない男女を。

 しかも、あの二人は……と、思っているとサマンサ学長がバツが悪そうな表情を浮かべてこちらを見つめてくる。

 何しろ、そこにいたのは姉アレッサと、あれだけ近づくのだけはやめてと言ったのに結局はあの状況になってしまっている私の婚約者だったので。


 ジョッシュ……


 私は思わず溜め息を吐く。

 まあ、この溜め息の大多数は彼に対してではなく姉の方にだけれど。どうせ姉の方が先にジョッシュに近づいたのだから。


 それこそ、いつも通りに。


 そう思いながらも、私はジョッシュに幻滅し、姉に呆れていると、どうだと言わんばかりに男子生徒が口角を上げる。


「どうやらジョッシュの奴、頭でっかちでぱっとしない妹よりも美人な姉の方が良いらしいな」


 更にはそんな余計なことも言ってきて……と、私は俯く。

 確かに私の顔は姉のアレッサと違ってパッとしない、そう思いながら……とはならなかったけれど。

 なぜって、そんなことをわざわざ面と向かって言ってくるのは貴族云々よりも紳士……いや、男としてどうなのだろうか? 

 そう疑問がすぐに浮かんだので。


「くっくく、まあ、男なら誰だってそう思うか」


 こんなことを言われたらなおさらと、私は顔を勢いよく上げる。


「あら、あなたの婚約者さんは姉をよく見てるみたいね。もしかして美人な姉に目移りしてるかも? 気をつけてね」


 更にこれからおこるであろう問題への対処を頑張れと口角を上げながら女子生徒……ではなく男子生徒の方に向けて。

 すると私の意図を理解したのか男子生徒は顔を真っ赤にさせながら詰め寄ろうとしてくる……が、案の定、女子生徒が私の前に立ち塞がってしまう。


「いつも、じろじろあの女を見てるってそういう事だったのね」

「ち、違うんだ! ちょっと綺麗だなあぐらいに……あっ」


 男子生徒はしまったとばかりに口を手で覆うが遅かった。ビンタが飛び、そのまま女子生徒は走り去っていったので。

 呆然と立ち尽くす男子生徒を置いて……と、私は彼の耳元で囁く。


「今度、女に向かって暴言吐く時は気をつけてね」


 更には正面に立ち、拳を固めながら消えなさいという雰囲気も出して。


 いや、やっぱり殴ろうかしら。


 そう考えていると、男子生徒が逃げるように走り出す。

 「ひ、ひいっ!」と、その姿はあっという間に小さくなってしまって。

 私は軽く舌を出すと最後まで見ずにサマンサ学長の方を向きなおったが。


「すみません、二人のところに行ってきます」


 それから、「え、ええ、無理しないでね」と送り出してくれる言葉に勇気をもらいながら婚約者と普段からなるべく近づかないようにしている姉の元へと歩き出して。望みは絶望的にないだろうけれど二人はただ会話していただけだと願いながら。

 まあ、すぐに違うことは理解したけれど。


「お姉様、ジョッシュ、ちょっといい?」


 そう尋ねた直後、急に怯えた表情になりジョッシュの影に隠れるアレッサを見て悟ってしまったので。

 また、始まったと。

 そして、また、終わったとも。

 何しろ、この後に私をジョッシュの前で悪者に仕立てあげるための芝居が始まるので。


 泣き真似から始まる演技の開演が。


 そう思っていると早速、アレッサが仕掛けてくる。


「ううっ……」


 そして、それがスイッチになり、勝手に役者に仕立て上げられたジョッシュがお決まりの台詞を言ってきて……


「メリー、君はアレッサに酷いことをしているみたいだな」


 前回と一緒で一字一句間違えずに。


 ついでにその正義面した表情もかしら。


 ああ、だから何度も説明して近づかないようにって言ったのに……と、私は重くなってしまった口を開く。


「私、説明したわよね? ジョッシュ……」


 すると、姉のことを盲信している両親と同じ雰囲気でジョッシュは首を横に振ってくる。


「君の言葉は信じられない。アレッサはこんなにまで苦しみ涙まで流しているんだぞ!」

「そして、あんまりよ、何で私がこんな目にあうのって言うんでしょう?」


 私が淡々と言うとジョッシュは驚いた顔をする。

 まあ、当たり前である。両親、親戚、祖父母、友人達とターゲットに擦り寄る姿やこの光景は何度も見ているので。


「それこそ一字一句覚えてしまうぐらいにね」


 そう呟きながら私をなぜか強制的に孤独にさせようとする存在……アレッサを睨むと、彼女は更に怯えたふりをしてくる。


「わ、私は何度もメリーに虐められているのよ。どうしてそんな酷いことするの? 私達は家族じゃない……」


 そして、お決まりの顔を手で覆って座り込むポーズをしてきて。笑っている顔を隠すために。

 騙されているジョッシュには効果は抜群だけれど。


「メリー、君はなんて酷いことをしているんだ!」


 だって、そう言ってこちらを睨んでくるのだから。


「ジョッシュ、私はやってないと何度も説明しているはずよ」


 こう言っても首を横に振ってきて。

 「だが、実際にロルイド伯爵家で働いている侍女のナタリアからも証言をうけているんだ。姉を虐める悪者だってね!」と、自信満々な口調でこちらを指差してきて。

 「はっ!?」と、私が驚き、思わず唇を噛み締めてしまうことを。

 だって、今までにない行動をアレッサがしてきたのだから。

 つまりはこのままだと、エスカレートしていって今までの虐めの日ではなくなる可能性があると。


 それこそ身の危険も……


 私はそう考え、ジョッシュに冷めた表情で近づく。


「いつ、屋敷にいる侍女に会ったのかしら? もしかして私という婚約者がいるのに内緒で来たの?」


 それから真っ青になり俯く彼にアルタール公爵家の長男がこれじゃあ、お先真っ暗じゃないと内心、突っ込みも入れて。


 ああ、それと姉がいつか手を出すだろうと考えていたから、恋愛感情を持たなくて良かったもか……


 そう考えながらも私は胸がチクッとしてしまい、手で押さえる。ジョッシュとは本当に仲良くやれていたので。アレッサの事も理解してくれてると思っていたし。


 日頃の彼の態度で……いいえ、結局は自分の目が節穴だった。そういうことよね。

 

 「ふうっ……」と、私は小さく息を吐く。

 それから踵を返し、その場をさっさと離れようとも。

 何しろ、これ以上、嘘と偽善にまみれているこの場所にはいられない、そう思ったから。


「もう、私を許してよメリー! う、う、う……」


 アレッサの演技を見たら余計に。

 ただ、そう思いながらも「何を許せばいいのよ?」と、私はその場を離れながら呟いてしまったのだけれど。いつもの癖で。

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