教官、胸ばかり見んなし
アヘール王国と呼ばれ、女騎士が世の平安を司る国がありましたとさ。
王国の女騎士は日夜厳しい訓練に励み、お国のために汗水血反吐、涙涎を酷く垂らして頑張っておりました。
「よし! 本日はここまで!! 明日も早朝五時より訓練を開始する!!」
その場にへたり込み動けない女騎士達の脇を通り過ぎ、鬼教官が訓練場から立ち去った。
「……マジ無理。もう女騎士辞めたい」
新人女騎士である【オマンティーノ・ガバ子】は気まぐれで女騎士になったのも束の間、想像を超えて拷問に近い訓練に嫌気が差していた。因みに、オマンティーノが名前でガバ子が名字である。
「あの鬼教官……ハゲちゃえば良いのに…………」
オマンティーノがぼそっとぼやいた。そしてその日は泥のように眠った。
──次の日、早朝五時に現れた鬼教官の頭は、物の見事にハゲきっていた。
「──ブフッ!」
思わず吹き出してしまうオマンティーノだが、本人はおろか、周りの女騎士達もハゲを気にしてはおらず、いつも通りであった。
「なにこれ超笑える♪」
その日オマンティーノは、相変わらずのハードな訓練にも、気楽に耐えられた。最初だけ。
「よし! 本日はここまで!! 明日も早朝五時より訓練を開始するからな!!」
「あーマジ無理……あの教官全裸になれば良いのに…………」
──翌日、早朝五時の鬼教官は、ハゲきった頭に全裸。全裸であった。
「──ブフォッ!!」
オマンティーノは笑いで腹痛を起こし走るのも脇腹が痛くてしんどかったが、後ろで全裸のハゲ教官が怒っている姿は、どう見ても変態のそれであった。
「よし! 本日はここまで!! 明日は休みだ!! しっかりと自主練に励むように!!」
「誰が休みにやるかっつーの……」
全裸のハゲ鬼教官が立ち去ると、オマンティーノはぼそっと呟いた。
「あーあ、明日はイケメンでも誘惑して遊ぼうかなぁ……」
オマンティーノは自慢の御Gカップを両手で揺らし、荷物を纏めて寮へと戻った。
──翌日…………事件は起きた。
「ふぁ~っ。もう朝? 休みなのにいつもの時間に目が覚めるのなんなん?」
オマンティーノが訓練の時間に目が覚めると、部屋に人影が居ることに気が付いた。
「つーか誰か居るし!! っべくね!?」
「おはようオマンティーノ!!」
それは全裸のハゲ鬼教官だった。
「教官! お、おはようございますでありますですます!!」
条件反射で飛び起き、パジャマ姿のまま気を付けの姿勢でピーンと立つオマンティーノ。鬼ハゲ全裸教官に向かって敬礼をする……が、全裸の鬼教官ハゲの視線は何故か下目を向いていた。
「うむ、実はお前の乳から目を離せなくなった。許せ」
そう言ってオマンティーノの御Gカップを凝視する教官ハゲ全裸鬼。その目付きはいつも通りの厳しい物であった。
「……は?」
「良く分からぬがお前の乳から目を離そうにも離れぬ。顔も目も動かせぬから、横も見えぬ。これから山に魔物退治へ行かねばならない。それで困っているのだ」
ハゲが真顔で乳を凝視しながら、訳の分からぬ事をほざいているなと、オマンティーノは思った。しかし、オマンティーノが左右に動く度にハゲ全裸教官の顔と目が、嬉しそうに左右に動いた。
「すみません。休みなので寝ます」
オマンティーノが教官に背中を向けると、光の速さで教官がオマンティーノの前へと回り込んだ。
「よし! 治るまでお前も来い! これも訓練だ!!」
「えっ!? マジ? ヤッベ、軽く死にてぇ……」
教官が後ろ向きに歩きながらオマンティーノの手を引いた。そして目は乳へと向かっていた。
前を見ずに歩く全裸ハゲ鬼教官は、街行く人々の恰好の的であったので、手を引かれるオマンティーノは尋常では無いほどに恥ずかしく、穴があったら今すぐに教官を埋めてしまいたいくらいであった。
「着いたぞ!!」
二人が山へと辿り着くと、大型の熊型モンスターが暴れていた。
「いかん! 早く退治せねば!!」
「つーか教官前見ろし!」
「お前の乳しか見れん!! 逆になってくれ!! 俺と魔物の間に入るんだ!!」
「あ、教官天才じゃん!」
クルリとオマンティーノと教官の位置が変わり、ハゲ鬼全裸教官の視界の隅に、魔物の体の一部が映り込んだ。
「分かったぞ! 離れれば良いんだ!!」
「ヤッバ、教官天才過ぎ」
教官がオマンティーノから五メートル程離れると、視界が広がり、熊型モンスターの全体像が視界に入ってくるようになった。
「よし! これで見える!! 退治するぞ!!」
全裸の鬼ハゲ教官が、腰に下げていた剣を抜き、そして構えた。
「うむ! 届かん!!」
「アホー!!!!」
オマンティーノの叫びと共に、教官がオマンティーノに向かって走った。目の前で立ち止まり、剣を握る教官。しかし視線は乳へと向かっている。
「まるで敵が見えん!!!!」
「ヤッバ! 教官アホスwwwww」
危機迫る状況に笑いしか出ないオマンティーノ。その時、全裸のハゲ鬼教官が妙案を閃いた。
「分かった!! お前の乳を透視する!! これで敵が見えるぞ!!」
オマンティーノの御Gカップの目の前に顔を持っていき、眼を閉じて祈り始める教官。
「乳よ透けろ乳よ透けろ乳よ透けろ乳よ透けろ乳よ……透けろ!!!!」
カッと思い切り目を見開いた鬼ハゲ教官の目の前に映し出されたのは、オマンティーノが着ているパジャマだった。
「パジャマが透けない!! お前パジャマ脱げ!!!!」
「はぁぁぁぁ!?!?」
「乳は透けてる筈だから脱いでも差し支えないだろう!? 早くするんだ! 熊に襲われて死んでもしらないぞ!!」
オマンティーノの後ろではモンスターが暴れており、今にもオマンティーノに襲い掛からんとする勢いであった。
「マジ!? マジ!? マジ!?!?」
オマンティーノは慌てて服を脱ぎ始めた。全裸の鬼ハゲ教官は、再び眼を閉じて集中力を高めた。
「教官脱いだ脱いだ! はよはよ!!」
涎を撒き散らしながら暴れるモンスター。
「うおおおお!!!! 乳透視行くぞー!!!!」
鬼教官が気合の雄叫びを放ち、カッと目を見開き、意識を乳の向こう側へと飛ばした。
──そこにはシリコンが二つ見えた。
「なんだこの物体はー!!!!」
「ヤッベ、バレちったwww」
「もう良い! 眼を閉じて戦う!!」
眼を閉じると顔を動かせる事に気が付いた鬼ハゲ教官は、オマンティーノの脇をすり抜け、熊型モンスターに立ち向かい、互角の死闘を繰り広げた。
「安心しろ! 俺はこのくらいで後れを取らぬ! お前のことも守らねばならないからな!」
「教官パネェ……ヤッベ、超惚れそう」
「そうか! 俺と結婚したらガバ子じゃなくなるぞ!? 良いのか!?」
「マジで!? 真面な名字になっちゃう系!?」
「そうだ! 『オマンティーノ・ユル子』になるぞ! どうだ、嬉しいか!!」
「……軽く死にてぇッス…………」
オマンティーノは後ろから鬼ハゲ全裸教官を蹴飛ばし、熊のエサにして逃げ出した。




