第6話 死を乗り越えし強者
どうも、あのね このなです!主人公のリューマはとても弱い設定ですが、徐々に最強になっていきますよ!かなり時間かかりますが…
「ガァア!?」
老猿は顎は地面に届くくらいの大きな口をあけて驚いていた。
リューマは老猿がやってみせた時と同じ姿勢、構えで魔力を手に集中させ、大きな氷の弓を創ってみせた。文句なしの観察力である。
「「氷!?」」
老猿に限らず、カミラもその能力に目を疑っていた。彼女はまだリューマの力を目にしてはいなかったのだ。
そしてリューマは弓をしっかりと引っ張り、木をめがけて矢を射った。その風を切る音は光り輝く紫色の氷の矢に混じって、さらに綺麗に響いてきた。しかし、矢は気には当たらなかった。
「あぁ、射撃は難しいな。」
「「ダァア!?」」
老猿とカミラは更に驚いた。
「よせよ、照れるじゃないか。て、ダァア!?」
頭をかきながらにやけていたリューマが振り向いたその先には、人が凍っていた。紫色のその氷は他の誰もでない、リューマの能力。恐らく氷弓は捕らえた獲物を凍らす力が秘められている。
「あの服装は政府軍!」
「政府軍?」
「数日前に宇宙船が落下してきたのじゃ。生き長らえるはずもないと思っていたが、よくぞ捕まえてくれた。君はやはり強者じゃの。」
「いや、木を狙った。」
真っ白な宇宙服。胸には赤と緑、青、黄色の十字架のマークがあった。政府軍のロゴである。
「おい小僧、この島の動物を狩るために来たじゃろ! 全てを吐けぃ!」
「あんた、さっき宇宙船が落下した言ってたでしょ!? 生きて帰るための宇宙船を犠牲にしてまで来るか、普通。そもそも凍ってるから答えられないでしょ!」
カミラはツッコミを忘れない。
「あ、そうじゃった。若僧、こやつを溶かしてくれ。」
しかしリューマは反応も見せないまま、腕を組んで考え事をしていた。
「聞こえてるか若僧?」
「おーい、変人?」
んー、どうやって氷を解くんだ、アイラ?
「さぁね、私も試したことないわ。」
だよな。
「「聞いてんのかこらぁ!?」」
「無理だ!」
「何が無理だ? 若僧の能力だろうが。」
「そうだけど解かせねぇ! 焚火の近くにでも置いとけな溶けるやろ。」
「まぁ、そうじゃな。とりあえず修行をしようか。その間に溶けるじゃろう。」
「「修行!?」」
2人が驚くのも無理はない。唐突な質問すぎた。
「猿爺さん、なんで修行を?」
老猿は杖を石にかけ、不器用に作られた木製の椅子に腰をかけた。
「お主のような若僧を見てるとわしの船長を思い出すんじゃよ。だからなんとなく強くなって欲しくてのぅ。」
「なんだそれ。」
ケンのゲームは本当に変なとこだけよく作られすぎだろ。
そして老猿はその船長のことを語りはじめた。
「あれは確か、わしがただの負け組だった頃。突然わしの目の前に頭を下げてきたのじゃ。その野郎の名はマイクリー。」
するとカミラは目を輝かせていた。
「マイクリーってあの太陽のマイクリー!?」
「いかにもそうじゃ。」
「キャァ! 私、大ファンなの!」
「ブハッハハ。立派な海賊じゃったよ。宇宙じゃけどな。」
本当にどーゆー設定だよ? 宇宙だ? そう言えばもしかしてトゥエルヴガーディアンズも宇宙関連なのか? めんどくせぇな。
「どこで止まったけな…あぁ、そうじゃった。あれは確か、わしが負け組だっ…」
「「最初からはじめないでくれ!」」
「すまんすまん。マイクリーはとても馬鹿な奴じゃった。」
舐めてんのか、この猿爺さん。俺とそのマイクリーが似てるって話で馬鹿かよ。
「事実でしょ。」
黙れ。
「だが、己の可能性を決して疑わなかった。彼はただの剣士で能力があった訳でも、魔導士だった訳でもないが、彼は数々の敵を斬ってきたわぃ。負けたことは何度だってある。数えればキリがないほどにのぅ。」
やっぱこいつ俺のこと舐めてるよな。
老猿は落ちている小枝を1つずつ拾って割り、焚火の原料としながら続けた。その舞い上がる炎はまるで物語を写すかのように踊る。
「しかし、負ける度にその力は増していった。生と死の間を何度も何度も彷徨ってきた男じゃ。勝てない敵と戦えば戦うほど強くなってやがったのぅ。その不死身さ故に、燃え尽きることのない太陽と似てることから、太陽のマイクリーと呼ばれるようになったのじゃ。」
それ、俺関係ないよな。この猿爺さん、脱線してない? ねぇ。
「だが彼はもうこの世にはいない。」
「え、どうしてなの?」
老猿は涙を浮かべながら必死な顔をしていた。やがて涙は溢れ、鼻水を垂らした。
「妖刀じゃ…彼は無茶な男で…世界一恐ろしい妖刀を自分のモノにしたのじゃよ…最初は強くて頼もしかった…じゃがのぅ、最後の銀河で妖刀に魂を喰われてしもうてのぅ…その妖刀は今、マイクリーと共に封印したっ。」
これ以上、言葉を放つことはなく、ひたすら泣き叫んでいた。
「ね、リューマ。今のうちに抜け出そう。」
「でもどこへ?」
「さぁね。」
カミラとリューマは息を殺してゆっくりとその場を離れ、森の外をめがけた。
やがて2人は森を抜け、水辺で脚が止まる。
「なんだ、あれ?」
それはヤギと思われる形をしたドクロを掲げていた。そう、海賊船である。
「幻の島に海賊が!?」
カミラは驚いている。
すると、海賊船から数えきれないほどの人が顔を出した。
「俺たちはヤギ海賊団だ。ここに政府の宇宙船が落下しているはずだ。大人しく渡してくれ。さもないと殺す。ジェハハ!」
副船長らしきゴツい男が叫んだが、リューマは耳を傾けることなく、容赦なく一撃をくらわせた。
「アイスフロアー!」
水面に手を当て、魔力を注いだ。すると、海は氷、船の航路を塞いだ。
「ちょっ、あんた何してるの!?」
「あいつらはヤギのガーディアンの一味だ。いずれ戦う相手、ここで倒せばいいだろ。」
「どういう事情かは知らないけど、めちゃめちゃ怒ってるわよ!?」
「てめぇ!俺たちの船に何しやがるんだぁ!」
副船長らしき者が紫に凍った海賊船から飛び降り、ピストルを手に持った。
「ヤギ海賊団に喧嘩を売るとは、いい度胸だな!若様が許さないぞ!」
「ドスピエールに伝えろ、俺がぶっ倒すとな!」
「ドスティエールだ…」
「あ、それ。」
「だがそれができない。なぜなら、ここでお前は死ぬからだ! ジェッハハ!」
「「そうだ、そうだ! そんな奴、さっさとやっつけてくれルベン様!」」
海賊船に残ったクルー達が声援を送っている。
一方、リューマとカミラは会議中の模様。
「おいテメェら! 状況わかってんのか!? 喧嘩の最中に会議とはどこまで侮辱する気だ!?」
「「黙っとけでかいの!!」」
「どうする?」
「もう船を凍らせたし、こいつらもやっつけるしかないよなぁ。」
「だよね、まぁ、任せたわ。私は無関係だし。」
「おい…」
カミラは手を引き、木の後ろからリューマを見守った。
アイラ、どうする?
「そうだね、これだけの人数だときついから爆弾とか試したらどう?」
おぉ! それ名案だな、さっすが大賢者。
「黙れ。」
「もう会議は終わったかテメェら。」
どうやらルベンは器が小さいようだ。足踏みをしながら退屈そうな顔をしている。
「あぁ、終わったぜ。ところで、お土産だ!」
「ん!?」
リューマは手のひらに氷の塊を造り出し、ルベンの方に投げた。
「寝返ったかテメェ。ん? グッハァ!?」
ルベンはその氷の塊を見事にキャッチしたが、それは瞬時に爆発し、ルベンを含め、そのクルー達を全て凍らせた。
「「やるじゃない。」」
アイラもカミラもびっくりするほどの威力である。
「テメェ…ドラゴンライダーか!?」
爆発の中心にいたルベンはどうやら完全に凍ってはいなかった。
「しつけぇ奴だな。」
「若様も能力者だ。やり合う気なら、覚悟をしておくことだな。ジェハハ。」
「フローズン。」
この作品に出てくる人物や生物、科学的なものは全て筆者の変態な妄想によるものであり、現実とは全く異なる場合がございます。