第5話 幻の島
どうも、あのね このなです!11話はキャラ紹介をするかしないか悩んでいます。キャラ紹介してしまえば、読者の好みのキャラを想像できないよね…難しいですね…
アパリシタ島での事件を終えて海に飛び込んだ2人は行方もなく、バラバラに流されたのであった。
夜という暗闇に圧倒的な光を差す日の出。その明るさによりリューマは目を覚ました。
「あばばばば! って、ここどこだ。」
波に流されたそこは、とある島の砂辺。穏やかな緑に鮮やかな美しい青空。そして遥か彼方まで広がる青い海は芸術を描いていた。
「やっと起きたのね。どうやら私たちはあの後、ここに流されたみたいだわ。アランの魔力も感じない。流される途中で数十匹のピラニアに食べられたかもね。」
あいつは死んでないさ。俺の仲間にするんだからそれくらい乗り越えてもらわなきゃ。
「一度断られたけどね。」
うるせぇ。そう言や、何があったけ? 思い出せない。
「無理もないわ、襲いかかった村人から逃げていたらアランに引っ張られて崖から飛び降りたのよ。リューマは岩に頭を直撃したけどね。」
「あいつ!! んー。結構流されたのかな? アパリシタ島が見えない。」
「どうでしょうね。」
アパリシタ島周辺には数々の島があるため、その海流は必ずどこかの島に流れ着くが、彼の場合は違った。
リューマは森の一角を凝視していた。
「おーい、誰かおるかー?」
何か見えた気がするけどなぁ。気のせいか?
「行ってみたら?」
そうだな。行こう!
砂辺から回り込んだが、気配は感じない。
「どうしたの? 森の中入らないの?」
「虫が嫌いなんだよな。」
「そうなのね。」
「リューマ、私は何も言ってないわよ。」
え!? んじゃ俺の隣に…
「ダァアア!?」
「ギャァア!?」
「ダァアアア!?」
「ギャァアア!?」
リューマが振り向いたその肩には、小さな小さな生物が立っていた。
「蜘蛛だぁああ!!」
「蜘蛛じゃないわ!!」
「ダァ!? 喋ったぁ!!」
「だからエルフだってば!!」
「んえ?」
リューマとそのエルフと名乗る小さな生物はお互いを見つめ合い、見極めていた。
「君何で眼が片方だけ色違いなの?」
「俺はドラゴンライダーでこれはドラゴンアイらしい。俺の中にアイラって龍がいるんだ。てかお前小さすぎだろ。」
それは小石より小さい人間の形をしたメスの生物。
「それでか、聞いたことがあるわ。君、ヒト科を選択したの?」
「んや、巨人族を選択したはずだけどなぜかヒト科になっていた。おめぇは?」
「あたしは見ての通りエルフ。名前はカミラよ。」
「俺はリューマ。いや小人だろ!?」
「まぁまぁ見ときなさいよ。」
「ん?」
極めて小さいエルフのカミラは、何やら呪文を唱えはじめた。すると、その足元には魔法陣が現れ、彼女はリューマの大きさにまで成長した。
「肩がぁ!?」
リューマの肩の上で成長し、2人とも倒れた。彼女は10歳程度だろうか、すごく幼い幼女であった。
「てか驚いたな、服も伸びるのか。」
「これは、とある魔導士にかけられた呪いなの。呪文を唱えると10分間だけ君みたいな大きさにまで成長できるんだよ。服が伸びるのもそのせいかな。」
「なるほどね。」
彼女は唇を血が出る程強く噛んでいた。
「そいつ、悪いやつなのか?」
「あたしにかけたこの呪いに関しては感謝してるけど、スモール諸島のエルフを殲滅し、私だけを残したの。許せない。」
「そりゃひでぇやつだな。でもゲームだし、生き返るんじゃないのか?」
「あたしもそう思ってたけど、彼らはどこかで生き返った訳でもなかった。そしてあたしはその魔導士の仲間の魔導士にここへテレポートさせられたの。」
リューマは困っている様子だった。
「どうかしました?」
「んや、ただ、どうやって森に入ろうかなって考えてた。」
「人の話を聞いとんかこら!」
そのカミラはまるで鬼のような顔を見せていた。それは顔だけが大きくなるという、呪われた彼女だからこそできること。
「1つだけ分かっていることがあるわ。」
カミラはポケットもマップを砂浜に広げ、見つめていた。
「ん? なんだ?」
「噂で聞いたことががあるわ。幻の島というのが存在すると。」
「幻の島?」
「そう、その島を踏み入った人は2度と出られない、地図にも載ってない島。確か…ここら辺だったわ。」
カミラはアパリシタ島周辺を指していた。
「アパリシタ島だ! そこから流されたんだ。」
「やっぱりね。ここは幻の島だよ。」
森の方から気配を感じたのか、2人は森の方を向いた。
「今、何か動きました?」
「動いたよな。」
「行きます?」
「虫いそうなんだよなぁ。」
「ですよね。」
と、2人は絶望に満ちていた。どうやら2人そろって虫が苦手のようである。
「入るしかないよね?」
「そうだな。」
「先に行きます?」
「おめぇから行け。」
「あたしはかわいい女の子ですよ?」
「こういう時だけそれはずるいぞ!」
「ああ!? 文句でもあんのかこら?」
「いや、ない…です。」
リューマはその圧に押しつぶされ、息を呑み込んだ。
「安心して、君の体温は虫にとっては低温やけどする程だから近づきやしないわ。」
え!? そうだったの、アイラ? 俺もしかしてそんなに冷たいのか?
「何より、氷人間と言えるからね。」
そっか。
リューマはカミラを肩に乗せ、おずおずと森の中へと足を運んだ。
「出て行け、ここは神聖なる動物の森だ。汚い人間が踏み入っていい場所ではない!」
「「ギャァアア!?」」
森の中を歩き続けて数分。どこからか、謎の声が地を伝わり、木に跳ね返り、空気を振動させる。その声に2人は鳥肌が立っていた。
「ゆゆゆ、幽霊?」
「だから誰も出られなかったんだな!?」
「幽霊ちゃうわぼけが!」
「「しゃ、喋ったぁあ!?」」
「さっきから喋ってるわぃ!」
そうしているうちに、何やら無数の影が彼らを囲んでいた。
「ねぇ、なんか感じない?」
「見られてるような…ガァア!?」
周囲を見渡した彼らが目にしたのは、動物。
「パンダ?」
「んや、鳥だな。」
パンダの顔を持ちながら、鳥の体を持った動物。犬の顔に体を持ちながら、豚の鼻に尻尾。ペンギンも体を持ちながら、顔はカモノハシ。何から何まで珍しい動物ばかりである。
「彼らはこの島の神聖なる動物じゃ。この島特有の環境により、素晴らしい進化を成し遂げた彼らを狩らせるわけにはいかない!ここで死ぬがいい!」
どうやら誤解が生じているようである。可愛らしい動物らはゆっくりと彼らを囲み、焦らせていた。
「狩る!? 何を馬鹿なこと言ってんだ、おめぇ。俺は珍しい動物だろうが無かろうか興味ない! 流されたらたまたまこの島に着いただけだ!」
「そうよ! あたしは魔導士にテレポートされたか弱い女の子なの!」
その時、誤解が解かれたのか、動物の後ろから1匹の猿が出てきた。杖を使って歩くのがやっとの腰まで伸ばした白髭の老猿。
「そうか、いい人たちなんじゃな。なら良かろう。野郎ども、こやつらを歓迎したまえ!」
「「ちょ、ちょろい…」」
2人はこの猿の良すぎる性格に驚いていた。
そして誤解は解かれ、山の頂上で動物らが釣り上げた魚を焼いてみんなで食っていた。
「美味しいな、この魚。」
「じゃろ、じゃろ?」
リューマも猿も笑いないながら箸が進んでいた。
「ところでお猿さん、なんで幻の島だと言われてるの?」
「それはな、この島は君らが見たように、動物に珍しい進化をもたらしたその環境は境界線を創り出したのじゃ。」
「境界線? ドユコトだ、それ。」
口いっぱいに魚を入れながら問うリューマ。
「そうじゃ、地図に載ってなかっただろう? それは境界線があるお陰で、外からはこの島は見れないが、境界線の内側に入れば先は開く。」
「なるほど、そのせいで意図的にこの島にたどり着こうとしても正確な位置がないからできないってことですね。」
「ほぉ、頭のいいお嬢ちゃんじゃの。」
カミラは嬉しそうにくねくねしながら笑顔を隠しきれなかった。
「って、おい! それ私の! 殺すぞてめめ!」
「げっ…」
どこがお嬢ちゃんだよ。人の皮を被った鬼だぞこいつ…
「リューマより強そうな子ね。」
黙れ、アイラ。
「でもよ、猿爺さん、なんでおめぇだけ普通なんだ?」
その老猿は他の動物と違って、この島の環境に影響されていなかった、見た目は普通の猿。
「いや、君。わしは今喋ってるじゃろ。」
「ダァ!? 猿が喋ったぁ!?」
「今更かよ!」
リューマのアホらしい姿にツッコミを入れるカミラ。
「まぁ、それは置いといて、 わしはこの島の者ではない。大昔、わしは魔王に立ち向かったが、敗れてしまい、その代償として猿に変えられた。そして、2度と外の世界に出られないよう、この島に閉じ込められたのじゃ。」
なんか、変な設定まであるんだな。ケンのゲーム。
「「魔王?」」
「魔王はこの宇宙で最も強い男が持つ称号じゃ。政府軍も手を出せない程の強者。そやつを倒したものこそが真の強者として新たな魔王となる。」
「んじゃ猿爺さんはそれ程強いんだ!?」
「そうとも、なんとって、魔王の一撃を食らってまだ息をしてるからのぅ。ハッハハ! ゴッホゴェ、オエェ。」
歳のせいか、疲労のせいか、老猿は大きく咳き込んでいた。
「すっげぇ! 魔王相手に一撃で食らっても生きてるなんて!」
リューマは老猿の話に目を輝かせていた。だがカミラはどうやら納得がいかない面をしていた。
「んで、お猿さん。何撃で負けた?」
「もちろん一撃。ハッハハハハ!」
「やっぱり。」
リューマは不満そうにカミラを見つめるが、口にはしない。
人の浪漫を邪魔しよってこの鬼幼女め。
「ま、猿爺さん、魔導士か何かなのか?魔王に立ち向かう程だからきっと凄腕だろうよ。」
「よくぞ聞いた、若造。」
老猿は杖をリューマに渡し、何かを握るかのように手を伸ばして構えた。
「造形魔法、弓!」
腕を回り込むように魔法陣が出現し開店して、やがて握るように構えたその手に弓が造られ、背中には多数の矢が収められた矢筒が作られた。
「すっげぇ!! 魔導士だったのか猿爺さん!」
「そうとも、って、痛ててて。」
老猿は腰をやられたのか、腰を抑えた。
「大丈夫かよ、猿爺さん。」
「何ともないわぃ。」
「俺もできるかな!?」
「魔導士じゃないから無理じゃの。」
氷で作れないのか、アイラ?
「想像すれば不可能ではないはずだわ。」
リューマは老猿がやってみせた構えをして、目を瞑って集中しはじめた。
「ん!? 若造、今気づいたけどドラゴンライダーなんじゃな!? それでも造形魔法は造形魔導士にしか使えぬものじゃ。」
やっとリューマの眼に気づいた老猿。しかし魔王と戦っただけはあり、驚きはみせなかった。
来た来た来たぁ! 行くぞ!
「造形氷、氷弓!」
「良いネーミングセンスだね。」
アイラが初めてリューマの技名を褒めた瞬間であった。
「ガァァ!?」
さすがの老猿も顎が外れる程驚いていた。
この作品に出てくる人物や生物、科学的なものは全て筆者の変態な妄想によるものであり、現実とは全く異なる場合がございます。