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リディウムメイト!  作者: 銀シャリ
私のリディ!
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12

 

 マリーがドラゴンの子供と実は契約していなかった事が判明した途端、ロズウェルがドラゴンの子供を抱えて屋敷の奥へ方向転換するとベルエムやマリアーナ以下使用人達はざっ!とモーセの如く道を開けた。

 壁側には敬礼している料理長がおり、硬い表情で見送る様子はさながら死地へ兵士を見送る上官の顔である。


 ロズウェルは昨日爆走した時の乳酸残る足を踏み切ると同時に、ターニャの悲鳴を聞いてたった今、駆けつけたジェフリーに叫んだ。



「ジェフリー!マリーを抱えてついてこい!」

「え!?はい!失礼しますマリー様!」

「ん!?うん!?」



 ジェフリーはマリーを正面から抱き上げると、既に先を走り始めていたロズウェルを追いかける。

 ロズウェルは万が一、子供ドラゴンが暴れた時に被害を少なくしようと屋敷の奥にある蔵へと走るが、それはあくまで保険であり、実のところマリーへの懐き具合からマリーを無視して暴れる事は少ないだろうと考えていた。



 ――やるべき事は1つ!一刻も早く名付けさせる事だけだ!


「マリー!早く名前をつけろ!」

「え!今!?」

「今だ!暴走する前に早くしろ!」



 突然振られた話にマリーは目を白黒させる。

 どこから見ても小さな魔物はマリーに懐いていたし、マリーは名前など後でゆっくりと考えてつけようと思っていたので、候補となる名前など一つもない。故にマリーは頭をフル回転させて名前の候補を上げざるを得なかった。



「えっと、シロ!」

「……?」

「反応がない、次!」

「クリア!」

「次!」

「パルシヴァ!」

「次!」



 一般的に、魔物自身が気に入った名前でないと契約出来ないと言われているので、ロズウェルはマリーの名前候補を聞きながら腕の中のドラゴンを見る。

 マリーが次々と名前を上げても小さなドラゴンはうんともすんとも言わずに尻尾を揺らしながらロズウェルの腕をぺちぺちと叩く為、ロズウェルはいつか爪を立てられ肉を抉られるのではないかという恐怖を感じながら、マリーの名前を却下していった。


 この間も勿論廊下は疾走中である。



「カイザ!マルシェ!ロアン!ジェフリー!」

「俺の!?」

「次、次、次、却下!」

「却下!?」

「〜〜〜〜っ!もー!お父様!私のリディなんだからゆっくり付けさせてよ!」



 名前を考えるのも大変だわ、せっかく考えた名前は却下されるわで、既に今日一日疲れていたマリーの我慢は限界を超えた。


 マリーがそう叫ぶとロズウェルは腕の中から魔物が擦り抜けたように見え、驚いて急停止。それまで後ろを疾走していたジェフリーは止まった事に気づいたものの、勢いを殺せずにマリーを抱いたままロズウェルに突っ込んだ。



「領主様危ない!」

「わー!!」

「、――グゥッ!」

「クァア?クァア?」

「お父様大丈夫!?」

「すみません領主様!大丈夫ですか!?」

「あ、ああ…。」



 危ない、はこちらが言うことでは…?


 危ないのはお前だ、と言いたい気持ちを抑えたロズウェルは腰を抑え、「呼んだ?呼んだ?」と言いたげな声を出しながらマリーの周りを飛んでいるドラゴンを見る。



「今、何に反応した?マリー、何か名前を言ったか?」

「い、言ってないよ」

「マリー様がもう一回、区切りながら言ってみたらどうですか?」

「区切って?」

「それがいいだろう。やってみろ」

「うん…。」



 マリーは小さな魔物へ向き直ると、じっと見つめてくる金の瞳を見返しながら口を開いた。



「お父様」

「そこからか」

「え?」

「いや、何でもない」

「(領主様がツッコんだ)」

「(それには反応しないだろう)」

「私の」

「「………。」」

「リディ」

「クルァ!」

「「それだ!!」」



 明らかに返事をしたドラゴンは自分の事を「リディ」だと思っていたらしく、ロズウェルは名前が付いていた事に安堵の息を吐き、いきなり追走することになったジェフリーは今やっと何となく察して苦笑した。道理でマリーが他の名前を呼んでも返事をしない訳である。


 リディと呼ばれた小さな魔物は嬉しそうに喉を鳴らし、そんな魔物を抱きしめて笑うマリーを見ながら、大人2人は恐怖に支配されているだろう玄関ホールへ戻ることにした。



「それにしてもリディか…。………違う名前が良かったのではないか?リディは総称じゃないか」

「うー…ん。どうしてリディになったんですかね?マリー様も驚いていたようですが」

「恐らく、マリーがリディになってほしいと頼み、リディがリディを名前だと勘違いしてリディになったのだろう。……ややこしいな」

「これ、名前を隠すとか以前の問題ですよね。マリー様にそのつもりは無くても、マリー様がリディって言ったらリディの方が一目瞭然の反応しますよ」

「…………頭が痛い」



 目頭を揉んだロズウェルに明後日の方を見て頭を掻くジェフリー。


 彼らは一瞬足を止め、クラウスが飛んで帰ってくるのでは、と思うも、いや、まさかな。と思い直し、再び歩き始めたのであった。



クラウス「(ウォーミングアップ中)」

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