10話 魔導所長の心労。
10話 魔導所長の心労。
魔導師を総動員させ、なんとか空間の綻びを正常な状態に戻し、その後の隠蔽処理に魔導師と警察が携わっている頃、
私はやっと落ち着いてコーヒーを飲める状態になり、コーヒーを楽しんでいた。
残念ながらこの騒動が起きる前に淹れたコーヒーは冷えてしまい、風味も損ねてしまっていたため泣く泣く、コーヒーを淹れなおしてしまったが。
『コンコン』
「はいれ。」
「失礼致します。魔導所長殿」
「ああ。」
「報告いたします、今回の騒動はやはり異界の者が絡んでいるようです。」
「やはりか、で、詳細は?」
「赤蘭中学校、3年2組の生徒38名中36名が行く先がわからなくなっており、間違いなく召喚系魔法を行使されたかと思われます。」
「・・・・・本当にあったのだな、召喚系魔法は、それで38人中36名と言ったな、残りの2名はどうなっている?」
「はい、2名の内、1名はその日は熱で休んでおりました。」
「もう1名の方は?」
「魔法を行使された時、確かに教室に居たようなのですが、寝ていたため何が起きたかがわからないと。」
・・・寝ていたか、怪しいな
「その者の様子はどうだった?」
「非常に落ち着いていました、クラスの同級生が居なくなっていたにも関わらず。」
こいつはクロかも知れんな
「その者の名前はわかるか?」
「はい、名前は天橋朱里です。」
「レイツァー特捜官を呼べ、今すぐ、天橋朱里の素性を調べ上げさせろ。」
「ハッ!」
2日後
『コンコン』
「はいれ。」
「レイツァー特捜官であります、天橋朱里の素性の調べがついたのでご報告に上がりました。」
「ご苦労。」
レイツァー特捜官から渡された資料を見て私はますます、天橋朱里に疑いの念を強める、家族構成は父、母、妹2人と若干、男には肩身が狭そうだと思う構成だが、特に不審な点はない。
しかし問題はここからだ、天橋家は古く、代々、剣術や薙刀、体術、暗殺術、最近になってガンカタなどを習得しているらしい。
「いや~本当に日本のラノベの様な家庭があったなんて信じられませんよ。」
少しおどけた様子でレイツァー特捜官が言う
資料をページをめくると更なる衝撃的な事実が浮かび上がる
/天橋朱里は真祖級の吸血鬼である/
「・・・レイツァー特捜官、天橋朱里が真祖級の吸血鬼と書いているがそれは真か?」
「ええ、先日、牙と吸血行動を確認しました。太陽の下も問題なく歩けているため真祖であることは間違いないでしょう。」
「しかし天橋朱里の両親は人間のはずだったのではないか。」
「推測なのですが恐らく召喚時の強力な魔力に当てられ、吸血鬼としての遺伝子が活発化し、先祖帰りしたのではないでしょうか?」
「・・・そうかもしれんな。」
異界の者の介入、その異界の者による一般人の拉致、それに真祖級の吸血鬼ときたか
「これじゃ胃に穴が開きかねんな。」
この発言にレイツァー特捜官が苦笑いで答える
「心中、お察しいたします。」