「委員長ちゃん」
「自殺なんてばかみたい」
そういって隣のクラスの委員長はあたしのおにゅーの剃刀を屋上から投げ捨ててしまった。
「人間いつかどうせ死ぬのだから、勿体ないよ」
限りられたお小遣いから出費したあたしの剃刀がグラウンドへと落下して見えなくなった。
「何が苦しいの? 何か悲しいの?」
ねえ、と膝を抱えて座り込んでるあたしの目の前に委員長ちゃんがしゃがみこんだ。
「自殺なんてそんなことしちゃだめ」
あたしは目をそらした。
どうせ委員長ちゃんにあたしのことはわからないから。
「あなたを大切に思っている人たちが悲しむでしょ」
ほら。
そんなことを言う。
バカなのはどっちだ。
あたしの自傷か? それともこの子の偽善か?
「思春期の過ちで死んじゃうなんてばかみたいだよ」
ほら。
こんなことを言うんだ。
ばかなのは委員長ちゃんだよ。
「この世界の何が悲しいの?」
ほら。
ほら。
そういうことを言う人にあたしのことはわからないよ。
愛されている人にあたしの気持ちはわからないよ。
あたしのパパはあたしを殴って、髪の毛つかんで振り回して、蹴ってくる。
あたしのママはあたしの携帯とってあたしの友達引き裂いていく。
やりたいだけの彼氏はあたしの放課後に付き合ってもくれない。
あたしの世界はこんな世界。
きっと、委員長ちゃんの世界は真逆の世界。
パパとママに愛してもらえて、サッカー部のキャプテンの彼氏もかっこよくて優しいんでしょ。
そんな人にあたしはわからない。
自殺したくなるあたしの気持ちはわからない。
「何か悩みがあるなら私に言ってね」
委員長ちゃんはあたしの頭を撫でて、そう言った。
君にあたしはわからないよ。
あたしの悩みを理解できないよ。解決できないよ。
そうやって心の中で唾を吐いた。
でも、なんでだろ。
涙出てきちゃった。