ここは県立I高校 文学創造部
私の名前は生田 花蓮 県立I高校に通うしがない女子高生、最近の悩みは英語と私の部活の先輩。
そしてこれは私とその先輩の話。
話を始める前にこの県立I高校と私の所属している部活、文学創造部について話しておきたい。
ここ、県立I高校は戦後間もない頃に建てられた高校、
最寄り駅まで徒歩1時間、通学手段は専ら自転車で、それにポツポツとバス通学がいるくらいだ、
周りにあるのはイチョウの木とかクヌギの木とかカシの木とか、あとは名前だけの商店街とか…
しかし、こんな高校でも一定の人気はあって、入学時は頭の悪くない、中の上くらいの奴が集まる、のだが…2年もすればそんなのは一転して大半が人並み以下に大転落、それでも3年生になってから巻き返してそれなりの大学に行く先輩が多いのは本当に凄いと思う。
そんなこの高校の通称は「秘境I高校」とか「自称進学校」とか、結局は秘境ってことが言いたいらしい。
現にこの高校は本当にガラパゴスだと思う。
そんな秘境I高校の中でもさらに異彩を放っているのは私達の部活だろう。
その名は「文学創造部」
まず、第一に部員が二人しかいない状態こそが浮いてるとも言えるだろう。
そう。部員は私と先輩だけ。
それに旧校舎の奥に部室があることも浮いてる要因だ。
そして、私の部活の目的はただ一つ。先輩を落すことだけ…何から落すかは秘密です。
前置きはこのくらいにして…私の話に戻そう。
今日の部活には秘密兵器を持ってきた、しかももう部室に設置済み、ここまで用意周到な日はそうそうないだろう。
あとは先輩を待つだけ!
期待して待つと古い木造のドアの開く音がした、
「花蓮、早いな、今日はいつにも増して…」
『私が早いんじゃなくて、先輩が遅いんですよ!』
「いつもにまして花蓮の声が木造建築に響くな…」
『それ、どう言う意味ですか?返答次第じゃ、私、不機嫌になりますよ。』
「うーん……この世には知らなくていいこともあるんだよ……。」
『そんなことより、先輩、先輩は猫派ですか?犬派ですか?』
「いきなりだね、どっちかといえば猫派かな…」
『わかりました、猫ですね、』
私はバックからノートパソコンを引っ張りだすとキーボードを打ち始める、
『先輩はブラックファンタジーとありがちな異世界どっちが好きですか?』
実は全部調査済みだが話の流れ的に聞いて置く、先輩はブラックファンタジーって答えるはず。
「なんか、やっと文学創造部らしい質問だね、どちらも読むけど、好きなのは異世界かなぁ」
『えっ……』
理論はあっけなく崩れていった…
『そっ、そうですよね、先輩は異世界派でしたよね…』
私は慌ててキーボードを打ち始める。
修正しなければ…修正。
「と、いうか、これは何の質問なんだい、花蓮くん。」
『ふっふっふ、先輩、驚かないでくださいよ、いや、ちょっとは驚いて下さいね、』
「どっちなんだ…」
『行きますよ!』
そして、私は左手で指を鳴らす、強い光が部室を包む、そして、目を開けると、そこは現実離れした如何にも異世界らしい光景が映し出されていた。
「なんだ、これは…」
『ふっふっふっ、これは先輩好みにカスタマイズされたVR世界を再現したものです。異世界で猫!完璧です、寸分の狂いもありません!パーフェクトです!』
「いや、これは、部室の壁に写真を投影してるだけじゃないか!」
『ふっふっふっ、パーフェクトです。』
「聞いてないのか…」
『先輩、何してるんですか?速く宝箱開けて下さいよ、』
「宝箱?どこにそんなものが…」
『足元ですよ、』
足元を見るとそこには宝箱と思わしき物体が二つ置かれていて、いかにもな雰囲気を醸し出していた
「開ければいいのか?」
『はい!』
片方の宝箱を開けてみるとそこには子ネコが入っていた、しかもちゃんと 拾って下さい、と箱に書かれてあるあたり芸が細かい、
「猫…だな。」
『もう一つも開けてくださいよ』
もう片方の宝箱を開けてみるとそこには、花蓮の体操着の写真が入っていた、しかもちゃんと 拾って下さい、と書かれているあたり……
「却下だ、」
『どうしてですか、先輩、拾って下さいよ!』
「ないな、却下だ」
『どうしてですか?拾って下さいよ』
「どうしてもこうしてもないだろう、なぜお前なんだ、そもそも、拾って下さいってなんだ」
『せんぱいにひろってほしいんですよ!』
「全部平仮名にしてもだめだぞ」
『Please pick me up』
「そういう問題じゃない!」
そう言ったところで、帰宅のチャイムが鳴り響く
『今日も楽しかったですね、先輩』
って言う小説を書きたいんですよ先輩、どう思いますか?
「全部フリだったのかよ…」
いいじゃないですか、だって文学創造部ですよ、創造をなくしたらただの文学部になっちゃいます、
それより、先輩、もう時間ですよ、私達はどう頑張っても2000字までしか入らないんです。
「なんだ、その設定は…」
それは…作者の気まぐれです。
それで、ねぇ、先輩、私を拾ってくれませんか?
「却下だ!」
読んでいただきありがとうございます!