出会い
風が優しく俺の頬を撫でる。
眩しくも朝の訪れを告げる太陽。
起きる理由なんか、なに一つない。
なぜなら、俺は今日も惰眠をむさぼり、生きていくのだから……
あれ?果たして本当にそうだっただろうか、俺は改めて誓ったはずだ強く生きると!
思い出す、最期の瞬間を、なにもなすこともなく生を終えたあの森の夜を。
「おぬし、目が覚めたようじゃな」
「だ、誰だ!?」
俺は飛び起き辺りを見回すが人影は見当たらない。
「いつまで寝ぼけておる、ここにおるじゃろうが」
いるだろうがって?小動物がいるな、ってなんでこんなところに小動物がいるんだ!?
しかもこの小動物!喋っているんだが、まさかここは死後の世界ということか。
「俺は天国に行けたのか?志半ばで……あんな序盤にオオカミに殺されんだが」
「オオカミに殺されたって、おぬし本当にねぼけておるんじゃな」
なぜか、目の前の小動物に呆れた表情をされてしまう。
小動物……そういえば最後に俺が見たあの獣は……
この世のものとは思えないほど、神々しく闇夜を払わんばかりだった。
「断じて、目の前にいる喋る、上にわけのわからん小動物ではない!違いすぎる!」
「誰が!わけのわからんの小動物じゃ!!おぬし命の恩人に敬意はないのか!?」
いかん、あまりにもな状況に混乱して心の声をオンにしてしまったみたいだ。
今?気になるワードがあったぞ、命の恩人とはどういうことだ?
「命の恩人とはどういうことだ?小動物よおまえが助けてくれたというのか?」
うむっと大仰に頷く小動物。
「いいや、そんなはずはない!俺を助けてくれたのは小動物ではない!神獣だ!」
「おぬしは、ワシの話を本当に信じんのう、いくら契約したとはいえこんな男助けるんじゃなかったのじゃ」
すっかり機嫌を悪くしたようで、拗ねた様子の小動物を見てさすがに俺も悪い気がしてきたぜ。
状況から、ここには俺と小動物しかいいないのは確定的に明らかだ。
ってかここどこだよ?
風が優しく撫でるって、今や強風だよ!なんなのこの断崖絶壁の上!?
こえーよ、あぶねーよ!どうやって降りるんだよ……超怖いわ。
「すまんかった」
俺は、土下座して謝罪する。
この小動物の機嫌を損ねると俺はここから降りることができなかもしれないのだ。
俺の渾身の土下座が効いたのか、小動物の機嫌が少し直ったようだ。
「うむ、最初から感謝の念を持ち、素直にしてればよいのじゃ」
「小動物さん!聞きたいことがあ……」
「小動物?ワシにはアマツキという立派な名があるのじゃ!」
小動物、いやアマツキの表情に怒気が見える。
「すまん!アマツキさん聞きたいことがあるんだ」
「うーむ、次はないからの、でなにを聞きたいんじゃ?」
「まず、俺を助けてくれたということ、それに契約とはなんだ?で、ここはどこなんだ?助けてくれたというなら、あのときの獣はどこにいったんだ?」
「あーーもう、そんなに一気に聞くではない!」
矢継ぎ早に言った俺の質問に、ぷるると可愛らしく首を振り悶えるアマツキ。
「お主を助けてやったことと、あのときの獣の件についてじゃが、簡単に言うとじゃ、その獣がワシでお主を助けたといこうことじゃ!」
フンとなにやら誇らしげに主張してくるが、なにを言っているのやら!まず、そもそも俺が見た獣はこんな小動物サイズではないわ!
「なんじゃ!その目はなにか言いたいことがあるなら言うのじゃ」
「なら、はっきり言わせてもらおう……俺が見た獣は、アマツキさんみたいに小さくなかったんだが」
「そう!それが重要なのじゃ!」
ズンっと勢いよくアマツキがこちらに前進してくる。
どうやら、何か話したいことがあったようなので、俺は黙って静聴することにした。
「ワレは長い間卵として過ごした故に本来の力を失ってしまったのじゃが、お主が見た姿はワシの本来の力を象った姿の残滓、ほんの少しだけ残っていた力もお主を助けるのに使ってしまったのじゃ」
つまりこういうことらしい、俺が見たのはアマツキの本来の姿だった。
しかし長い間卵として過ごしたせいで力を失った。
最後の力で俺を窮地から救ってくれた。
俺はなんてことを言ってしまったんだ!命の恩人じゃねーか!!
俺は、過去最高の速さで土下座をした。
先ほどの土下座どは比べ物にならない、土下座だ。
間違いなく、土下座選手権があれば上位入賞間違いないと確信できる神速の土下座を披露した。
小動物とか言ってたが、この子狐?狐様からどことなく気品を感じるぜ。
――と俺が狐信仰に目覚めかけていたところ、現実に引き戻す声が聞こえる。
「お主!聞いておるのか、ワシの話を!」
アマツキさんが、胡乱げな顔でこちらを見ている。
「急に、おかしな様子になったがどうしたのじゃ?」
「俺の名かに狐様が降臨されかけていた」
「なにをわけのわからんことを言っているのじゃ、それで契約についてじゃが、今度はしっかり聞いておくのじゃぞ」
アマツキさんに釘を刺されてしまった。
どうやら先ほどは、聞き逃していたようだ。
「契約についてじゃが、ワシ自身が言うのもなんじゃが、ワシと契約するのは正規の手順でも、とても難しいのじゃが、今回は偶然条件が整ったことによる契約じゃ、まず第一に永き寝むりについた、ワシの封印を弱めるほどの白月光、あれほどの白月光は数百年に一度ぐらいのもんじゃ、第二にワシと相性の良い契約者、これが一番難しいのじゃ、単純な相性から生き様境遇まで複雑に絡み合う、しかも、偶発的な契約をするまでの相性じゃ、天文学的な確率じゃな、最後に契約主の血が必要じゃ」
「つまり、あの日の夜にお主が殺されかけた故に契約できたわけじゃ、それは今日でも明日でもダメじゃ」
マジかよ!?どうやら俺はとんでもない確率を潜り抜けて、契約とやらをしたらしい。
異世界に来るだけでも、とんでも確率なのに、その異世界でも、とんでも確率を引き当てるとはな、我がことながら凄まじいぜ!
そんな、すごい相手と契約できたなら、今後の未来は明るいぜ!
「アマツキさんがすごいことはわかった!今後はよろしく頼みます、相棒ってことになるんだからステータスを教えてほしいんだが」
「ワシにもお主のステータスを見せてもらうぞ、互いの力は把握してるほうがよいからの、それとお主が契約主じゃからなアマツキでよいのじゃ」
そうして、開示されたステータスがこちらだ。
名前 アマツキ
LV 1
種族 九狐
職業 守護者
HP 80
MP 120
物攻 100
物防 130
俊敏 120
魔攻 200
魔防 200
スキル
鑑定LV1 精霊魔法LV1 治癒魔法LV1 加速LV1 高速詠唱LV1 全魔法耐性LV1 第六感LV5
称号
原獣
目覚めし者
スキルポイント3
Next 10
EXP 0
( おお!弱ってこれか!?我が軍は勇者に勝るとも劣らないではないか、はっはっは!!)
俺が心の中で喝采を上げていると、アマツキが溜息をつきこちらを見る。
「ずいぶん、難儀なステータスをしていようじゃな」
名前 アイン
LV 2
種族 人間
職業 勇者?
HP 30
MP 30
物攻 35
物防 30
俊敏 30
魔攻 30
魔防 30
スキル
称号
召喚に紛れた者
スライムハンター
原獣の契約者
スキルポイント3
Next 52275
EXP 3510
俺は、このステータスについての説明をアマツキにすることにした。
召喚事故により、ステータスがおかしくなってしまったことなどを聞いたアマツキは、契約主には違いない、また日の光を見れたことは感謝しているから、できる範囲で俺に力を貸してくれるとのことだ。
俺はそんな人を小動物呼ばわりしていたことを恥じ入る一方である。
「ワシも永いときを生きてきたが、こんなステータスは初めて見るからの単純な興味じゃ!そこまで感謝せんでもよいのじゃ!!」
ツンデレなのか!?いい人である!
そしてなんと俺は念願のスキルを手に入れることができたのだ。
説明しよう!
原獣の契約者、この称号効果にスキルグループ、テイマー(太古)を取得とあるのだ。
この新たに得たグループは、今までの事故の影響を受けていない状態であったのだ。
つまり、スキルポイントを割り振り念願のスキルを取得できるこういうわけだ。
テイマー(太古)
思念伝達(取得ポイント3)
魔力同調(取得ポイント6)
一身同体(取得ポイント9)
この中から、俺は思念伝達に、なけなしの全3ポイントを割り振り、初のスキルを得た。
思念伝達
このスキルは、要は念話である。
一定距離にいる相手と声を出さずに意思疎通ができるというわけだ。
これで俺とアマツキとの連携力があがった。コンビニは必須のスキルといえるのではないだろうか。
LV1では、大体円形15mっといった範囲まで念話可能であった。
さぁ改めて俺たちはルールナを目指し旅を始める。