12番
今回は短いです。
車校とかバイトがなければペース上がるかもしれないのになぁ...(希望的観測)
畔上キラ 12番
「アルパカじゃないか」
ペットとして繋がれていた生物はどう見てもアルパカだった。
アルパカが生意気な顔して踏ん反り返っていた。
「この魔物の毛がこの宿で作ってる服の素材になってるんだよ」
「それはまぁ、そうだろうな」
「なんでも、一日に1回全ての毛が抜けて新しい毛が生えてくるんだって」
「...なんとも言えない情報だな...」
素材が手に入るのはすごいことだが、別にだからなんだと言いたくなる。
そっちの道ー行くならばともかく、関係ない俺からすればだから?と言いたくなる。
受付を済ませて宿の部屋の鍵を受け取った。
セキュリティは存外きちんと出来ている。
「さて、さっさと済ませるぞ」
「うん。じゃぁ、とりあえずEXPマップを確認してみてくれるかな?」
「わかった」
EXPマップがマルドに見えないようにしながら内容を確認した。
ステータスに変わりがないが、skill pointが400近くになっていた。
「それじゃあ、ステータスを上げたいと思いながら魔力を流して」
「流したらどうすればいい?」
「何もしなくてもいいよ。あとは、勝手にどうにかなるから」
「適当だな...」
「そうだね。でも、事実だから仕方ない」
「まあ、いいがな」
そうして、変化は訪れる。
真っ暗な世界で一人。
どこかに永遠に沈み続けるような感覚。
何がどうなっているのか。
世界は広いのか、狭いのか。
それすらもわからない絶対なる黒。
声が聞こえた気がした。
優しそうで厳しそうで嬉しそうで苦しそうだった。
声は問いかけた。
俺が何を望むのか。
何を成すために何を得たいのか。
未来の己をどう導くのか。
暗闇は問いかけた。
故に俺は答えよう。
ーー力が欲しい
力とは何か?
再度問われた。
なので、再び答える。
ーー全てを覆しかねない最強の一打
それは、純粋な力であるべきか?
ーー否、|未だ未知数(魔法)の力でもある
魔導をも極めんとするか...欲はそれで尽きたか?
馬鹿なことを問いかけるな。
そう言って笑ってやる。
ーー人の欲は尽きない。欲の無い者など人でない。そんな者は空虚な人形である
しからば、何を求めるのか?
ーー速さが欲しい。一瞬を駆ける為の
許可する。欲の尽きない汝よ、今回欲に答えるのはここまでである。いずれまた語るがいい。才ある者よ。
暗闇が晴れる。
そして理解した。
今まで俺を覆っていた闇は魔力だったと。
魔力を何回か使い、魔力を見分けることができるようになったおかげだ。
「多分、ステータスが上がってるよ。確認して見たら?」
意識が通常通りに働くようになったと同時にマルドから提案された。
今までのが、ステータスを上げる為の一連の流れだったことから、大賢者が言っていた言葉の意味をある程度感じた。
今しがたのことながら、朧げにしか記憶できていない暗闇でのこと。
だが、声に言われたことは所々イメージとして残っていた。
そこから、推測するとしたらあれは先入観を持たせない為だろう。
問いかけへの答えを変にリードしないよう配慮されていたわけだ。
視線を落としステータスの上昇を確認した。
<ステータス>
―――――――――――――
skill point 0
HP 510/500
MP 600/506
STR 215
DEF 71
DEX 166
POW 256
<魔法/スキル>
・闇魔法
・即死魔法
・邪眼イビルアイ
<二つ名><another name>
力、望みし...
<過去の名声><past name>
・異世界人
・勇者or魔王
・拒みし者
・道を外れ
―――――――――――――
「これは...」
伸び幅が相当に大きかった。
たった一度ゴブリン達と連戦した程度でSTRとPOW、DEXが倍ほどに上がっている。
「さりげなく成長チートでもあったか」
「どう?」
「ん?まぁ、強くなったのは間違いない」
「そっか」
ステータスを馬鹿みたいに話すことはしない。
当然のことだが、大事なことだ。
それにしても、伸び幅がやはり異常に高い。
ステータスはskill pointで伸ばすというなら、どのくらいの戦闘でどのくらいの量が得られるか知っておくべきだ。
「......?」
そして、ふわりと脳裏に何が浮かんだ。
今まで感じたことの無い違和感に困惑はするが、どうしてだか特に焦ったりはしなかった。
とはいえそれも、前情報があったからかもしれないという注釈はつくが。
魔法は覚えることができれば、その瞬間に頭に直接使い方が流れてくると聞いていた。
流石の俺でも、唐突にこんなことになれば取り乱したかもしれない。
それを思えば、ここまでそれなりに情報は集まっていたと言えるかもしれない。
「試し撃ちがいるな」
EXPマップの表示を魔法に切り替える。
覚えた魔法は二つだった。
闇魔法
―――――――――――――
・ダークボール MP消費1~ 魔力を込めると威力が上がる。
・エンハンスダーク MP消費50 道具、もしくは自身に属性を付与および強化を与える。
・THE ダークネス MP消費30. 自身を中心とし一定範囲への攻撃。
・ダークスラッシュ MP消費15
魔力による闇の斬撃波
need skill point 1129
―――――――――――――
即死魔法
―――――――――――――
・マインドデス MP消費1000 生きながらに殺す。
・デス1 MP消費50000 絶対の死を贈る。
・ソウルダウン MP消費500
魂を削る
need skill point 15338
―――――――――――――
また一つ魔王に近づいたかとため息が出た。
「明日は朝早いうちに移動を始めよう。まだまだ食料や道具には余裕があるから買い足しなしでもどんどん進めるよ」
魔法を試すために、1日滞在するしようと提案しようかと思ったが、ゴブリンとの戦いを思い出し、嫌でも試す機会があることだし迅速な行動が出来るならそれでいいと承諾する。
「ここは洋服を売ってるんだったな」
「見てみたいなら、三階だよ。気に入ったのがあったら買ってきなよ。俺はここに残ってるから」
「そうさせてもらう。...もし、やることがないなら一つ情報収集を頼みたいんだが」
「うん?それは別に構わないけど、集めたい情報ってなんだい?」
二つ返事でOKしてもらえたため俺は、
「大賢者が何かしていないかと、指名手配について」
と答えた。
そんなことする理由はないとわかっていながらも怪しさしかなかったあいつらのことをそのままにしておけない。
ここで、服を買おうというのには場合によっては服装の特徴を隠そうという意図も含まれる事になる。
「......わかったよ。でも、それはそういう事でいいんだよね?」
「どういうことかわさらんが、想像は自由だ」
捨て台詞のように言い残し俺は服を見に部屋から出た。
「アルパカという時点で気がつくべきだったか...」
宿屋の服屋にやってきた俺であったが、そこに並ぶ商品であふ服にいささか頬を引きつった。
「素材が毛なら質感が全てこうなるのは必然か」
シルクのような滑らかな質感の物は一つもなく、ふわふわとした手触りの服しかない。
タキシードやらドレスやらのデザインが置いてある。
セーターなどを作っておけばいいというのに何故デザインが多種に渡っているのか。
商品を一通り見終え、どの服を購入するかの目星がついたので店員を呼んだ。
「いらっしゃいませ。お決まりですか?」
「これでどれだけ買える?」
適当に袋から金を取り出し店員の手に乗せる。
買うものは決まってるが、金は数えられないのだからこうやって相手にやってもらうしかない。
「えっと...これだけあれば大体5、6着は買えると思いますよ少し高い物が入ると3、4着しか買えないと思いますけど」
相当に少なめに取ってよかった。
手のひらに少しあるって程度の量だというのにそんなに買えるとは思ってもみなかった。
「なら、この四着をくれ」
「かしこまりました。合計4点で450ルクスになります」
「ずいぶんと安いな」
「...?そうでしょうか?普通だと思いますが」
「いや、俺の価値観だと安いと思っただけだ。普通だというならそうなんだろうな」
一泊した値段と比べ相当に安上がりだが、異世界あるあるの謎の値段設定だろう。
「こちら、お返しします」
「じゃぁな。もし縁があればまた来させてもらう」
「是非どうぞ。ありがとうございました」
綺麗な会釈で店員は俺を見送った。
「さて、一応着替えておくか」
部屋に帰りとりあえず買った服のうち一着を切る。
俺がかったのは、パーカー二着にセーター一着あとはコートのような服だ。
色は全部黒だ。
「サイズはピッタリだな」
二、三回程肩を回したり飛び跳ねたりして動きやすさを確認する。
これならば、とくに支障なくうごけそうだ。
「マルドの方は上手く行ってるといいが」