1番
書き直しました!
よろしくお願いします!
(なんだ、この状況は)
家で寝ていたはずの俺、畔上キラは目を覚ましたら見知らぬ場所に寝ころんでた。
背丈は170cmほどで、黒髪黒目の完全な日本人。
大きな眼帯を右目に、漆黒のコートを羽織っている。
まぁ、言わずもがな・・・俺は中二ってやつだ。
一応弁解っていうか、痛い奴ってレッテルをはられるのは嫌だから言ってくが、俺だって心の底から、本心から、自分が選ばれし者とか魔法を使えたり特殊能力があるって思ってるわけじゃない。
容姿、運動能力、学力も他人より優れていると自負している。
だが、優秀であるってだけで自分が世界で一番だとうぬぼれることもない。
尊敬すべき相手に払うべき敬意を払うこともできるし、他者を見下してることもない。
下に見ないってことはないがそれでもましだろう。
俺は力があるって信じたりなんかはしてない。
力を望んでいるからこそ俺はこうしてソフト中二病に甘んじている。
そんな俺なのだが、目の前におかしな集団がいるこの現状、どうするべきか迷ってしまう。
歓喜の声、身振り手振りで喜びを表す。
疲弊してるのか息も荒立てているのだが、それでもなお興奮が冷めやまない。
たった一人の少年の前で何してんだかとおおよそ何がしたいか検討のつかないこの連中には苦情も申し立てたい程だ。
それを言葉にすることはしないが・・・。
それは目の前の手段の異様さ故に。
長い杖を持ち、顔まで覆うローブを身につける者。
西洋の鎧を纏い、西洋の剣を抜き放ち構えてる者。
どっちも各3、4人。
あとは同じ格好のなかで二人の違う格好をした者。
彼らはエンジンのように俺を囲み、じっと俺を見ている。
地下なのか、窓がなく薄暗い。
ロウソクの明かりだけが、ぽつんと薄暗く部屋を照らすだけ。
わけもわからずにいると西洋鎧の者なかから一人がどこかに走り去って行った。
(こいつらなんだ?)
俺はベッドで軽く睡眠をとっていた。
こんなやつらと、こんなところにいることが不思議でならない。
もっとも、とりあえず目前の相手たちは仲間であると疑いはしてないが。
(さて、こいつらの目的はなんだっていうんだ。俺を捕まえてるってことはそれなりの理由があるはずだが・・・)
いつまでも興奮冷めないのを見るに、俺を捕まえたことによほどの意義があるのかもしれない。
すると、ふと一つ思い当った。
「おい、貴様ら」
低い声。
喜び狂っていた連中は声に反応してピタッと静かになった。
「俺を攫って身代金でも要求するか?どうせ無駄に終わる。俺はあの人に見限られている。わざわざ俺の為になにかをするような人じゃない。金を積むなんてもってのほかだな」
両親は俺をいないものとして扱っている。
それが当然であるかのように。
切り捨てられてるというべきなのか。
自嘲気味に鼻を鳴らして見せた。
「馬鹿な真似はやめておくことだ。今なら俺も問題にしないでおいてやろう。おおごとになってないなら騒ぐだけ面倒だしな」
「い、いやこれは誘拐などではないのです!」
俺を囲んでいた中の、二人の恰好の違う人物の片方、短い杖―ロッドと言えばいいのだろうか―と水晶の玉を持った男が否定した。
いくら否定したところでこれは誘拐以外なんだ。
「は?これが誘拐じゃないなら何だって言うんだ?まさか、誘拐犯が別にいて我々は救助に来ましたとでも?ふざけろ、俺が是でお前らが否だ」
「た、確かにあたなを呼んだのはこちらですが、誘拐というわけでは・・・」
「呼んだ?俺はこんなところに呼ばれた覚えはないぞ。何を言っているんだ」
「それは、私の方から詳しい説明をさせて頂きましょうか」
極端に長い杖を持った二人の恰好の異なる男のもう一人が割り込んだ。
「説明だ?・・・なんのだ?」
「今現在、あなた様が置かれている、現状のですよ」
説明もなにも、誘拐でお前らが犯罪者の誘拐犯だろう。
(それにしては、悪意があるようには感じられないんだがな)
俺は超能力者じゃないから感覚的な問題でそう断じただけだ。
しかし、俺は自分の勘をないがしろにしたりはしないことにしている。
ひとまずは話だけでも聞いてみることにした。
そこからしばらく。
時間を掛けていろいろと話を聞いた。
俺の心は激しく揺れた。
―――――――――マジで。
覆い尽くすはそんな間の抜けた一言だった。
説明されたことをまとめると大まかにはこんなことだ。
ここは俺の世界とは別の世界、異世界であって、今、世界は暗化という状態になっているそうだ。
暗化とは魔人や魔物が引き起こす魔の者にとってすごしやすく、生まれてくる魔物や魔人を強力な者にする。
正常な土地でも強い魔物が生まれることはある。
しかし、比べるまでもなく暗化しているかしていないかで差があると。
すこしでも暗化の影響が出ないようにしようと暗化を直そうとしたがうまくいかず。
せめて、暗化により誕生した魔物たちや魔人を抑えようと大賢者メイビスと大魔導師ロストライアが暗化した土地に対して結界を張っている。
だが、結界の効力を少しでも持たせるために結界が拒むのは強い魔物や魔人だけに限定されていて弱い魔物は通してしまう。
暗化は強い魔物たちを生むだけでなく生まれてくる魔物たちの数の絶対量を底上げするのだそうだ。
つまりいくら弱い魔物たちといっても数がおおければ十分脅威たりうると。
このままではジリ貧になってしまう上に結界がいつまで維持するのかすら不明。
暗化は魔王が引き起こしたらしくどうにかするためには魔王を討伐しなければならない。
だから、元凶の魔王を倒すために勇者を召喚、つまり―――俺を召喚したんだと。
また、俺の召喚を中心として行ったのも結界を張ったのと同じ二人なのだ。
そのロストライアが水晶とロッドを持った男。
メイビスが極長の杖を持った男。
周りと服装が異なった二人であった。
召喚には貴重な道具や膨大な魔力が必要なそうだ。
俺としてはそのくらいは当然だと思ってしまうが、それを消費しなければならない国としてはたまったものではないらしい。
そんなわけで召喚は極力行わずにことをすませたかったというのが本音だそうだ。
ジリ貧になるのもそうだが、国民たちの不安や不満の声がちらほら聞こえてくるようになったのも決行された理由の一つなのだと。
あと、俺が気になったことというと、もともと召喚の魔法は国の宝物庫の中の禁書の一つに書かれていたってことだ。
この国にはお姫さまが3人いるそうだが真ん中のお姫さんが偶然見つけた。
これは暗化が広がる前のことだったため、いくら姫といってもそれ相応の罰があったらしい。
だが、こうなった今ではさすがにこれほど心強い知識の詰まった古本を掘り出してくれたことには感謝すべきだろう。
「で、いろいろあり召喚されたのは俺だと?」
「相違ありません」
「・・・・・」
(正直、こんなバカげたことがあるはずがないと切って捨てる方がいいんだが...)
俺は一芝居打つことにした。
「・・・・・・・・それを信じる根拠がないな。勇者を召喚するって話が仮にほんとうだとしてやろう。・・・おかしいだろ?まだ14の俺なんかが召喚されたのは。もっと屈強な何者かを召喚すべきじゃなかったのか?」
俺は、全てが敵であると仮定して相手さんがたをガン睨みにした。
やれやれといわんばかりに首を振られたが、そういう小さな行動すらもが俺を騙すためのブラふとしておく。
疑惑の芽を止めない。
この者らは敵対者そうするならとことんだ。
「信じられないのが普通ですよね」
さびしそうにロストライアは零した。
「ロストライア、お願いします」
「・・・了解しました」
自称大賢者が自称大魔導師に呼び掛けると、水晶を持っている法の腕を前へと突き出した。
そして・・・・・。
「エンハンス・シャイニング!!!」
「!?」
ロウソクの光しかない薄暗さを持った室内に明かりがともった。
その明るさは、さながら昼間のようであり、暗闇に慣れてしまった眼には少々強く、眩しさに思わず瞼を閉じてしまった。
(・・・電球か?どこにも見当たらないが)
明るくなった室内の天井を見上げても電球はみつからない。
部屋をテラス光もどこかから放たれているというかは、この部屋の壁や床が直接発光しているようだ。
「・・・電球とやらがなにかはわかりかねますが、これは正真正銘魔法によるものになっています」
「ま・・・・・・ほ、う」
俺の頭には衝撃が走った。
考えを読まれた。
俺がどうして光っているか、それについて予測していたことを推測したのは当然だが、こいつは言った。
電球と。
これも推測して憶測で物を言ったのかもしれないが、とんだ博打だ。
仮に俺がこいつらならば掛けで、誤れば台無しになることをしない。
もっと慎重にことを勧める。
ここで俺は顔を俯かせた。
そうすることでやっと気がついた。
俺がいる場所を中心として赤い線で魔法陣が書かれていることに。
いや、この場合は違うのかもしれない。
俺がいる場所を中心なのではなく、中心に俺がいるのが正しい言い回しだ。
まったく気がつかなかった。
部屋が明るくなった事でやっと目視可能になり認識できた。
上を見上げていたから発見が遅れた。
真に受けるならば、信じないと言っていたのだが、ここではこいつらの言い分は嘘ではないとしてならば、これが俺を呼び出すための魔法陣。
真っ赤なのはなぜだ。
(・・・・・・血か)
そう思った。
特に嫌悪感なんかはなかった。
精神的にはもっとくるものがあっていいきもしたがないものはない。
俺が特殊すぎるのか、もしくは状況が状況の為に混乱しているからか。
きっと同じ体験をしてみないことにはだれにもわからない。
さて、ここまでくれば疑う余地はもう少ない。
電球を知らない。
電球を使ってるのでもないのに急に明るくなる部屋。
魔法を使用するという人。
魔王だとか勇者の存在。
真っ赤な、血で書かれている魔法陣。
(まさか、ほんとうに?)
とたんに俺の中には歓喜の炎のようなものが燃え上がる。
夢の異世界に俺がやってきたかもしれない。
虚言や妄言の部類の言葉が虚偽のものとは違い現実の事実として語られる。
選ばれたかった。
俺が実際に選ばれた。
ずっと特別になりたかった。
特別に慣れた。
「ただいま私が使用したのも魔法であり、もうお分かりと思いますが相手の思考を直接読む魔法になっております」
「く、くははははは・・・・・はははははははは!」
乾いたような笑みが溢れてきた。
歓喜であり狂気であり恐怖である。
ごちゃごちゃした感情が器に入りきらず漏れる。
だが、これでここから先俺は全て真として話を勧めることができるようになった。
「信じてもらえましたか?」
「ふぅ・・・とりあえずは、な」
「有難うございます。では、理解して頂いたところでこちらをどうぞお受け取りください」
薄汚いボロッちい紙きれを手渡された。
手に取ると急な脱力感に襲われた。
「・・・これはなんだ?」
率直な疑問のボールを投げた。
「それはEXPマップといいまして、所有者の力、能力を数値化、書式かして映すものとなります。成長や魔法、スキルなどの習得には必要不可欠なのです。自分が何が出来るのか、の確認にも便利とされます」
「・・・つまるところのステータスってことか・・・・」
「おや、知っておられたようですね」
独り言のつもりだったのだが、大賢者は反応した。
聞いたとたんに笑いが出そうになる。
漫画や小説には俺と似た現実とかけ離れた状態に陥る作品が多々ある。
その中に、ステータスという概念がある作品があるが、創作の中の妄想でしかないとしたステータスが現実にあると驚く。
俺はないと思っていたのに。
それがどうだろう。
異世界に召喚されて、魔法やスキルが存在して、魔王がいて、俺が勇者で、ステータスは存在して。
VRゲームですら夢のまた夢と冷めきっていた俺に熱が発生しても俺のせいじゃない。
おもしろそうだ。
不敵な笑みを作ってしまった。
さっそくステータスの確認をするとしよう。
もらったEXPマップを見る。
が、そこには何も書かれていない。
いろいろと念じてみたが反応を示すことはない。
我ながら訝しそうな顔をしているんだろうな。
頭の隅で俺の顔を想像しながら、大賢者を注視した。
「ただ持っているだけでは意味はありません。魔力を流し、初めて効果があります」