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無職転生 - 蛇足編 -  作者: 理不尽な孫の手
ルーシーとパパ
6/32

6 「ルーシーの家族」

 私の名前はルーシー・グレイラット。

 グレイラット家の長女だ。


 私には大勢の家族がいる。

 三人のママ。

 三人の妹。

 三人の弟。

 二人のおばあちゃん。

 二人のおばさん。

 三匹のペット。

 全部で十六人。大勢だ。



 ママから紹介しよう。

 ママは三人いて、白い髪のママと、青い髪のママと、赤い髪のママがいる。


 白い髪のママは、私を産んでくれたママで、パパの一番最初のお嫁さんだ。

 ママの中では一番年下で、一番甘えん坊だとパパは言っていた。

 白い髪のママは饒舌な人で、私にいつも言った。

「友達を作ることが大事だよ。それと、弱いものイジメは絶対にダメ」

 白い髪のママは、友達を大事にするということの大切さを言い聞かせてくれた。


 青い髪のママは、ララのママで、パパの二番目のお嫁さんだ。

 ママの中では幼く見えるけど一番年上で、一番頼りになるとパパは言っていた。

 青い髪のママは、無口な人だったけど、たまに私に言った。

「好きなように生きて、わからない事があったら誰かに聞きなさい」

 青い髪のママは私に何かを言い聞かせる事は無かったけど、何でも知っていて、聞けばなんでも教えてくれた。


 赤い髪のママは、アルスのママで、パパの三番目のお嫁さんだ。

 ママの中では一番年上に見えるけど、一番幼いのだとパパは言っていた。

 赤い髪のママは言葉があまりうまく無かったけど、私にいつも言った。

「誰かを守ることが大事よ。そのためには強くならなくちゃいけないわ」

 赤い髪のママはそう言って、私を鍛えてくれた。


 私は三人のママの教えを守ろうと思っている。

 友達を作って、その友達を守るために強くなる。

 でも弱いものイジメは絶対にしない。

 そして、困ったら青ママにどうすればいいかを聞く。

 そうすれば間違いは無いし、褒めてもらえる。

 パパにも「ルーシーは賢いね、さすがお姉さんだ」と褒めてもらえる。


 妹と弟は六人だ。


 一番上の妹のララは、とっても優しい子だ。

 青ママとおんなじ色の髪を持っていて、長い髪を一本のおさげにしている。

 不思議な子で、金髪のおばあちゃんや、ペットのビートとお話している事が多い。

 おばあちゃんもビートも喋らないのに、ララだけが喋るのだ。

 そんな人で、いつもボンヤリしているせいか、広場に遊びにいくと、近所の子供にお下げを引っ張られてイジメられている事が多い。

 すぐに私が助けてあげるけど、あんまり嫌そうな顔はしていなくて、拍子抜けする。

 お昼寝が大好き。よくレオの背中に乗っかって、気持ちよさそうに寝ている。


 一番上の弟のアルスは、勇敢な男の子だ。

 赤ママとおんなじ色の髪を持っていて、短く切りそろえている。

 おませさんでやんちゃだけど、いつも私やララを守ろうとしてくれる。

 きっと私と一緒で、ママの教えを守ろうとしているんだと思う。

 赤ママにすっごく期待されていて、最近では毎日走ったり、剣を素振りしたりしてる。

 アイシャおばさんと仲がよくて、一緒にいる時はいつも嬉しそうだ。


 一番下の弟のジークは、泣き虫な男の子だ。

 アルスの後ろをよちよちとついていこうとしては、置いて行かれて泣いている。

 その度に私はアルスを叱る。するとアルスはジークの手を引いて、レオの背中に乗っけてあげるのだ。

 ララはジークがレオによじ登ろうとすると、自分はちょっと後ろに下がって、前に引っ張りあげる。そしてジークが落ちないように後ろから抱きしめて、すやすやと眠ってしまう。

 実は私だけが知っているんだけど、ジークはすごい力持ちだ。

 凄く重い箱とかを、ひょいっと持ち上げてしまうのだ。


 もう一人の弟はクライブという。

 ララと同い年で、本当は弟じゃない。

 白ママのおばあちゃんの子供だ。ママいわく、従兄弟みたいなもの、らしい。

 なんて呼ぶのかよくわからないけど、私は彼のことを弟として扱っている。

 よくうちに遊びにきては、アルスと仲良さそうにしている。

 私のことも好きみたいで、よく抱きついてくるので、頭をなでてあげると、恥ずかしそうに笑う。


 一番下の妹たちは、生まれたばかり。

 まだまだ小さくて、よくわからない。けど、きっとみんないい子に決まっている。


 私はそんな兄弟姉妹のお姉さんだ。

 お姉さんだから、しっかりしなさい。

 と、ママたちには何度も言われてきた。

 私は言われたとおりにしようと思っている。

 弟も妹もみんなかわいいから、みんな守ってあげたい。



 おばあちゃんも二人いる。


 金髪のおばあちゃんは、パパのお母さんだ。名前はゼニスさん。

 とても綺麗な人だったというけれど、喋らないし、話しかけても返事をしてくれない。

 いつもボンヤリしていて、お庭でビートと一緒にいる事が多い。

 でも、私が悲しんだり、怒ったりしてる時は、なぜか頭をなでてくれる。

 不思議なおばあちゃんだ。


 茶髪のおばあちゃんは、アイシャおばさんのお母さんだ。名前はリーリャさん。

 元々は、おじいちゃんの家に仕えるメイドだったらしくて、まるでメイドのような立ち居振舞いをする。

 三人のママは、このおばあちゃんには一目置いているけど、昔、私はなぜ、茶髪のおばあちゃんがおばあちゃんなのか、わからなかった。

 以前、道端で誰かが「メイドなんて下々の者なんだから、顎でこきつかえよ」なんて話していたので、私もやってみたら、赤い髪のママに凄く怒られた。

 お尻が真っ赤になるまで叩かれて、一晩そこで反省しなさいと、家の外に放り出された。

 ペットのレオと身を寄せ合って震えていると、茶髪のおばあちゃんが家に入れてくれた。

 おばあちゃんはその時、私に何があったのかを教えてくれた。

 私はその時、茶髪のおばあちゃんはメイドだけどおばあちゃんで、顎で使っちゃいけないのだと知った。



 おばさんも二人いる。

 どっちもまだ若いのでおばさんというと怒るけど、おばさんはおばさんだ。

 もっとも、私にとってはお姉さんみたいな存在だ。


 上のおばさんは、金髪のおばあちゃんの娘で、パパの妹。名前はノルンさん。

 いつも一生懸命な人で、よく私と遊んでくれて、いろんなことを教えてくれた。

 私はこのおばさんがとても好きだ。

 将来は、このおばさんみたいになりたい、と思っている。

 ちょっと前にお嫁さんに行ってしまって、今は家にはいない。

 たまにしか家に帰ってこなくて、帰ってきたら下のおばさんとよく口喧嘩している。

 仲が悪そうに見えるんだけど、口喧嘩しながら笑ってて、なんだか楽しそうに見える時もある。


 下のおばさんは、茶髪のおばあちゃんの娘で、パパの腹違いの妹。名前はアイシャさん。

 茶髪のおばあちゃんと一緒で、いつもメイド服をきていて、家の事を取り仕切っている。

 私が家で何かをする時にお世話になるのは、大体このおばさんだ。

 お料理もお洗濯も、なんでも教えてくれた。

 アイシャおばさんは何でもできる人で、とても優秀だとママが言っていた。パパのしごとも手伝っているらしい。

 なのに、たまに茶髪のおばあちゃんに怒られてる。不思議だ。



 ペットは三匹いる。


 大きな白い犬のレオは、守護魔獣だ。

 とても賢くて、私たちの言葉を理解している。

 家族全員を見守っている感じで、パパも何かあったらレオに頼りなさい、と言っていた。

 ララがお気に入りで、家にいる時はララにベッタリだ。


 アルマジロのジローは、青ママの乗り物だ。

 臆病な性格で、叱られると、すぐにお腹を見せるか、ボールのように丸まってしまう。

 でも、私たちが出かけている時に何かあると、唸り声を上げて相手を威嚇することもある。

 彼なりに私たちを守ろうとしてくれているのだ。


 トゥレントのビートは、アイシャおばさんの菜園の守護神だ。

 植物の魔物なので何を考えているのかはさっぱり分からないけど、金髪のおばあちゃんや、ララと一緒にいる事が多い。

 菜園の作物を荒らそうとする相手には容赦がない。

 よく、パパが大好きな「米」の実を食べようとした小鳥なんかが捕まっていて、ビートの養分にされている。

 ちょっと怖いけど、家族に襲いかかった事は無い。

 それどころか、私たちが近づくと木の実をくれる。彼も家族なのだ。


 十六人。

 私に家族はいっぱいいる。

 ママも妹も弟も、いっぱいいる。


 でも、パパは一人だ。

 一人しかいない。


 私はパパが大好きだ。

 物心ついていない頃は、パパのことを避けていたらしいけど、大好きだ。

 パパの匂いは、とっても安心する。

 たまにお髭がジョリジョリしているけど、それも好きだ。

 パパはあんまり、お髭には触らせてくれない。

 たまにぼーぼーに伸びてる時があって、私がそれにさわろうとすると、やんわり手を取って、「ごめんね、いま剃ってくるからね」とお風呂場の方に行ってしまう。

 そんなのいいのにと思うけど、パパなりに考えがあるのだろう。

 お髭は触らせてくれないのは残念だけど、でもそんなことで私はパパを嫌いになったりはしない。


 ただ、パパはあんまり、私に期待してくれていないのだと思う。

 なんとなくだけど、そう思う。

 心配はしてくれるし、愛してもくれるけど、期待はしてくれていないのだと思う。


 きっとそれは、パパが凄い人だからだ。

 うん。

 私はよく知らないけど、パパが凄い人だっていうのは、なんとなくわかる。

 パパが私ぐらいの頃は、魔術だってとっくに聖級を使えたし、学校に通うどころか、教える立場になっていたらしいし。

 五歳になって、町中や公園で遊ぶようになって、色んな人とおはようの挨拶をするようになったのだけれど、そういう人たちは、みんなパパのことを知っていて、パパのことを尊敬していた。

 特に、すごく偉そうな人ほど、パパを褒めるのだ。

 ママたちも凄いのだけど、パパは別格なんだと、私は子供ながらに理解している。

 そんなパパが、私に……いや、私たち(・・・)に期待してくれないのも、仕方ないのだと思う。


 でも、私はパパに褒めてほしい。

 ママたちの教えは守るし、弟や妹たちも守る。

 すると、ママたちはたくさん褒めてくれる。

 けど、パパにも、褒めて欲しいのだ。


 私はもう七歳だ。

 今日から学校にいく。

 大人の人も通う学校で、白ママと青ママとパパが通っていた学校だ。

 赤ママは通っていなかったけど、たまに先生として剣術を教えていると聞いている。


 あなたなら大丈夫。今まで教えたことをきちんと守れればやっていけます。と青ママは言ってくれたけど、少し不安だ。

 大人の人がいっぱいいる所。

 そんなところでちゃんとやっていけるのか。

 お友達はできるのか。

 期待もあるけど、不安が大きい。


 でも、きっと、そこで頑張ったら、パパも褒めてくれると思う。

 「ルーシーはすごいね。さすが俺の娘だ」って、褒めてくれると思う。

 そしたらきっと、期待もしてくれると思う。


 だから、それを目指して頑張ろうと思う。

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― 新着の感想 ―
ルーシーとしてはいつも頼りになるママ達よりもずっとすごいパパに「さすが俺の娘」と褒めてもらいたいわけだけどそのパパは自己肯定感が低いからそんな風には褒められない、だから私たちは期待されてないって思っち…
[一言] クライブもしかして大叔父、、、?
[一言] ルディが全力で生きた結果がこの大家族だと思うとつくづく感慨深いなあ。 しかも事業の主幹が世界防衛(対ヒトガミ)という
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