表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちび蛍と妖精王  作者: 愛と紀子
4/5

妖精の王

 ちび蛍と妖精王は、出会ってからいつも一緒にいました。

 木の葉の色が変わって、落ちてしまっても、ちび蛍は元気でした。

 妖精王には癒しの力がありました。きっと、その力を使ってちび蛍を元気のままにしているのだと、妖精達は話していました。


 ちび蛍は妖精王と一緒にいて、幸せでした。

 でも、妖精王は一緒にいてはくれますが、自分からは話しかけてくれませんし、誘わないと遊んでくれません。

 ちび蛍は、少し面白くありませんでした。


 ある日、水を飲んでから妖精王のいた場所に戻ってみると、そこに妖精王はいませんでした。

 代わりに、金色の髪をした別の妖精が、ちび蛍を待っていました。


「妖精王は?」


 ちび蛍が尋ねると、妖精は


「魔物が森へ侵入したので、退治に向かわれました」


 と、笑顔で答えました。


「まもの?」


 初めて聞く言葉に、ちび蛍はきょとんとしました。


「この森を狙っている連中です。

 王は森を護る為、戦いに向かわれたのです」


「妖精王が?」


「はい。とてもお強いんですよ。

 まあ、先代様には無かった力もありますし、当然ですが」


「先代? 妖精王の前に、王様がいたんですか?」


「ええ、いらっしゃいました。確か、オベロン様とおっしゃいました。

 最期は、今まさに王が戦っておられる連中に負けてしまいましたが、あの方も、よく森を護ってくださいましたよ」


 妖精は、最近の事を語るような軽い調子で話しました。


「ですが、王が亡くなった時は本当に大変でした。

 いつ襲撃されるかわからない状況で、森に、彼の王より強い者はいませんでしたし」


「妖精王は、前の王様より弱かったんですか?」


 ちび蛍は、人間の女の子のような姿の妖精王を思い浮かべました。


「とんでもない。むしろ、あの方は先代以上ですよ。

 なにせ、我々の持つ力の全てを注いで造り上げた“王”なのですから」


 ちび蛍は驚きました。

 この妖精は今、王を「選んだ」とではなく、「造った」と言ったのです。

 ちび蛍は、わけがわからなくなりました。


「どういうことですか?」


 ちび蛍が尋ねると、妖精は、誇ったように答えました。


「そのままの意味ですよ。

 今の王は、我々が造り上げた王なのです。ご覧ください」


 妖精は、一本の大木を指さしました。

 それは、ちび蛍がよく妖精王と座っている、森の中心に立つと教えてもらった大木でした。


「この樹は、魔力溢れる森の中心に立つ樹です。

 森の魔力を存分に受け生きてきた、先王が“森の女王”と呼んでおられた樹。

 我々はこの樹の根本に先王の遺体を埋め、この樹の魂から、今の王を造りだしました」


 すうっと息を吸い込み、妖精は高らかに続けました。


「森で最強の魔力を持つ主に、最高の力と、決して滅ばぬ身体を与えた。

 姿形は何にも逆らわぬものである、人の娘に似せて造り、先王には無かった翼を与えた」


 ちび蛍は、妖精の言葉を黙って聞いていました。


 ちび蛍はこれまで、誰にも相手にしてもらえず、ひとりぼっちでした。

 妖精王は、妖精達に王として頼られていましたが、この妖精の話し方からすると、妖精王もまた、ちび蛍と同じようにひとりぼっちだったのでしょう。


「それにしても、不思議です」


 ふいに、妖精が話を変えにきました。


「王が、君をこんなにも長く生かし、傍に置いておくなんて」


 きっと、同じ気持ちだったから。妖精王もボクと同じで、寂しかったから。

 ちび蛍がそう言うより早く、妖精は言いました。



「王には“感情”など無いはずなのに」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ