表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちび蛍と妖精王  作者: 愛と紀子
3/5

妖精の森

 妖精王は、ちび蛍に森を案内してくれました。

 森はやはり広く、深く、どこも綺麗でした。

 そしてどことなく、森は不思議な感じがしました。


「不思議な感じです」


 ちび蛍がそう言うと、妖精王は頷きました。


「この森には、魔力が満ちている。

 いつからかは覚えていないが、妖精が集まり、棲みつき始めたのもこの為だ」


「そういえば、妖精王は王様なんですよね。他に妖精もいるのでしょう? どこにいるんですか?」


 ちび蛍がそう言った途端、色んな方向から笑い声が聞こえてきました。話し声も混じっています。

 何かが、木の葉の間を飛び回っているのが見えました。


「彼らはそこにいる。ここは、妖精の森。……妖精達の統べる国だ」


「え? あなたの統べる国でしょう?」


 妖精王は、なにも答えませんでした。ちび蛍を連れて、どんどん飛んでいきます。

 その後を、小さな妖精達がにこにこと見つめていました。


 しばらくしてちび蛍が連れてこられたのは、浅くて綺麗な、小川でした。

 傍には、森で見たどの樹よりもずっと大きく、ずっと立派で綺麗な大木が立っていました。


「ここは森の中心。最も魔力の強い場所」


 妖精王に下ろしてもらって、ちび蛍は小川の水を飲みました。それがとてもおいしくて、ちび蛍は夢中で水を飲みました。

 ちび蛍が水を飲んでいる間、妖精王は盛り上がった根に座っていました。


「ごちそうさまでした」


「どうだった? 今日は」


 隣にとまったちび蛍に、妖精王が聞きました。


「とても楽しかったです。初めて友達もできたし、うれしかった。

 案内してもらった所はどこも素敵でした。ありがとうございました、妖精王」


「素敵……か。私はただ、妖精や動物、たまに来る人間の好む所を案内したにすぎないが」


「妖精王が好きな場所じゃなかったんですか?」


 ちび蛍は、妖精王の大きな瞳を見上げました。

 夕方になって、森がだんだん暗くなってきます。

 妖精王の体が光り始めました。ちび蛍のおしりも、小さいけど光っています。


「私には、そう〝感じる〟ものは無い」


 感情の無い新緑色の瞳が、ちび蛍を見下ろしていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ