表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

31話 えすけいぷ・ふろむ・りありてぃ

 黒い闇のなか、呪いの効果でもあるのか肉体を崩して散っていく混血鬼(ダムピール)を見やる。


 進化って反則。戦いが終わってのち、俺が剣をしまいながら出した結論である。

 まず見た目の変化からいこう。

 カッサカサだった黒髪はごく普通のボサボサな長髪になっている。首をひねれば肩甲骨辺りに毛先が見える。その背中やら腕やら、とにかく見える範囲全ての肌が真っ白の肌になっている。不健康に見える一歩手前な白さ。きっと生まれてこの方迷宮の外に出てないからだろうなぁ。

 次いで服装なのだが、なぜか着衣である。

 いや戦闘中に脱いだはずとかそんなわけではない。

 正確に言うと、進化する前に着ていたはずの鉄鎧やら革の道具やら一式全部が消え、その代わりに同じ素材でできた服を着ているのだ。全体的にほっそりした体に合う細身。そのくせ伸び縮みが半端ではない。一様に黒いコートもズボンも内側のシャツも暗すぎず明るすぎない適度な暗さで、要所要所を鈍く光る鋼鉄が補強している。正直カッコイイ。思わず一回転して、それからうずくまった。悶死。

 あと、先延ばしにしていたのだが。

「尖ってる、なぁ・・・」

 片手で耳を触り、舌で歯列を確かめながらつぶやく。

 耳は一番頂上の部分がツーンと尖り、犬歯も「あ、伸びてるわ」ぐらいな感じで尖っている。たぶん両者ともなにに使うってわけでもなさそうだが。

 それから肉体性能の確認に入る。

 グルグルと体全体や腕を動かしてみると唖然とするほどよく動く。蘇人の前は自然過ぎて気がつかなかった筋肉や関節の不具合が消え、今は何の抵抗もなく滑らかな動きを見せる。もちろん筋肉や筋があるからこその可動領域の変化はあるが、その辺はご愛嬌だ。

 それに魔力。今までの感覚でいう握り拳分くらいの魔力を手のひらに出してみたら、なんかどんよりした瘴気っぽいのがどろどろ流れ出てきた。一向に止まる気配を見せないそれにびっくりしすぎてしばらく固まっていたら、ふらりと現れた骸骨一匹がその中に、無造作に分け入って。


 あ、止まった。真っ黒になった。それから崩れた。わーい、経験値取得!




「え、ちょっと待て理解が追いつかない」

 どういう仕組みだアレは。毒か、毒なのか。いや骨を殺すんだから毒じゃないのか。

 あーもーわかんねえから呪いでいいや。うん。【黒呪(こくじゅ)】でいいよ。うん、黒い呪いでいいんだ。がっちりばっちり。

 もういろいろ吹っ飛んで、朱剣拾って混血鬼の謎もいろいろ放り捨てて家に帰った。

 俺の常識さようなら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ