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21話 やつあたり

 強力な魔法攻撃を操る魔法使い。やや技量寄りながら十分に魔物と渡り合える実力者、ロン。戦力にはならないが迷宮攻略の上で重要な癒し手(ヒーラー)バルト。ついには巨大な盾で圧倒的防御を誇っていたはずのカルロまでが、圧倒的物量と俺のこすっからい作戦に殺された。残るはヘイズン、鉈と盾という珍しい組み合わせの戦士。

 彼は今、一人で残る魔物たちを切り伏せていた。溢れる異形たちの数と比べれば巨岩に小刀を刺すようなモノだが、俺としてはたった一人で戦い続ける彼の精神に驚いていた。

 これはもしや隠れた実力でもあったのか、とよく見ればほとんど狂人になっていた。口から泡を吹きながら武器を振り回すってどうなんだ。しかも大胆、というか無鉄砲になってどうも戦闘力が上がっているようでこちらも近づけず、全く始末に終えない。

 そんなわけで引導を渡してやるために、俺は残り二本となった貴重な矢を装填し、無造作に撃った。倒れるヘイズン某。全身に突き刺さる槍、大剣、小剣。どうやら直接殺したのは彼らが持った武器だったらしい。折角の冒険者が。

 進化への重要な獲物を奪われて少しだけだけど、イラッと来た。

 地面に残った、死んだ竜骨戦士(スケルトン)の片手剣を拾い上げた。さっき壊れてしまった長剣より短いが、それでも片腕よりちょっと長いぐらいはある。切れ味より頑丈さ重視っぽいけどそこは全く問題なし、むしろそっちの方がいい。鞘も一緒に見つかったからこれ幸いと鎧に括りつける。まあたぶん鎧の方を新調することになるだろうけど。

 ひとまず影を刀身に纏わせ、攻撃目標を失いボーっと突っ立っている一番手前の蘇人(ゾンビ)の首を刎ね、故ヘイズンの三角盾(カイトシールド)を拾い上げて左手に装着。あいかわらず魔物である俺には反応が鈍い魔物たちのど真ん中で剣を地面に突き刺して、盾の裏側に付いている革帯を左腕に巻き付ける。防御は確保、コレ重要。

 さて。

「俺の長寿のため死んでいただけるかな?」

 冴えない冗談じみた独り言を呟きながら影太刀一閃、腐り切った肉を、乾いた骨を一瞬で切り裂く。刃を返し、こちらに顔を向けた骸骨の顔面を両断。手応えは殆どない。

 もしや―――てか憶測というか今思いついたけど―――魔法使いを殺したから魔力でも上がったのだろうか。いやいや使い続けて影の強度が上がったか?待て、俺自身が強くなったという可能性も捨てきれんだろう。

 お、良さげな鎧発見。なんていうかこう、若干軽そうな鋼鉄鎧(フルプレートメイル)、みたいな。

 着用しているのは片腕が千切れてちょっと残念な蘇人(ゾンビ)。武装のランクからして俺より上位種だ。しかし、今のボロボロな鉄鱗鎧(スケイルアーマー)装備な俺としては、なんとしても手に入れたい。

 そんなわけで、未だ戦闘には至っていないヤツを仕留めるため、群がる死人モドキを切り裂きつつ大回りして背後へ、首の辺りの鎧の隙間に刃先を丁寧に当ててブズリと突き刺す。黒く染まった刃はあっさりと鎧の中身である柔らかい肉を貫いた。

 倒れる蘇人をまったく意にかえさず、寄ってこようとする(ヤカラ)を斬り捨てる。

 貴様ら獲物だけでなく素敵な鎧まで駄目にする気か。殺すぞ。ってまあ結局殺すけど。

「あ」

 地面に転がる本っぽい何か。一瞬俺の愛読書かと思ったがそんなワケはなく、腐人(ロッテンヒューズ)を二人まとめて斬首しつつ近寄ってみると題名が見えた。……【魔法運用講座】。よしソレ寄こせ。

 たぶんバルトとかいうのが持ってたんだろう。どことなく勤勉そうなオーラ漂ってたし、もしかしたら将来は大物になったかもしれない。ま、一撃で首刎ねて殺しちゃったから今更何を言っても遅いんだけどね。

 調子に乗った俺が、八つ当たり的な意味で満足したのは、それから時間がかかった。


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