2話 ひゃっはー
累々と倒れる死体たちからめぼしい物を剥いでいく。冒険者がいいモノを持っているのはともかく、骸骨戦士たちにもランクがあり、身に着けている装備にも当然違いがある。俺はボロボロの革鎧を脱いでタンクの男から奪った鎧を身に纏う。金属板が小さく、鱗のように連結している鉄鱗鎧は以前の革鎧より格段に防御力が高いはずだ。
スカスカの骨と鎧の当たる妙な音を響かせつつ、俺は剣士をひっくり返した。生きていた時のまま、硬く閉じられたままの手から短剣を強引に奪い、鞘と一緒に鎧に装着する。それからその隣に倒れている骸骨へ。そいつが持っている小剣を貰った。こいつは鞘がないので抜き身のまま持つしかないだろう。
後は特筆すべき装備はなかった。ヒーラーが持っていた麻袋にガラス瓶に入った回復薬を集め、いく本かの矢と短剣を一緒に入れる。
麻袋を担ぐと俺の住処への帰路を辿り始めた。
途中、地面から湧いて出てくる途中の骸骨戦士を見つけた。
魔物というのはありふれた存在である。ただ俺や今湧いた同胞、それから先ほど俺が装備品を奪った奴らは特殊だ。その特殊性は生まれた場所という点に由来する。
本来魔物というのは一般的に言えば『異常な生物』だ。大き過ぎたり火を噴いたりと普通のヒトには勝つどころか手も出せないような、そんな生き物をまとめて魔物、と呼んでいる。
彼らの起源に関しては諸説あり、「悪神の落とし子」だとか「たまたま異常性を持って生まれたモノが生き残り、子孫をなした」とかイロイロ言われているが、結局のところはっきりと分かっていない。故に魔物を生まれさせないようにすることは不可能であるのだが。
つまり魔物というのは種族の一つと考えればいいわけだ。ただ単に戦闘力が高い厄介な生物。
しかし俺たち。迷宮と呼ばれる場所で生まれた俺たちのような魔物は、戦闘を重ね生き残ることで異常に戦闘力が上がることで知られる。外界の魔物の殆どがそのままの姿で一生を終えるのに対し、俺たちはある一定まで強力になると進化するのだ。進化というのは結構理不尽なモノで、一気に戦闘力がハネ上がってしまう。
だが大抵の迷宮の近くには冒険者がいるため、進化するほどの年月を積み重ねられる方が少ないのだが。もし、誰も入っていない迷宮などがあればおそらく、そこの勢力の頂点ともなれば街一つ滅ぼせる力を持つことになる。誰も間引かない内に殺し合って勝手に強くなるからだ。
と、まあこの説明は初心者冒険者の荷物に入ってた本【迷宮冒険指南書~基礎~】という本を要約したのだが。
俺はさっそく最後の一文を参考にしてみた。そう―――例え仲間でも殺せば強くなる。
貰ったばかりの小剣の腹で、体を引き上げている途中の骨、その頭蓋骨を思いっきり殴る。ゴッと鈍い打音が鳴る。グラついたところへ第二、三撃と渾身の攻撃を加えていくと途中で骸骨が崩れた。穴に腰から下を埋めているぐったりした骸骨。可笑しいを通り越してなんだか怖い。
帰ろ。