11話 とつげきぼーん
戦い方は完全に変わった。
俺は長剣を抜き放ち、ぶらりと通路の角から姿を出した。黒い骨で見え辛いだろうが、恐る恐る近寄って来た冒険者たちには俺の正体が分かったらしい。一瞬の内に目配せを終え隊列を整える。その間に俺は鎧のない部分全てに濃密な黒い霧を纏わせていく。
「行くぞ!」
「いつも通り、連携を意識しろよ!」
「おうッ」
元々黒い骨に黒い霧が付いたところで気づきはしない。俺は思惑通りの動きを開始すべく、壊れかけの盾を全面に掲げ突撃する。順番に駆けて来る敵は僅かな動揺も表に出さず、冷静にそれぞれの武器を構えた。長剣が、短槍が、短剣が交差するような軌跡を描き俺の体に吸い込まれていく。
しかし。盾と鎧そして霧に守られた俺の体は多重に張り巡らされた死線を強引に突破。高い金属音を奏でながら一直線に後方支援の、魔法使いとみられる壮年を過ぎた男に走り寄る。
霧の防御力は、黒骸骨の頭蓋を守っていた時のまま、健在だ。以前俺を追った妙な青年のように、光と火をまき散らしでもしないとこの堅い守りは突破できないに違いない。あれは別格だ。
俺は驚きの声を背中に受けながら魔法使いの眼前に立った。すっかり愛用している長剣を振りかぶり、目を見開く男を淡々と切り裂いた。直前で掲げられた腕はなんの意味もなさず切断され地面を跳ねる。
怒りの罵り声が迷宮に、爆音のように反響する。俺は叫ぶ者たちを緊張した視線で捉える。
普通の骸骨なら絶対にしないはずの動きと防御力で初撃は貰ったが、これからは怒りに満ちた反撃が始まるだろう。
横目で死体と化した男を見る。『いつもの連携を』、そのようなことを言っていた。つまりこいつが司令塔的な役割を担っていたのだろう。司令塔を失った兵士は、集団としての力を発揮できない。
「ローエンをッ…お前ッ」
「死ねぇぇぇぇッ」
本来なら『死』の恐怖でおそらくマトモな動きはできていないだろう。知識ばかりの俺はその恐怖に震えるしか手がなかった。だが今ならば。驕るのでもなく萎縮するのでもなく冷静に見極めて、それでも。俺はこの程度の敵に、負けはしない。そのくらいの自負はある。だがせめて、あの光と火の青年に勝てるほどまでには強くなりたいと思う。彼が再び襲来する可能性も残されている。
一番早く飛び出してきた短剣使いの少年。何も考えず突っ込んできたところに合わせ長剣を力任せに、水平に振る。短剣を押し切った斬撃が腹筋を抉り臓器を破る。断末魔を剣に付いた血糊と一緒に振り払い、俺は単騎で生き残った二人を睥睨する。
ここまではのし上がって来た。それは幸運を元にして積み重ねた俺の努力。もう一つ幸運が舞い込んだのだ、進むことはできる。
不意に立ち止まった二人の内、一人が雄叫びと共に飛び込んできた。
鉄臭さが濃厚になった。