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こんなに近くにいるのに


先生の部屋は、シトラス系の匂いと、少し冷たい雰囲気が感じられた。


特にモノクロな部屋というわけではないが、

暖色系の色が見えるのに、今の先生の雰囲気がそう感じるさせているように思えた。


「・・・上がっていいよ。」


「・・・はい。」


1LDKだろうか、少し奥には寝室だおうか、ベッドが見えた。

ベッド周りはまだ片づけられていないが、キッチン周りは少し荷造りがしてあった。


見たいのに、今は見てはいけない気がした。


何故僕はここに連れてこられたのかわからなかった。


自分の頭をフル回転して考えてみても、

こんな状況、青年漫画のいけない展開になることしか思いつかない。



思い直してみる・・・

偶然、先生が泣いているところを目撃して、大丈夫か気にかけたら、

車に乗ってと言われて・・・気づいたら今だ。


そんなことはお構いなしだろう、先生は何もなかったかのように話しかけてくる。


「少し雨に濡れちゃったよね。これで拭いていいよ。」


そう言って先生は、脱衣所からタオルを1枚取りだして、僕にわたした。


そのタオルからも、もちろん先生の匂いがした。

ここは大人の女性の部屋なのだ。



「そこ座ってていいからね。・・・なんか飲む?」


「あ、いえ、お構いなく。」

改めて先生の家に来てしまったんだと思うと、ものすごく緊張してきた。

促されたまま、目の前のソファに座った。


「・・・それよりもなんでここまで・・・。先生どうしたんですか?」


僕はその場の空気に耐えられず聞いていた。


とりあえず何か事情があるのだと。

他に何を聞いていいかもわからず、もうどうしていいかわからなかった。


「・・・ごめんね。学校帰りだったよね。急に家に連れてくるなんて私どうかしてたな。」


先生の声はまた震えていた。先生は僕に気づかれないようにだろうか、

後ろを向き、コーヒーを淹れながら答えた。

少し濡れた髪をかき上げながら行う仕草一つ一つが、妙に色っぽかった。


僕はその姿を見ながら、今日何かあったんだと確信した。

震えながらも隠そうとする、先生のその華奢な肩を、僕は再度抱きしめたい衝動に駆られた。


「いえ、帰りが遅くなるくらい僕は別にいいんですけど・・・。」


時計を見ると20時を少し過ぎたころだった。

親に夕飯はいらないと連絡だけ入れておけばよかったなと少し思った。


「先生、4月には関西に行くんですか?」


校内でも噂になっている、真相を確かめたくて先生に聞いた。

僕の心臓はうるさかった。


地元にいてほしいという気持ちと、荷造りの途中を見る限り希望は薄いとわかっていた。



「・・・そうだよ。・・・春樹君は、私にここ(地元)にいてほしいと思う・・・?」


やはり関西に行くんだ。噂は本当だった。急に胸の奥底が冷たくなった。

ここで僕が引き止めれば、思いとどまってくれるのか。



さすがに僕もそこまで自意識過剰ではない。でも止めるしか今の僕にはできなかった。



「先生、行かないでください。」

真面目にはっきりと言った。そのままの気持ちだった。


「・・・ごめんね。私あっちで結婚する予定なんだ。」


「その彼氏となんかあったから泣いてたんじゃないですか?」

「関西に行っても、泣いてばかりの生活なら行かないでくださいよ。」



「・・・じゃあ、春樹君が私のこと幸せにしてくれるの?」

先生がまっすぐ見つめて言う。力強く、大人な女性だと改めて認識した。

僕が今まで見たことのない女性の目だった。


・・・


さすがにすぐに返答はできなかった。



でも僕もここまで言ってしまっては引き下がれなくなっていた。


「・・・俺と一緒にいてくださいよ。絶対泣かせないから。」

今言える限りの背伸びしたセリフだった。



先生はさっきまでの強い目ではなくなって、優しい目になっていた。


「冗談だよ。これから東京の大学だもんね。気持ちはすごくうれしいよ。ありがとう。」


先生は僕の進学先も知っていた。

そこまで興味を持っていてくれたのだ。


なんで今知ることになるんだ。

もっと前から知っていれば、もっと先生と話したいことはあったはずなのに。

もっと仲良くなって、こんな話じゃなくて前向きな話ができたはずなのに。


・・・始まってないのに、終わった気分だった。



「・・・春樹君と話したかったんだよね。・・・

 というかこのまま関西に行く前に、一度は寄り道したかったのかもしれない。」


そういって先生は、コーヒーをテーブルに置いて、

僕の隣に座り、少し寄りかかってきたのだった。



恋愛小説って本当に雰囲気作りの情景を細かく書かないと伝わらないから難しい。

自分が思っていた通りに進まないです。

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