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道程


車が走り始めてどれくらいたっただろう。


出発当初はなんとか何気ない会話を続けていた。


毎日の学校生活や、他の先生の、授業中にでてくる変な癖だとか。

購買のパンで何がおいしいだとか。


一美先生は時折笑顔を作ってくれて、僕はうれしい気持ちになった。

さっきまで雨に濡れながら泣いていたとは思えなかった。



でもそんな穏やかな空気がいつまでも続くわけがない。

学校でもそんな長時間先生と話したことがないのに、車の中、つまり密室で、僕はいつものような冷静な気持ちでいられるわけがなかった。すぐに無言の時間はやってくる。



僕の心臓の音だけが、二人の沈黙にやけにうるさく感じた。



それにしても、この車はどこへ向かっているのだろうか・・・?


なんで先生は泣いていたのか。



そう考えだして数分後、辺りはだんだん住宅街に入っていき、小さめのアパートや、マンションが視界を囲みはじめた。



キーキキー


車はどこかの駐車場で停まった。





「着いたよ。降りて。」

先生は車のエンジンを止めながら言った。




「え?・・・はい。」

僕はどこに来たのかわからないまま、とりあえず車を降りた。



しかし、こんな住宅街でなんとなく予想はついた。




そこまで遠くには来ていないはずだが、自分の見慣れた景色ではなかった。




すぐに辺りを見回す。





そこは3階建ての少しうす汚れたマンションの前だった。

築15年くらいだろうか。


以前は真っ白と思われた壁も、少し黒ずんで、築年数よりもすこし年季が入っているように感じる。

まだ中にも入っていないのに、何となく冷えそうな印象だった。




「こっち。」

先生は迷わず階段を上っていった。


僕も見失わないように後に続いた。3階建てなのだが、エレベーターは備えられておらず、狭いらせん階段を上っていった。



(308号室)





一番奥の角部屋だった。

その部屋の前で先生は、鞄から車の鍵とは別の、もう少し大きめな鍵を取り出しドアの鍵穴に入れた。




・・・ガチャ・・・




ドアが開く。


シトラス系の香水の匂い。それは今まで隣の運転席から若干漂っていたものと同じだった。

一美先生の匂いが溢れてきた。




そう。僕が連れて来られたのは先生の家だった。



「・・・入って。」

先生は困ったような、でも何か言ってほしいような表情で僕を招き入れた。






<次話に続く。>

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