第1話*恋・♀*〜10メートル〜
**恋愛・♀**
授業も終わって
昼とは正反対の静けさの学校
オレンジ色の夕日が目にしみる
窓の隙間から秋の風
外から野球部の気合いの入った声
親友とあたしが
夕日が照らす長い廊下に立っている
『大丈夫だって!行っておいで!』
小さな声であたしを励ます
ヤバイ
心臓が
今までにないくらい弾んでる
廊下の向こうは音楽室
親友があの人を呼び出した
『あの人に気持ち伝えなきゃ!!ね?』
音楽室まで10メートルくらい
なのに何でこんなに遠いんだろ?
親友があたしの背中を押す
足が
足が動かないよ
体温が急上昇
絶対あたし顔赤い
こんな顔で気持ちを伝えるなんて……
改めて思った、恥ずかしい
あの人はクラスのムードメーカー
部活はサッカー
今日は月曜だから部活は休み
同じクラスだから
いつも聞こえるんだ
あの人の笑い声
廊下や隣のクラスまで聞こえちゃう
その笑い声聞くと
あたしまで笑いたくなる
あの人が珍しく休みだと
あたしのクラスは嘘みたいに静か
あの人の友達が心配するだけじゃなくて
クラスの皆が心配する
そんなに
あの人は大きな存在
毎日が過ぎていって
いつの間にか
あたしはあの人が好きになってた
毎朝、一瞬見れるだけで
テンションハイ
『先生がお前を呼んでたよ』
ってゆう
どうでも良い話だけで、
体が軽くなって
心があっつくなる
寝る前も
明日話せるかな
とか
明日も笑ってるのかな
とか
思うだけで
どきどきする
眠れない
初めて
初めてこんなに人を好きになった
前は普通に話せたのに
今はたじたじ
頭のなかで
あの人と話すイメージはわくけれど
やっぱ目を合わせた瞬間に
何を言いたいのか忘れちゃう
困ったなぁ……あたしって
こぉゆぅ時こそ女の見せどころなのに
好きって言いたい
マンガや雑誌みたいな
チョコみたく甘くて
たまにほろ苦い恋したい
でもさ
やっぱ現実はそんなの有り得ないもんね
自分でハッキリ言わなきゃね
そういえば前にあの人には彼女がいた
めっちゃ可愛い子だった
元カノ越えたいよ
でも
今のあたしは
元カノより
あの人が、大好き
けど
もし
もしフラレたら、どうしよう
明日学校行けないよ
もしかしたら自殺しちゃう
そんなことを思ってるのに
体は素直で
足は少しずつ音楽室へ
きっと気まずいよ
あの人もこの不陰気で
あたしの感情分かっちゃうかもしれない
不安だよぉ
でもやっぱり
足は自然とあの人の元へ
どきどき
どきどき
ドアノブに手をさしのべて
――………
あたしの前に
あたしの大好きな人
あたしの感情
絶対伝えてやる
――………大好き