おりんさんと学ぶ「八の字シャコタン」
おりんさんと学ぶ「八の字シャコタン」
「おりんさん、こないだすごいものを見たんや。八の字シャコタンのセリカXX。薄いゴールド。マフラー太し。おりんさんは見たことあるけ?」
「何のこと?意味わからんし」
「まあ、いまではそう思うひとが大勢やろうな。何のことかわかるひとは、わしと同じまたはそれより前の世代だろう」
しみじみと、豊多は続けた。
「それは、クルマのことだ」
おりんの反応は
「ふーん」
だった。
「シャコタンとは、この言葉を聞いたことがあるひとはそんなに珍しくはないかもしれん。車高を極端に落として、ぶっといタイヤが履かせてあるクルマのことやわ。これは現代でも、まれに見ることがあると思うぞ」
「だから?」
「これに「八の字」がつくと、滅多に拝むことができない。シャコタンにぶっといタイヤを八の字にして履かせてあるクルマのことやぞ。忘れんなや!タイヤ全面は地面に接地しとらん、外側が浮いとるものを指すんやぞ」
豊多はさらに熱くなる。
「これ以上は自分でぐぐってくれ。そのほうがワシごときが説明するよりも早い。そしてわかりやすい・・・・・」
「面倒やわ」
「シャコタン」に「八の字」がつくと、現在においてそれは、自販機で前の人が取り忘れて行った100円玉を失敬すると同じくらい希少なことだろうと断言するぞ!わしはペイペイやけど」
「しかも、セリカXXだった。まだ走ってやがる・・・・・わしが小学校5、6年生くらいに走っとった。あれはスープラでなくセリカXXや。太陽にほえろで走っとったな」
「太陽にほえろ?なんや・・・?」
「石原裕次郎や」
「だれ?」
「わかりやすく言うと、神田正輝や!」
「あ、あのおじいちゃん?」
「まぁ・・いい。マフラーがこれが太かってな。ぶぉ~と音がしとった。そういえば竹やりマフラーという強烈なやつもあった。あれは言葉にならんくらい迫力?があったぞいね」
「ふーん、なにかと努力してはるのは分かった」
「・・・・・」
越えられない壁があった。
「そして、色や。色。全塗装や。これはいくらかかるんか、わかるか?」
「想像つかんし、興味ない」
「・・・・・」
「これで車検が通るんか?」
「いいことを聞いたな。そのままではアウト!だろう。車検のときだけ大丈夫な仕様に替えてる?と思うけどな」
「車検代金は?」
「年数も走行距離も相当やろうし排ガス規制とかがあるしな、車検代は・・・・・わからん。スーパーオートバックスに聞いて」
―他にも所有するためには金がかかる―
自動車税はいくらなんだ?
我慢しろ!
重量税?
知るか!
任意保険は?
事故起こすな。努力して等級上げろ!
ぶっといタイヤとホイールは?
貯金崩せ!
燃費悪そう。
そんな細かいこというなや!!
排ガス極悪やろな。
「ごめんない」と謝れ。
「八の字シャコタンの前に並んで、特攻服にうん〇座り、そして煙草を指はさみとか、くわえ煙草。全員で睨みの集合写真。それが時代というもの」
「今でいうハイブリッド車?」
「その対極を行く。なんども言うけど、それが時代」
「シャコタンブギ」立ち読みで読んだ。
「その手の雑誌」買ってた。
「プラモデル」作った。マブチモーターで走らせた。八の字仕様では走らない・・・ことがほとんど。まだガンプラがまだ流行る前のこと。ついでに戦闘機とか軍艦も作っとった」
「ガンプラって超大昔やがいね。あんちゃん、いくつや?」
「聞くな」
「とにかくだ。こないだ見れて滅茶苦茶嬉しかったんや」
「ふーん」
「八の字シャコタン。それは、ステータスシンボルだ。ファションである。どうや、わかったか?」
「大袈裟な」
「ちなみにわしが小学生の頃の話やさけな。どんどん規制が強くなってすたれて行き、姿を拝むことが減っていった。やから。わしが免許を取るころには、すでに貴重な遺産だった。あたりまえに、わしは運転した経験はない。運転したいと思わんかったけどな」
「ブックオフでその漫画見つけたら立ち読みする」
「買って読め」
※現代のクルマでは、「鬼キャン」と呼ぶそうです。




