9/10
魔王さま、魔界税を払ってください。
課長と二人、受付の椅子に座る。
先ほどの課長の正体が気になり、
受付の説明がまったく頭に入ってこない魔王さま。
その横で、鈴木課長は静かに説明を聞いている。
「——以上が、住民票発行までの流れになります」
受付のダークエルフが淡々と告げる。
課長が小さくうなずいた。
「ありがとうございます」
そして、魔王さまの方を見る。
「魔王さま、魔界税は納めておられますか」
魔王さまはハッと顔を上げた。
「……魔界税?」
「我は、魔王だぞ」
沈黙が落ちる。
受付のダークエルフが、ゆっくりと口を開いた。
「魔王さまでも、魔界税は納めていただきます」
魔王さまは固まる。
「住民票とやらを取りに来ただけなのに……」
力なくつぶやき、項垂れる。
課長は静かに補足する。
「未納の場合、延滞金が発生する可能性もございます」
「……延滞?」
魔王さまの肩が、ぴくりと震えた。
ダークエルフは事務的に続ける。
「なお、滞納が続いた場合——」
一瞬、間を置く。
「差し押さえの対象となります」
「……なにをだ」
「魔王城などが該当します」
魔王さまは、ゆっくりと顔を上げた。
「我の城を……?」
ダークエルフは微笑む。
「はい」
静寂。
——魔王さまは、三度目の沈黙に沈んだ。
「……侵略より先に、納税か」




