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魔王さま、受付番号145番です。
魔界課 受付。
順番待ちは——145番。
魔王さまは待合の椅子に腰を下ろす。
珍しく落ち着きがない。
隣に座る課長が、穏やかに声をかける。
「同席しましょうか」
少し安心した顔を見せる魔王さま。
「どの市にも、このような受付があるのか」
魔王さまが低く問う。
「いえ。この県では、ここだけです」
課長は微笑む。
「我々魔族は、他の地域では迫害を受けることもあります」
「ですが——この市は違う」
「我々にも、平等に対応してくれます」
魔王さまは小さく息を吐いた。
「……そうか」
一瞬、沈黙が落ちる。
やがて魔王さまが、ゆっくり口を開いた。
「……いや、待て。鈴木よ」
「なんでしょうか」
「貴様——まさか、魔界から来たのか」
課長は、ほんのわずかに目を細めた。
「おや。気づきませんでしたか」
「わたしは——」
「145番でお待ちの方〜」
受付の声が響く。
魔王さまが顔を上げる。
課長はすっと立ち上がった。
「呼ばれましたね。行きましょうか」
「おい、待て……まだ話が——」
課長は振り返らず、そのまま歩き出す。
魔王さまは慌てて立ち上がり、後を追った。




