魔王さま、魔界課へお願いします。
お昼休憩が終わり、自分の席へ戻る。
前から、ドカッと音が聞こえた。
顔を上げると——魔王さま。
周りの受付は、私より先に昼休憩を終えていたはずなのに、なぜか誰もいない。
嫌な予感がして同僚たちを見ると、
全員がいそいそと目を逸らした。
「うむ。そなたの帰りを待っていた」
魔王さまが腕を組んで言う。
「空いている受付に行くと、そなたが侵略の担当だと言われた」
そんな担当、ありません。
心の中で呟きながら、私は小さく息をつく。
「まず、住民票がないため、こちらの手続きはできません」
「うむ」
「お調べしたところ、5階に“魔界課”がございますので、まずはそちらで魔界の住民票を取得してください」
課長に昼休憩中に教えてもらった通りに案内する。
「ほぉ、魔界課か……しかし、この官庁は4階までしかなかったはずだが」
「魔王さま、魔界課はこちらのゲートから転送されます」
課長が静かに指をさす。
その先にあったのは——
“使用禁止”と書かれた電話ボックス。
「安全面は大丈夫なのか」
「事故は今のところございません」
課長はそう言って、受話器を持ち上げた。
魔王さまが電話ボックスへ向かう。
その背中に、私は声をかける。
「それと——こちらの市でのお住まいはお決まりですか?」
魔王さまは振り返り、窓の外を指さした。
「あの辺りに城を建てようと思う」
住宅街を見下ろしながら、堂々と宣言する。
私は書類に目を落としたまま、淡々と聞く。
「土地の所有権はお持ちですか」
「……ない」




