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八尾さん、お昼休憩です。
昼休み。
私は休憩室でお弁当を広げていた。
「……疲れた」
思わずこぼれる。
向かいに座る課長は、いつも通り落ち着いた様子でお茶を飲んでいる。
「珍しい来客でしたね」
「珍しいどころじゃないです」
私は箸を止める。
「世界征服の申請って何なんですか」
課長は少しだけ考えてから答えた。
「前例は……ありませんね」
そりゃそうだ。
「しかも住民票がないって」
「想定内です」
さらっと言う。
いや、想定内なんや。
そのとき——
ガチャ、とドアが開く。
「おつかれさまー」
入ってきたのは、掃除のおばちゃん——佐藤さん。
「魔王さま、まだおるで」
私は思わず顔を上げる。
「え?」
「外でパン食べてる」
「侵略の途中で?」
「腹は減るやろ」
佐藤さんは当たり前のように言う。
課長は静かにお茶を飲んだ。
「午後も忙しくなりそうですね」
私はため息をついた。




