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第28話 結局最後の追い込みよ! こうなったらコーヒー片手に徹夜あるのみ! 天才少女コレットに全てを託すーー

※第一部『魔法大会編』はこちらからお願いします!

 https://ncode.syosetu.com/n0962lq/1/


 それでは聞き込み調査。

 なんだか探偵小説みたいになってきたわね?


「そういうのは、ヨナスの仕事だ」

 一人目、バルタザールさん。早速向かうわ。この時間だとヨナスさん、船室にいるらしいけれど…。鍵が掛かっているわね。船長室以外で鍵があるのは珍しいわ。余程大事な研究でもしているのかしら? ノックしてみたわ。

「誰!?」

「あ…すみません、フランソワです!」

「ああ…少し待て!」

 な、なんだか変な驚き方をしていたわね…? 集中していたのかしら? そこから1、2分程待って、ヨナスが扉を開けてくれたわ。

「ああ、済まない…。手が離せなくてね。どうしたんだい?」

「お忙しい所すみません、ヨナスさん。蛍石なんですけれど、今のうちにある程度加工したくて。ノミとか、お持ちかなぁと」

「ああ、蛍石か…アレはへき開する性質があるから、ノミとハンマーで叩けば八面体になるはずだぞ」

 言われてみれば、頂いた鉱石も八面体だったわね。

「ご存じなんですか?」

「海洋学と地質学は僕の専門だからね。ただ、素人がやるには…」

「一応、シオンが石材経験、あるみたいなんですけど」

 ふーむ、とヨナスさんが考え込んだわ。

「いや、万が一があると大変だろう。僕も立ち会うよ。三十分後に、船倉でどうだ?」

「構いませんわ、ヨナスさん」

 そういうと、ヨナスさんはすぐに扉を閉めてしまったわ。続けてかちゃり、と鍵の掛かる音。

「なんだか…違和感があるのよね?」

「素敵な人だよね! 細身の男性って好みだな~。匂いにも気を使ってそうだし」

 エラリーの弁。というかああいう男が好みなのね…。

 でも、エラリーの言う通りだわ。

 他の男連中と違って、汗臭さとか脂臭さがないのよ。なんだか、良い香りがしたし…。香水でも使っているのかしら? セシルお兄様は結構気にするタイプだから、いくつか香水を持ち歩いていた気がするけれど…。



「そこだ、シオン。真っすぐにノミを打て」

「こうか?」

 シオンがノミをさして、トンカチでコンコンと。ヨナスの言う通り、ぱかっ、と筋に沿ったみたいに綺麗に割れたわ。(これを「へき開」と言うのよ)

「ほら」

 取り立ての八面体をニコラスに手渡す。

「シオンはん、良い感じや! サイズも丁度ええで!」

「なら、これをいくつか、か」

「最低、2個あればいいわよね?」

「いや、万が一があるで。予備もいくつか」

 ということで、五個用意したわ。

「ついでに、粗削りまでできないかしら?」

「その道具は無いな。ノミとトンカチはあくまで鉱物の収集用だ」

 ヨナスさんの実験室には、色んな土地で採取した鉱石があるらしいわ。ヨナスさん曰く、『鉱石を見たら、その土地がどんな土地か分かる』らしいのだけれど。


 ともかく、やることが無くなったわ。この時間にグランド・ディベートのシミュレーションと想定問答を…あ、そうだ。

「ギルテニアから手紙を出せば、マルタが出発前に届くかしら?」



9月14日、夕方。

 ギルテニア到着

 夕方よ! もうザハリアス工房も閉まってるわ! 風の向きも良くなくて、とにかく遅れたわね。ギリギリ、シャルル行きの最終便に間に合ったから、マルタ宛ての手紙を託したわ。9月20日まではギルテニアのザハリアス工房にいる、ってね。

 一カ月ぶりの『スチーム&モルト』で乾杯。早くお酒が飲める年にならないかしら? 盛大にやけ酒したい気分よ。というか、一カ月以上も旅に出てたのね。

 ニコラスは実家に戻ったわ。コレットと打ち合わせ。



9月15日、早朝

 始発のインクラインでザハリアス工房へ。

「9月20日までに仕上げて欲しいのだけど…」

 流石のザハリアスさんも呆れてたわ。ただ、船上で作った種は問題ないみたい。

「顕微鏡の…レンズは二つ…粗削り、任せていい?」

 任されたわ! この水力研磨機を使うのね?

「それは…危ないから…人力…」

 人力、つまり足踏み式らしいわ。水力だと緊急時に止められないらしくて。お弟子さんで何人か、指が欠けている人がいるのはつまりそういう事みたい。怖いわね!?

 軍手を借りて、足踏みしながら削る。なんか不格好だけど、大丈夫よね?

「…わたしが、なんとかする」

 頼もしいわ!

 ちなみに一時間で体力を使い切ったわ。ニコラスと交代。シオン、エラリー、貴方たちもやるのよ。コレットは午前中で粗削りを終えたわ。流石ね。

「このまま、精密研磨に入る…」

 私たちは粗削り継続ね、任せて!

 …やっぱり先にお昼にしましょ。



9月15日 午後

 ややこしいから、コレットが粗削りしたやつをレンズA、私たちの担当をレンズBとするわ。Aが接眼レンズ、Bが対物レンズよ。

 レンズAは精密研磨が始まったわ。金属のお皿に色々な粒子(砂粒みたいなやつ)を乗せて、手のひらでくるくると回転させながら、更に削っていくの。そういえば曲面計算とか、していないけれど…。

「あいつはな、手のひらの感覚だけでベストな曲面を出しやがる」

 とは、ザハリアス親方の言葉。天才だわ、改めて。

 私たちは粗削り継続よ。他のお弟子さんは手一杯みたいだから、何とかするしかないわ。

 夕方、確認してもらったのだけど…。

「削りが甘ぇ。明日もだ」

 はい、頑張ります。

 今日はザハリアス親方の工房に泊めてもらえることになったわ。となると、アレよね。

「英気を養うの、英気を!」

 ギルテニア名物、大浴場よ! エラリーは着いてこなかったわ。



9月16日

 お風呂でさっぱりしたのは良いけれど、レンズ工房って飛沫が飛びまくるし、そもそも夏場だし、汗と粒子で体中べっとべとになるのよね。戻りたいとは思わないけれど、フェンリル・ベルクの寒さが懐かしいわ。

 レンズAは精密検査の目途がたったみたい。粗削りの方は…。

「ま、合格やな」

 き、及第点ギリギリ、ってことよね…。

 今日もお風呂に行くわ!



9月17日

 レンズAはポリッシング。最終磨き工程に入ったわ。松脂を入れたお皿に、酸化鉄の細かな粒子で磨いていくの。これで表面の滑らかさと光沢を出すのね。コレット、ずっと無言で作業を続けているわ。レンズBは精密研磨を開始。ニコラスと私の交代で。エラリーはシャトーブリアン商会のギルテニア支部に向かったわ。念のため、エヴェイユ港から王都までの船便を手配してくれるみたい。

 スケジュールは…ギリギリね。19日に完成するかしら?

 その日は日が暮れてからも残って作業。やっぱり、コレットのと比べると粗が目立つわね…。どうにかレンズAのポリッシングには目途が着いたみたい。感謝しかないわ。



9月18日

 レンズAはザハリアス親方の検査に入ったわ。最終工程よ。レンズBはコレットの精密研磨へ。少し手持ち無沙汰ね。そういえばコーヒー。そろそろ投入かしら。茶道具は…無いわね。街に下りて購入。

 午後、驚いたことがあったのよ。

「姫さま、お久しぶりでやす!」

 マルタよ! 思ったよりも早い到着だったわ。14日の時点で自宅を出発していたのだけれど、配達員が顔見知りだったみたい。一昨日、街道ですれ違った時に手紙を受け取ったらしいの。それで、エヴェイユ港行きの船をキャンセルして、ギルテニアに来てくれたの。これでセドリック特別研究室、全員集合ね!

 マルタにはこれまでの経緯を説明したわ。

「へぇ、姫さま、大冒険でやんしたなぁ」

 大冒険…確かに、人生初の大冒険だったわ。でも、まだ終わってはいないから。



9月19日

 レンズAが完成したわ。

「素晴らしいでやす。屈折率も光の分散もありやせんね」

 マルタが感心してたわ。レンズBの精密研磨、少し時間がかかっているみたい。やっぱり、素人作りだと限界があったわ。

 午後から、ポリッシングに入ったけれど…。

「フランソワ、ええか?」

 ザハリアス親方に呼ばれたわ。

「今からポリッシングやと、完成は早くても明後日になる」

 明後日は9月21日…不味いわ、前日だもの。

「どうにか…ならないかしら? 私たちに手伝えることは?」

「だがなぁ…」

「…親方」

 コレットが静かに言ったわ。

「…私は、大丈夫」

「しかな、コレット」

「今日は、終わらせるまで…帰らない」

 ぼりぼり、とザハリアス親方が頭を掻いたわ。

「ほな、好きにせい…フランソワもな」

「そうさせて頂くわ」



9月19日、深夜

 誰もいない工場(こうば)に、私とコレット、二人だけ。

 他の皆は休ませたわ。私も、やることは無いのだけれど…コレットを一人に置いておきたく無かっただけ。

「コレット、少し休憩しましょ」

 街で買い求めたチョコレートとクッキー。それから、たっぷりのコーヒー。いつもよりコーヒー豆を多く使ったわ。一杯二銀リブラくらいするかもね。なんて。

「…おいしい」

「よかった。目が冴える飲み物よ」

「…うん」

 糖分とコーヒー。私も元気が出てきた気がするわ。

 コレット、ポリッシングに戻る。

 私はその姿を、じっと眺めていたのだけれど…。



9月20日 早朝

 ゆさゆさ、と揺すられて目が覚めたわ。

「コレット…ごめん、私…」

「できた」

 椅子から立ち上がる。状態を確認。

「凄い…凄いわ、コレット。ずっと起きてたの?」

 こくり、とコレットが頷く。

「コーヒーの…おかげ…」

 あふ、と欠伸。

「眼が冴えた?」

 こくり、と頷く。

「これ」

 コーヒー豆の袋を手渡したわ。

「お礼よ。全部あげるわ。本当にありがとう、コレット」

 コレットがふわり、と綿毛のように笑ったわ。

「ありがと…フランソワお姉ちゃん」

先にお伝えしておきます。

「ありがと…フランソワお姉ちゃん」

これを言わせたかっただけです!!!! 徹夜シーンホントはいらんかった! 無理やり超タイトにするために、めちゃくちゃ計算して、最後に海流の逆走で帳尻合わせました!

そしたら次の話でめっちゃいい感じになりました。ぜひお楽しみを!


※第二部もいよいよ終盤です! ぜひ応援お願いします!

※第一部『魔法大会編』はこちらから

 https://ncode.syosetu.com/n0962lq/1/

※第二部『グランド・ディベート編』(このお話)の冒頭はこちら

 https://ncode.syosetu.com/n4250ls/1/

※この作品は『カクヨム』および『アルファポリス』にも連載しています。

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