第24話 どうやらニコラスに秘策があるようで。ちなみにシオン君はいつも空気を読みません。
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まずは現地調査、略して現調よ。
「エラリーの見立て通り、鏡面式の灯台ね」
ちょーっと埃を被っているけれど、お酢か木灰(木を燃やした後の灰を水に溶かしたやつよ!)でピカピカになりそうだわ。あ、ちなみにこれ、前にリンダに聞いたのよね。実験器具が曇っちゃって、どうしたらいいか相談したのよ。幸いに破損もないし、鏡とガラスはOKね。ガラスも木灰掃除でいいとして…。
「内側の煤よね」
ハンスの言う通り、内側には煤が積もっているわ。こっちは内拭きだから、私でもできるけれど、ただお掃除して終わり、じゃ面白くないわよね。
「廃灯台になった、ってことを考えると、お掃除だけじゃ納得しないわよね」
「せやな、灯台守は必要にしても、負担を下げる方法考えんと」
「とはいえ…光源をどう用意すればいいのかしら?」
アシュレイでも呼びましょうか。24時間得意な炎魔法を使い続けて、って!
…そういえば最近アシュレイが出てこないわね。忘れたわけじゃないのよ。使いどころがないだけで。
「フランソワはん、ちょい試したいことがあるんやけど」
「試したいこと?」
「ガス灯や!」
「ガス灯?」
エラリーが首を傾げたわ。私も初耳よ。
「ふふん、流石のフランソワはんも知らへんか。これはな、わいが極秘に仕入れた情報やで! なんとな…」
「そういや、アルフォンスが言ってたな。『これがあれば炎魔導士も失業じゃない?』って」
「あーっ! シオンはん、それ言ったらアカン!」
「で、アルフォンスがどうしたの?」
早く話を進めましょうよ。
「いやな、アルフォンスはんも大商会の息子やんか。なんか噂によると、アリアの田舎町で鯨油を使ったガス灯の試験に成功したらしいんや。仕組みはな…」
アリアって、もう勘づいているかもだけど、漁業が盛んなのよ。もちろんクジラも取るし食べるし、鯨油はロウソクの原料になったりするのだけれど。
「そのロウソクな、アレは固形の蠟が燃えてる訳やないんや」
「どういうこと?」
エラリーの疑問タイムが始まったわ。では、解説しましょう。
「ロウソクなら何本かあるわ」
万が一の夜間行軍用に、セシルお兄様から頂いたの。火をつけるわね。
注目して欲しいのは「芯」なのだけれど…。
「蝋より、上の部分が燃えてるやろ?」
「確かに」
「これはな、火をつける → 蝋が液体になる → 芯で気体になる →この気体が燃えとる ということなんや!」
ちなみに。
「芯自体が燃えないのは、先に気化した蝋が先に燃えてるからよ」
もし固形の蝋や、芯そのものが燃えてるなら、火をつけた瞬間に全部炎上するからね。
「理屈はわかったけれど、ガス灯? と、どう関係があるの?」
「そこが凄いのが、ガス灯を発明したルードック、ちゅうおっさんや。要するに、『気化した燃料なら煤が出ない』ことに気づいたんやな。ちなみにホントに最新情報やで。1年くらい前の話らしいわ」
私が知らないくらいだし、そのくらい鮮度の高い情報よね。アルフォンスの情報網は凄まじいわ。エラリーもしかり、商人のネットワークはバカにできないわね。
で、本題だけど。
「ガス灯、ってどう再現するの?」
「理屈は簡単や。理屈は。鯨油を温めて、油を気化させて、配管を通して、その配管の先っちょに火をつける。以上や」
なるほど。
「これなら1週間でできるかも?」
「ちょーっとまった、二人とも!」
エラリー、どうして止めるのよ。
「配管、って軽く言うけど、板金は誰もできないよ!? あのね、板金ってただ曲げればいい訳じゃないから! あと、鯨油はどこで温めるの? まさか灯台室じゃないよね?」
「たしかに!」
灯台室でやるなら、普通に鯨油を燃やしたほうがいいわ。
さらに。
「あの…さ、フィヨルドって…あんまりクジラ、獲らなくて…」
燃料問題も再燃したわ!
「…どうしよう?」
「ホントだよ!」
「お嬢、鯨油なら何とかなるかもしれねぇ」
「そうなの?」
「これは国家機密らしいから、あんまり言うなとは言われてるんだが…。今、セシルの旦那は潮の変わり目を調査してるんだ。アリアの漁師たちが『魚もクジラも取り放題』とかいう、秘密の場所を特定するとかで…」
「アリアの漁師って、こんなところまで遠征してるの!?」
いえね、魚に対する執念みたいなものは、ギルテニアでの『スチーム&モルト』での一件を思い出してくれればと思うのだけれど、まさか地の果て、北大洋まで遠征しているとは思ってもいなかったわ。
「ああ、だから、1週間後の合流で、クジラの一つや二つ、目途が着くかもしれねぇ」
えっと、合流は…8月30日の予定よね。
「…セシルお兄様、クジラ獲ってくれるかしら?」
「旦那が本気を出せば、1日で獲れるんじゃねぇか?」
できそうなのが怖いわね。
「じゃ、鯨油はそれで解決するとして…解体はどうするのかしら…?」
「お嬢、海賊はクジラの一つ二つ捌けねぇとやっていけねぇぜ。俺に任せな」
「頼もしいわ、バルトロメ。それじゃ、燃料は解決したという事にしましょう。あとは配管よね」
「ハンスはん、フェンリル・ベルクに板金工はおるんかな?」
「フェンリル・ベルクは…フィヨルド最強の重装歩兵軍を持っているから…板金工は沢山…いるよ…」
「なら、なんとかなるかもしれないわ!」
「フランソワさん?」
なによ、エラリー。
「お金は?」
「…奨学金に乗せといて!」
「違うって、手持ちが無いの~!」
「こ、困ったわね?」
いやマジでどうやって風呂敷畳むんだこれ。
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※第二部『グランド・ディベート編』(このお話)の冒頭はこちら
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※この作品は『カクヨム』および『アルファポリス』にも連載しています。




