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黄色いスカーフを巻いた侍女とすれ違ったようです(前半、フェラー公爵視点、後半、シエルフォード視点)

「水の聖女はまだか!」「やはりアクアクォーレの人間なんて、みんな同じなんだな」「デューべの水が枯れたって、何とも思わないんだろうよ」


 民衆はみな、枯れた水路をじっと見て、口々にため息をついた。

 万が一のため、騎士団を連れて現場に急行していた

フェラー公爵は、発せられる民衆の不満に、聞かぬフリをしてやることにした。


(彼らは何も自分たちの食い扶持のために怒っているのではない。作物が実らなければ国全体が飢えに苦しむ)


 もともと産業国であったデューべが、作物を自給し始めたこと自体、アクアクォーレから水を多く仕入れられるようになった近代に入ってからだ。

 それでも、砂漠の国特有の、田畑の旱魃は長い間民を苦しめている。


(アクアクォーレの、水の聖女、か)


 王宮入りする彼女を見かけただけではあるが、派手派手しさはなく、静かに廊下を渡っていた。アクアクォーレにもあんな風に気品に満ちた人もいるのだなと、ぼんやり思ったと思う。


(聞けば市井の出だとか…信じられないな)


 集まった民衆は、水路の端に腰をかけて汗を拭っている。


(それにしても、おかしい。なぜ殿下までもいらっしゃらない?)





✳︎ ✳︎ ✳︎





 空のバケツを目の前に途方に暮れた。おまけに侍女服がぶかぶかである。


(バケツに水を汲む必要がないのは幸いなのかしら…)


 着替えるフリをして、馬車で待つシエル様の元へと抜け出そうとしたが見つかってしまい、こっぴどく叱られてしまった。


(むしろ、終わらせてしまった方が早いかもしれない。でも、どうやって…)


「早く終わらせなさいよ。私は花瓶の水を換えるから」


 侍女の一人から声をかけられる。「ええ」とだけ返事をした。


「あとその髪の毛、どうにかならない?束ねてちょうだいよ」

「しかし…」

「なによ、何も持っていないの!?仕方がないわね、これ貸したげる」


 彼女は、玻璃の花瓶に水を注いでいたが、ポケットから黄色いスカーフを取り出すと、私に放った。


「王宮を美しく、陛下や殿下、それからここに来たばかりの聖女様にも過ごしやすくしていただくのが私たちの仕事よ。誇りを持って頂戴」

「は、はい!」


 言われた通り、髪の毛が落ちてこないようスカーフを頭に巻いた。

 侍女は「あら似合うじゃない」と言うと、美しい玻璃の花瓶に水を注ぎ始めた。

 たくさんの水滴が付いている。その水滴が水を受けて花瓶の底に落ちていくのをなんとなく見つめていた時だった。


(これだ!)


 私は思い立って屋敷中の窓に意識を集中した。水の量を調整しながら、玻璃に極薄く、水が這うように滑り落ちていくのをイメージした。

 ちらりとすぐ近くの窓を見ると、イメージ通り水が窓を滑り落ちて下に落ちたので、私は布でその水を拭き取るだけだった。


 すっかり拭き去ると、次の窓へ走る。

 無限にも思える作業も、これならば大幅な短縮となるだろう。


(早く!)





✳︎ ✳︎ ✳︎





 ルナリーが戻ってこない。


「…殿下、屋敷中くまなく探しておりますが、姿が見当たらないそうです」

「僕も一緒に探そう。すぐに出られるよく、馬車はここで待たせておけ」

「かしこまりました」


 ルナリーの部屋の前に行くと、ルードアンが涙目でおろおろしていた。


「殿下!」

「ルナレスカは戻っていないのか!?」

「誰も…」

「何ということだ。部屋の中には誰も?」

「先ほど、見慣れない侍女が窓拭きのために入室して出て行ったくらいで…」

「そうか……」


(一体、どこに行ってしまったんだ)


 僕が入籍する時につまらない感情に振り回されたから呆れてしまったのだろうか。

 それとも、嫁ぐのを後悔したのだろうか。

 もっと優しい言葉をかけてやればよかった。

 まさか、誰かに連れ去られた?アクアクォーレに連れ戻されたのでは!?


 嫌な予感ばかりがどんどん浮かんで、不安が膨れ上がっていく。

 すれ違う使用人達にルナレスカの所在を聞いたが、彼らの多くはまだ彼女がどんな人なのか知らない。


(聞いている方が時間がかかる。彼ら、彼女らはルナリーを知らぬものと思った方がいい)


 黄色いスカーフを巻いた侍女とすれ違ったが、今度はもう聞くのはやめて、まずは屋敷中をくまなく探すことにした。

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― 新着の感想 ―
おーい(^◇^)どーなってるるんだ?w この王宮の従者の教育ゎ(^◇^)w
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