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魔力塔の姫君  作者: 夢子
令嬢生活

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23/25

初めての街へ

 フリージアもすっかりティエルノ家での生活に馴染じみ、楽しい毎日を過ごしていた。


 そんなある日、授業終わりにエルドレッドが楽しい提案を出してくれた。


「フィシィ、だいぶ元気になって来たし、一度街へ行って見るかい?」


「えっ? 街? 街ってここの街? ティエルノ家の領地ってことだよね?」


「そう、王都よりこっちの方が街の中も穏やかだからね。それにお披露目会や茶会の前に自分の領地を知っておくのは大事なことだし、勉強して計算も出来るようになったし、自分で買い物をしてみることも大事だしね」


 エルドレッドの提案にフリージアは目を輝かせる。

 フリージアとして意識を持って、魔法を使わずにやっと動けるようになった小さな体。


 そんな中、遅れている勉強を頑張り、どうにか学園入学に間に合うめども立ってきたところでの嬉しいお誘い。

 フリージアが興奮するのは当然だった。


「エルドレッド、私、街に行きたい! 自分で買い物もしてみたいの!」


「フフ、そうだよね、フィシィは女の子だもの、色んなものを見てみて自分で買い物もしてみたいよね?」


「うん!」


 嬉しくってエルドレッドに勢いよく抱き着けば、くすくすと笑われてしまう。

 子供っぽい姿が可笑しいのか、それとも顔が緩みすぎていて面白いのか分からないけれど、嬉しさを隠すことが出来ない。

 異世界の街、どんな感じなのか興味があった。


「お嬢様、落ち着いてくださいませ」

「そうですわ、行く前からそんなに興奮をされてしまっては、熱が出てしまいますよ」


 エイダとヘレナが興奮するフリージアを注意する。

 エルドレッドに対しても「お嬢様を落ち着かせてください」と声を掛けるが、興奮は冷めやらない。

 二人にうんと答えつつも、いついつ? とエルドレッドに問いかけてしまう。


「フフ、フィシィ、街は逃げないから落ち着いて、そうだね……明日フィシィの体調に問題なければ、明日街へ行くから今日は早く休もうね」


「えっ? 明日? 明日街へ行けるの? うん、分かった、早く寝る! あ、何を持って行けばいいかな? 先に準備しないと!」


「アハハ、そうだね。じゃあ準備はエイダとヘレナに手伝ってもらおうか? 明日着ていく洋服も決めたいだろうし、持ち物は女性同士の方が分かるだろうしね」


「うん! エイダ、ヘレナ、お洋服決めるの手伝って!」


 エイダとヘレナの手を引きクローゼットのある寝室へと向かう。

 お嬢様落ち着いてくださいとまた注意されてしまったが、エイダとヘレナのその顔は笑っていて、二人も喜んでいるようだ。


「何を着ていけばいいかな? 動きやすいワンピース?」


「そうですねぇ、お嬢様は目立ちますから、出来れば落ち着いた色合いのものが良いのですが……」

「お嬢様のお洋服は可愛いものが多いですからねぇ……」


 フリージアの洋服はどれも貴族令嬢らしく可愛らしいもので、魔法使いだからという以前に見た目だけで誘拐されそうだ。

 疎いフリージアでさえこれで街へ行って良いのかな? とちょっと不安になってしまう。


「このお洋服だと目立たない?」


「そうですね……馬車での移動のみで、街にある店の中に入るだけでしたら大丈夫でしょうが……街歩きをするとなると目立ってしまいますわね。もう少し落ち着いた色のものにいたしましょうか?」


「この紺色のドレスは?」


「色は落ち着いておりますが、その生地は冬向けですので、今の時期ですと少し暑いと思われますわ」


「そうか……じゃあどれにしようかなぁ」


 エイダとヘレナと相談してお出かけの準備をするのが楽しい。

 遠足前はきっとこんな気分なのだろう。


 前の時は体が弱く、遠足や運動会といった体を使う行事に参加した記憶はない。

 だから尚更ワクワクが止まらない。

 自分の足で街を歩ける。

 それが嬉しかった。


「……うーん、お嬢様の今あるお洋服では街歩きには不向きですねぇ……」

「急に決まったことですから、今からでは準備が間に合いませんし……」


「えっ……じゃあ街に行ったらダメってこと?」


 ガーンとショックを受けた顔をするフリージアを見てエイダとヘレナがくすくすと笑う。

 そこまで街へのお出かけを楽しみにしているのかと面白がっているようだ。


「お嬢様、ここはエルドレッド様におねだりしてみましょうか?」


「えっ? おねだり?」


「そうですわ、折角ですもの、街に出てお洋服を買っていただくのも楽しいと思いますわよ」


「えっ、エルドレッドに私のお洋服を買ってもらうの? でも……」


 それはありなのだろうか? とフリージアは悩む。


 ここまでエルドレッドには沢山お世話になって、あの塔からも連れ出してもらって、お勉強も見てもらって、その上フリージアの「離れたくない」という我儘を聞いて家族の一員にまでなってくれた。


「あのね、お洋服って高いんでしょう……?」


 ここまでの生活の中で、フリージアも色々と学んできた。

 フリージアが着ている洋服が伯爵令嬢に相応しい高価なものであることも知っているし、いつも食べている食事も平民ではなかなか食べられない豪華なものであることも知っている。


 だからそれはいずれ一人前の大人(魔法使い)になったら、働いてお返ししようとそう思っている。

 だけどこれ以上甘えて我儘を言っていいのかな? と凄く悩んでしまう。


「エルドレッドにこれ以上迷惑をかけたくないから……お出かけ止めた方が良いかなぁ……? あ、でも馬車でのお出かけなら今あるお洋服でも大丈夫なんだよね? じゃあ街歩きを止めれば大丈夫かな?」


「「……お嬢様……」」


 エルドレッドにこれ以上迷惑をかけるのならば、貴族令嬢としての買い物だけで十分、そう思ったのだが、何故かエイダとヘレナが泣きそうな顔になる。


 可笑しなことを言ってしまったのかと不安になっていると、エイダとヘレナが視線を合わせ「うん」と頷いた。


「お嬢様、エルドレッド様に正直に話しましょう!」


「正直に話す?」


「はい、街歩きに相応しい洋服が無いと正直にお話いたしましょう!」


「えっ……でも……」


「さあ、行きますよ!」


「えっ、エイダ、ヘレナ、ちょっと待って」


 おねだりになるような行動ははしたないと思ったけれど、エイダとヘレナはフリージアを抱っこし、エルドレッドが待つ応接室へと連れていく。


 そしてエルドレッドの目の前にフリージアを下ろすと、視線で「さあ、お嬢様!」と促してくる。


 フリージアはどうしていいのか悩みながらも、二人に言われたように正直に打ち明けることにした。


「……エ、エルドレッド……」


「ああ、フィシィ、明日の準備は終わったの? 着ていく服は決まった?」


「え、えっとね……あのね……」


「ん? どうしたの? 何かあった?」


 チラリとエイダとヘレナへ視線を送れば、またうんうんと頷かれる。

 エルドレッドならばフリージアが我儘を言っても、怒ったり嫌がったり呆れたりすることは無いと分かっているけれど、おねだりすることが何だか恥ずかしい。


 言い出せなくてもじもじしていれば、エルドレッドが椅子から立ち上がりフリージアの前に膝をつき視線を合わせる。優しい笑顔で「どうしたの?」とまた聞いてくれば、背中を押してもらえたような気がした。


「エルドレッド、あのね……」


「うん、どうしたの?」


「あのね、その、街を歩く服がなくて……」


 我儘にならないかなとちょっと不安だったけれど、フリージアは勇気を出して洋服が無いことを話す。するとエルドレッドが目をパチパチとさせ、ああと頷いた。


「ああ、そうか、そうだったよね、伯爵令嬢のドレスの中に平民に見える洋服がある訳ないか……じゃあ、街へ行ったら最初に洋服を見ようか? エイダとヘレナが一緒ならフィシィに合う洋服を選んでもらえるだろうし、ね」


「いいの? あの、でも、私……お金ないし……」


「ああ、なんだそんな事か、アハハ、街に行こうって僕が誘ったのにフィシィにお金を使わせるわけがないでしょう? それにフィシィにはティエルノ家の娘としてちゃんと予算があるんだよ」


「そうなの? 知らなかった……」


 確かにフリージアに与えられる予算が無ければ、ここまで多くのドレスを揃えることは出来ないだろう。それと魔法使いに生まれた時点で国からの援助金も出るらしく、フリージアにはその予算もあるらしい。


「魔力を持って生まれた子が魔法について何も学ばないで育つと危険だからね、この国では国からの援助金で家庭教師を雇ったり、制御用の魔道具を買ったり出来るようになっているんだ」


「そうなんだ……」


「フィシィはまだ魔法の練習を始めていなかったから説明不足だったね。それに予算のことも、あまりにも当たり前すぎて言うのを忘れてたよ。ごめんね、もっと早く話すべきだったよね」


「ううん、分かって安心した、エルドレッド、話してくれて有難う」


 魔法使いとしての予算があると聞けばホッとする。

 エルドレッドは勿論だけど、ティエルノ家の両親や、この国の王様であるフェリックスにずっとお世話になり続けるのは心苦しい。

 なので当然の権利でお金があると聞けば、心苦しい部分が一気に晴れた気がした。


「まあ、でも明日のフィシィの洋服は僕が買うけどね」


「えっ、エルドレッド、いいの? あの、有難う……エルドレッドに洋服を買ってもらえるなんて、凄く嬉しい」


「うん!」


 当然のように甘やかしてくれるエルドレッドにお礼を言う。

 ここは絶対に甘えた方が良いし、フリージア自身もエルドレッドに買ってもらえた洋服を着たかったし、街に初めて出た記念に欲しかった。


「明日、凄く楽しみ!」


 フリージアのいつもの笑顔に、エルドレッドもエイダとヘレナも笑顔を浮かべたのだった。


 

おはようございます、夢子です。

本日もお読みいただきありがとうございます。


昨日はだらだらしておりました。

なので久しぶりに昼寝もして、買い物もして、洗車もして、掃除もして、料理も、猫の世話も……

あれ? だらだらの定義とは?


フリージアがもじもじする姿を書きたかった。

エイダとヘレナは「うちのお嬢様尊」と思っていそうです。


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