涙の精霊石が光を失うとき~精霊姫の住処は緑と水の都~
「セレナ、君との婚約破棄させてもらおう」
私セレナ・アクアレーナは学園の一年の最後に行われる舞踏会で婚約者であるカイル・シュトローネ第一王子に婚約破棄を告げられた。カイルの隣には緋色に輝く髪を揺らすフレア・ヴォルケーノ嬢が腕に抱き着きこちらを見ている。その表情は勝ち誇るように満面の笑み。
「どうしてでしょうか?私に何か問題でも?」
「問題大ありだ。そなたは未来の王である僕に『好き嫌いをしてはいけませんよ』『先ほどの会話ですがこちらの言い回しの方がいいですよ』など小言ばかり」
「それは少しでもいい王になってもらおうと進言しているだけですが?」
「うるさい。フレアは僕に『さすがカイル様』『カイル様に間違いはありません』とほめてくれるんだ。それに妃教育もうまくいってないそうだな?」
え?そんなことはないはずです。シーラ女史にはほめていただいています。私が困惑していると私に妃教育を行ってくれいているシーラ女史が現れ、貴賓席に座っていたワイズ陛下・ミモザ王妃に向け話し始めます。
「実はセレナ様に脅されていて報告できなかったのですが、彼女は物覚えが悪く国の情勢や地形・作物の種類など覚えてくれません。それに引き換えフレア様は一か月教えるだけですでに妃として必要な知識を身に着けてくれました」
「そうか。セレナ、まさかおぬしがそんな娘だとは思わなかった」
「陛下、何かの間違いです」
「おぬしの話は聞きたくない。最後の慈悲だ。この国から出ていきなさい」
よくわからないまま、その日私は国外追放を言い渡される。家に帰ると城にあった私物は箱に詰められ送り返されていた。公爵として財務大臣だった父も突然身に覚えもない冤罪を押し付けられその職をはく奪され、私たち家族は一週間後一部の従者を連れ隣国へ向かいます。最後に水と緑のあふれる国シュトローネの象徴である燦燦と青色に光る涙の精霊石を見つめます。
「あれ?」
「どうしたのセレナ?」
「いえ、何にもないわ。行きましょう」
涙の精霊石の青色が薄くなった気がしたけど光の加減でしょう?
みんな、私はあの子についていくから、他の〇〇に声をかけといてね
わかりました
「皆様、ここで本日は休みましょう」
長年仕えてくれているロイス爺の指示で湖の近くに馬車を止める。さすがロイス爺、ここなら動物や魔物もすぐに発見できるわ。本当なら父さん・母さん・私だけで最小限の荷物をもって隣国へ行くつもりだったけど、執事長のロイス爺と奥さんであるメイド長のシュリ婆はついてくると譲らなかった。二人以外の使用人は紹介状と退職金を渡し解雇したわ。
日が暮れる前にみんなでテントや料理を作る。私たちの祖先は商人として世界を旅して商売をしており、伝統として一人でテントや料理はある程度できるように教育されているの。
近くの湖に水を汲んでいると
がさっ
近くの草むらから音が聞こえる。慌ててナイフを構えると
ぴぴっ
青い羽根がきれいな鳥がぴょこんと飛び出してくる。青い鳥は時折首をかしげながらこっちに近づいてくる。なんかわからないけど危険はない感じがするわ。ナイフをしまうと青い鳥は私の前で止まるとその青いきれいな瞳で見つめてくる。手を差し伸べると手→腕→肩と昇ってくる。
「一緒に来る?」
ぴぴ
新しい友達ができました。
青い鳥にアイヴィーと名付け隣国へ向けて旅を進める。道中魔物や盗賊に襲われことなく隣国リオヴェネツィアへ入国できた。これから首都リオヴェネツィアに向かう。
「きゃあ」
突然悲鳴が響く。一体何事?
一方セレナたちが去っていった緑あふれる国シュトローネの王城カイルの部屋でフレアとイチャイチャしているカイル。
「やっと隠れずに会えるね?フレア」
「はいカイル様」
正式に婚約した二人は王太子の仕事や妃教育などを他の人に任せいちゃいちゃしている。しかし王含め首都シュトローネで暮らす国民は二人を支持している。フレアの目が怪しく光り、カイルに寄り添う。
「カイル様、私早く王妃になりたいです」
「あと一年待ってくれ。学校を卒業したと同時に即位できるように父上に相談しよう」
ふふふ、すべてがうまくいってるわ。セレナやその家族・使用人にこの力が聞かなかった時は驚いたけど。
ある日屋敷の地下に秘密の通路を見つけたの。その通路を進むと行き止まりにたどり着いて、その部屋の中央には黒い水晶があったわ。黒い水晶に触れると頭の中に声が響いたの
『家族の寿命を捧げなさい。さすれば力を授けましょう』
眠っている両親の体に持ち出した水晶をあてる。ふふ、私の糧になるから二人も本望でしょ?それに私が財産を引き継ぐんだから。二人の寿命を半分吸い取り⦅誘惑⦆の力をもらったわ。どうやら私たちの一族には⦅誘惑⦆の力を持っていたけど
先祖が封印したみたい。
⦅誘惑⦆は私に好意を持った相手にお願い事できるの。好意の深さによって効き目は変わるけど⦅誘惑⦆し続けることで効き目も深くなっていくの。ふふ、でも見た目や人に好意を持たせるしぐさならセレナよりうまいわ。この力を使ってまずは両親や家の人全員を、次にカイル殿下を誘惑したわ。特にカイル殿下には私のファーストキスをささげて、私の命令なら何でも聞いてくれるの。今は国中の重鎮や有力貴族全員が私の言いなり
セレナが去って2年、カイルは学校を卒業後周りの後押しもあり国王へ即位。それに伴いフレアも婚約者→王妃に。最初は順調だったカイル政権だがある二つの大きな問題があった。
一つ目は新国王と新王妃の政治能力。国内ではセレナが宝石などの高級品やよなよな夜会を開き、湯水のごとく国庫は減っていく。役人から苦言が入りそうだがセレナが⦅誘惑⦆の力で抑え込み、お金に関しては税を増やし国民に負担を掛け乗り切っている。しかし問題は外交問題。各国の大使はセレナの色気やしぐさに惑わされるものほほぼおらず⦅誘惑⦆されない。たまに⦅誘惑⦆される大使の下っ端もいるがすべての権限を持つ大使が切り捨てていく。王教育・王妃教育が足りず即位した二人が最終決定権を持つので、百戦錬磨の大使たちの甘い罠にはまり搾り取られている。
2つ目の問題は国内の自然の衰退。セレナが去ってから国の象徴だった青く輝く涙の精霊石は少しずつ光を失っていき、その光とともに国の末端から緑や水が減っていく。カイル・セレナは最初からその情報を聞いていたが、自身に被害がなかったため無視していた。しかし涙の精霊石の光が完全に失ったと同時に緑や水の衰退は加速度的に増していき、2年前では水と緑のあふれる国シュトローネと呼ばれ各国に食料や水を輸出していたが現在では逆に食料や水を輸入する立場に。特に現在は緑あふれる隣国リオヴェネツィアからは大量に輸入している。ただし2年前では逆の立場でリオヴェネツィアに対して不利益な条件で輸出していたので、今はその仕返しで不利な条件で輸入している。
セレナが去って3年、度重なる増税による強制的な過酷な労働・食糧難で国に病が蔓延。さらに国庫も尽き果て、カイル・フレアは隣国リオヴェネツィアへ攻め込むことを決定。フレアの⦅誘惑⦆の力で病に伏した国民を駆り出され出兵。
三日後、
「何、これ?」
「誰かいないか?何が起こってるか説明しろ」
玉座で報告を待っていたカイル・フレアは急激に温度が下がったことにより体を震わせる。城全体が凍り付き玉座の間に閉じこまれる二人。さらに窓からは町全体が水に飲み込まれている。あまりの惨状に二人は身を寄り添い震えるばかり。その状況が二日続き、突然周囲の水は引き始め、凍り付いた玉座の間への扉が開かれ兵士が流れ込んでくる。
二人が鎖につながれ連れてこられたのはリオヴェネツィア城の玉座。もちろん玉座にはこの国の王と王妃が座っている。
「さてカイル王・フレア王妃よ。戦後の処理をしようか。と言いたいところだがとある御方がフレア王妃、そなたに用事があるらしくてな。戦後処理はそのあとにしよう」
「私にですか?」
フレアが問い返すと玉座への扉が開き、茶色に青いラインが入ったパンツルックの服の上に水色のコートを着て肩にアイヴィーを乗せているセレナがやってきた。
「セレナ」
「どうしてあなたがここに」
「だまれ」
ドン
「「ぐぇ」」
二人は憲兵に地面に押し付けられ妙な声を上げる。
「精霊姫に気軽に声をかけるとは何様のつもりだ?」
「は?精霊姫?」
セレナはその様子を気にせずリオヴェネツィア王・王妃の元に向かう。リオヴェネツィア王・王妃は立ち上がり軽く頭を下げる。
「セレナ様、本日は来ていただきありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ急に申し訳ありません。時間はあまりとらせませんので」
「気にせずお話しください。こちらはいつまで待ちますので」
府たちと会話した後セレナはフレアを見ると
「ああああああ」
突然悲鳴を上げる。すると胸元の紫の水晶が空中に浮かびひび割れていく。そのまま水晶がひび割れるまでフレアの悲鳴は続き
パリン
水晶が割れると黒い靄があふれ出ていたるところが凍っている蝙蝠の魔人が現れる。しかしその魔人は苦しそうに呼吸をしながらひとみだけをこっちに向ける。
「フレア、あなたはこの闇の精霊と『家族の寿命をささげる契約で人々を操る⦅誘惑⦆』の力を得た」
「ち、ちがうわ」
「別にあなたの答えは効いてないわ。ただの確認だから。今その償いをしてもらうわ、アイヴィー」
ピィ
セレナの掛け声でアイヴィーが一鳴きすると蝙蝠の魔人=闇の精霊の周りに水色の要請が現れ手を向ける。すると闇の精霊の体が完全に凍り付き砕け散る。
「ああああああ」
するとフレアが再び叫びだし体中から黒いオーラがあふれどこかへ消えていく。
「うそ?いやあああ」
フレアは体中がしわしわとなり急激に年を取る。
「い、いったい何が?」
「カイル王、あなたはフレアの⦅誘惑⦆によって操られていたの。でもあなたにそういう思いやフレアに好意を抱いていなければ起きなかったことよ。そして知らなかったのだけれど私は女神の加護を受けた精霊姫だったみたい。私が追放されたことで精霊たちがこっちの国に移り住んだことで精霊たちが移り住んできたみたい。でもね私が普通に移り住んでいたらここまで精霊はいなくならなかったわ」
「だ、だったら戻ってきてくれ。今なら妃として再び」
「残念ながらもうあなたに興味がないの。この国の方が暮らしやすいし。それにあなたたちは王の器じゃないわ。これからその罪を清算しないと」
セレナはそう言い残すと国王にお礼を言って部屋から出ていく。
「さておぬしたちの国だが我が国の属国として管理させてもらう。カイル王・フレア王妃およびその親族はこれから4日後から3日間元シュトローネ国広場にて貼り付け刑そののち皆の前でッ処刑させていただく」
こうしてシュトローネ国の歴史は幕を閉じた・・・
ここは水と緑があふれる国リオヴェネツィア。この町では時折精霊が現れ国へ幸福を届ける。なぜ急に政令が現れたか国民は知らない。首都に精霊姫が受付をする商店があることを。
セレナ・・・精霊姫
カイル・・・シュトローネ国元第一王子現国王
フレア・・・シュトローネ国伯爵令嬢現王妃




