『ゴキスラのクソなところとクソな対策』
◆◇◆◇◆
「はぁ、はぁ」
「酷い状況だな…」
急いで退散した後、一息つける状況になりイバさんの状態を皆が心配を向け始めた
「イバ以外に怪我したやつはいねぇな?」
「イバさんの状態は?」
「…【スキャン】
大丈夫、直ちに影響はない」
「3階にはアレがいる、直ぐに動くぞ」
「『ゴキスラ』に合わせたくないな」
ゴルドさん含む面々が素早く確認を終えると息が整う前に移動を始めようとして手をこまねいていた。僕を不思議に思った
「ゴキスラ…」
「あ?何だよ」
「あ、すみません、何故今ゴキスラに
会いたくないんですか?」
僕は不思議に思い、近くにいたチンモクさんに質問をした。すると凄い形相で睨まれた
「お前、そんなんで良くついて来たな?」
「すみません」
「本当にどうかしてる」
チンモクさんは呆れつつも話してくれた
「ゴキスラは
状態異常を悪化させるんだよ」
「悪化?」
「…あいつらが周りにいると碌なことがない
状態異常が深刻化し易くなるし
武器の損傷とかも早くなるらしい
迷宮病にかかった奴もいるんだとか」
「迷宮病にも」
ゴキスラとの初対面時に受けたあの気持ち悪さはそれが原因だろうか、だとしたら非常に不味い
「…」
今のイバさんの状態はどう言った物なのだろうか、やはり『◾️◾️』病だろうか?なら見捨てる可能性がある。そこまで重症なものではない?
「チンモクさん、イバさんの
今の状態はどう言ったものなんですか?」
「は?今…」
チンモクさんが苛々とした様子で『相手にしてられない』と言う雰囲気を醸し出していた
「僕は真剣です」
無知であることは悪いことだがそれをもっと放置することはもっと悪い。『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』
「たく、まだ罹患はしてない
魔力がそれを弾いてる状態だ」
「魔力が?」
「あぁだがそれも時間の問題だ」
魔力か、状態異常を防いでくれるモノであり、物につけている魔法の原動力?的存在
シャメルさんの時もそうだった。『眠気』の素振りすらなく平気だった。魔力って便利だ
魔法って言えば放つことのできる『魔法』もあるんだろうか?あったら僕も欲しいな
「…」
ケイチョウさんの表情が重苦しい。スラバットの『状態異常』は罹患すると酷いらしい。魔力もその分だけ必要になるらしいし、時間経過でも重症化するのだとしたら一刻でも早く地上に戻りたいな
「(シャメルさんが言ってた)」
視界に映るイバさんの苦しそうな顔。魔力が減る感覚は恐らく『グラデーション』───段階的に症状が出るのではなく、徐々に悪くなっていくジリジリと悪化していくモノを指す
魔力と『症状』の押し相撲状態。とても苦しそうな顔だ。まだ幼い命だろうに
「…」
馬鹿馬鹿しい考えが頭をよぎった。シャメルさんとの迷宮探索を思い出していた。僕の驕り昂った妄想でなければ『或いは』
僕はひとつだけ考えついた作戦を相談もなしに実行することにした。きっと止められる
◆◇◆◇◆
僕は右手の『中指』からリングを外した───『状態異常』に対しての対策がなくなった
代わりにイバさんの左手の『中指』にリングを嵌めた───『魔力』の『回復』『極少量』起こる
「ニンジン?」
「タイラー?」
2人を追い越し、前に立つ
「お前!何やってんだよ」
「低◾️◾️、何を」
後ろの2人が僕の異変に気がついたらしく慌てているのが声色から分かった。僕、ゴルドさん、ケイチョウさん(イバさん)、チンモクさん、ギョウシさんの順番になった
「皆」
騒がしくなった皆の前に立ち、僕は『銃』を構えた。覚悟を決める『迷宮病』の重症化ってどんな風になるのか想像もしたくないが
「この弓で僕が先行します
後ろをついて来て下さい」
「…」
「タイラー」
「何馬鹿なこと言ってんだ!」
「低◾️◾️、それが如何に優れていようと
ゴキスラは素早く、狙いを定めるのは」
「…」
笑いが込み上げてくる。何で見ず知らずのガキのために命張ろうとしてんだ?後ろ2人の言う通りだろ、もっと安全な方法があるはずだ
地上組のグレーさん、レフトさん、シャメルさんが異変に気がついてやって来てくれるかもしれない。そうすれば
『それでもイバさんを助けたいし
知人の死を体験するのなんて
ごめんだ』
「にんじんの、心遣いは感謝するが」
「不味い!ゴキスラだ!」
前方から接近してくるゴキスラにゴルドさんが気がついた。近づかれれば僕の中とパーティの皆から選択肢が消える
「(ここからは)」
『迷宮病・罹患』───全身が膜に包まれた感覚に陥った。これで引き返す選択肢はなくなった
「(時間との、戦いだ)」
【???】───感覚が鋭敏になり、接近してくるゴキスラの位置が鮮明に感じ取れるようになる。あの時のアレは妄想の出来事じゃなくて安心した
『銃声』───放たれた1発の弾丸。その速さはゴキスラの速度を遥かに凌駕しており狙いの定まった瞬間にはゴキスラを轢き潰した。それと同時に鼓膜を割き兼ねない音が迷宮に響いたのを肌で感じた
あ、そう言えば言ってなかった
「すみません、音がでます」
「…」
耳鳴りが酷い『迷宮病』と『銃声』のダメージだ。無理もないか
「ついて来て下さい」
返事は待たない。僕が今ちゃんと喋れているのかすら定かではないからだ。今は僕が倒れるより早く地下2階に向けて歩き始めなければ、走りたいのは山々ながら倦怠感が凄まじいのですり足で進んでいく
◆◇◆◇◆
一度の罹患である程度のゴキスラの位置と銃の正確な命中性を手に入れられ、直線上の距離であればまず外さなかった。問題は
「ギョウシさん!」
後方の警戒だった。銃でそこまでカバーしようにもそんな高度な射撃術は僕にはなかった。位置を伝えるので精一杯だ
回復と罹患の反復横跳び、気がついたことがあるとすれば銃を撃つとすこしだ少しだけ気分が…
「っおぇ…ッ」
「…」
良くなるって言おうとしても説得力がない。しかし、撃ち出した後少しだけ身体が軽くなっているのは確かだ。銃は回復アイテムだった?
「…」
後方で火の手が上がったのが分かった。音がくぐもっていてよく聞こえないが熱で何となく分かる
それにしても数分の間に何体のゴキスラに遭った?出口は近いのか?不安が湧いて増えるばかりだ
◆◇◆◇◆
「邪魔じゃ」
呂律が回らなくなってきた。腕の痺れも出て来た。かなり軽くなった銃を振り回し、撃ち込むのがやっとだ。鼻の下が痒いし熱いし、気持ち悪いのは何なんだろう
「…」
「…!!」
「…ッ、…!!」
周囲が騒がしい
「ゴキスラが、いるのは、分かってます」
銃を構えて撃とう。そう思いながらも歩き続けていると腕に圧迫感を覚えた
「?」
異常に強い力で引っ張られている。やめろ、ゴキスラを倒せなくなるじゃないか
「にんじん!」
次の瞬間、浮遊感を受け、続けて気持ちの悪い揺さぶりが始まった
「タイラー!しっかりしろ!
この馬鹿たれが!」
「んぇ?」
気がつけば目の前にイバさんとケイチョウさんがいた───ゴルドさんに担がれ地下2階を進んでいたのだった
◇◆◇◆◇
残弾数───少ない




