『万能なだけの指輪』
◆◇◆◇◆
テールの地下2階について早々スライムの弾む音が聞こえ、ナイフを抜き構えるが違和感を感じる
「タイラー?」
「近くにいるんですが」
通路から足音が聞こえる。それに
「…」
「どうした?」
真っ直ぐこちらに近づいてきている
「いや、なんか大勢の」
「テールの2階にか?」
「はい(ってそっか)
ゴルドさんも会ったことがあるはずですよ」
「…あぁ」
テールの地下2階、人参が手に入るこんな所でパーティで活動する人達なんて僕が知る限りあの人達しかいない
「え?タイラー?」
「にんじんの人!」
「…!(まったく)」
眠りスライムが突っ込んできた。仕方なくナイフを構えて眠りスライムの突撃に合わせる形でナイフを振り切りイバさんにしてやられたことを察した
眠りスライムの身体は抵抗を受けつつもナイフを受け入れていく、スライム種の扱いに慣れたものでナイフの角度をできるだけ真っ直ぐに保てば手首の負傷なく振り切れる
「にんじん!」
「はは…」
仕方なくとは言え彼女たちの獲物を倒してしまったわけだ。何というか、小賢しい…そういうのは嫌いではないけど
時と場所を考えて欲しいものだと思う
「イバ!行儀が悪いぞ!」
「お久しぶりですケイチョウさん」
「低◾️◾️君久しぶり」
人参を黙々と食べるイバさんはさておき、ケイチョウさんに挨拶をする。特に変わりなさそうで安心した
「ケイチョウ、低◾️◾️と知り合いか?」
「あぁ」
「…」
ん〜名乗っておくべきかな?元々関わり合うことがあるとは思わなかったから言わなかったけど、なんかモヤモヤする
「名乗り忘れていましたね、僕は…」
「違う、にんじんの人」
「(ふぁ!?)」
僕が名乗ろうとした横からイバさんが人参から口を離して3人組に叫ぶにしては小さく、囁くというには大きな声でそう言った
シャレにならない威圧感。何だこの凄み
「イバさん?」
「にんじんの人か…」
「…ッ」
ケイチョウさんまでも僕をにんじんの人って言い出して吹き出しそうになる。これは恐らく直訳されてる弊害かな
てか『にんじんの人』って何だよ
「イバ氏が低◾️◾️庇うとは…」
「そうだぜ?」
「ギョウシ、チンモク
にんじんの人…いい?」
「了解」
「っ…おう」
ふむ、どうやらパーティ内でのパワーバランスはそれ程均等というわけではなさそうだ。シセンさんにチンモクさんは友人とかかな?ケイチョウさんは兄貴分というか何というか?立ち回りが柔軟だ
◆◇◆◇◆
テールの地下2階でイバさん達とばったり出会した
「それにしてもニンジン
イバに相当気に入られてるな」
「気に入られてるというより
人参を気に入られてますね」
「いやいや、あの感じだと
お前のことも気に入ってるぞ?」
「…」
気に入られてるねぇ
「きっかけはニンジンだろうけどな」
「違いないですね」
6人の大所帯で進んでいく
「っとそうだ、ニンジンこれ」
「え?」
ケイチョウさんはそう言って『竹槍』を僕に手渡した。硬布で補強した『竹槍』は僕がいつぞやなくした『それ』だった
「それあんたのだろ?」
「もう、戻ってこないかと思ってました」
「付き添いの子で手一杯だったからな
次は無くすんじゃねぇぞ」
「ありがとうございます」
「…となると、あの時の
ニンジンの代金も払わないとな」
「あの時?」
「竹槍と一緒に残したニンジンのことだ」
「…(まさか?)」
「むぅ?」
『あの時』───初めて眠りスライムと戦い"やぶれかぶれ"ながらに勝利してドロップした人参
「あれからというもの
時間があればここに来る始末でな」
「…となると、よく会うのも?」
「あんたのドロップ目当てだな」
イバさん、故意犯でした。人参のたかり屋め!
「その感じだと、厄介になってるみたいだし」
僕の呆れにケイチョウさんは苦笑いを浮かべつつ『何か』を取り出して僕に差し出してきた
「イバがこれからも迷惑をかけると思う
これまでのお詫びってことで」
『何か』───指輪だった
「指輪ですか?」
「『インデックス・リング』っていう代物だ」
『インデックス・リング』───指につけることで様々な効果を得られる装飾品。効果はつける指によって変化する
「凄い指輪ですね」
「すまんな、こんなものしかなくて」
「と、いうと?」
「特化した装飾品には効果量で劣るんだ」
「それでも凄いです」
手のひらの輪っかを眺める飾り気のない無地の金の指輪。重さは数グラム。重さはあまり感じなかった
「本当にいいんですか?」
「あぁ、これからもイバと
仲良くしてやってくれ」
◆◇◆◇◆
つける位置による効果の指導を受けて
『インデックス・リング』
───右手の中指に装備中




