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『わりかし致命的な体質』

◆◇◆◇◆


「っおぇ…」


 視界がぐらつき、意識が一瞬トビ、頭が急に痛くなった


「タイラーさん!」


 それと引き換えに五感が敏感になったのか、振り下ろされた直剣が空を切った音が鮮明に鼓膜を叩いた


 一瞬の間『迷宮病』に似た感覚を受けた


「この世界にもゴキブリがいんのかよ」


 回復───立ちくらみからの回復に似た感覚を受けた。全身が膜に包まれた様な痺れる感覚。しかし、視界が戻る間も無く再び『罹患』した


「っやべぇ」


 シャメルさんも対応できていないらしい、肌が直剣の起こした振動を感じとった。それと同時に分かるのは『ゴキブリ』の場所だった


「うぜぇ」


 直剣の起こす風と陰を見てから回避余裕とばかりに地面を以前トップスピードで走り回っている。はっきり言って不快極まる


 頭のネジがイカれてる。今思考を満たしている考えは一般的に見て馬鹿げてる発想だ。自覚しているがこれ以上アイツを野放しにしていると頭が割れて中身が溢れそうだ


「耳を塞げ!」


「…」


 返事は待たない。鞄から引き抜いた銃を2発使った


◆◇◆◇◆


 1発目、階段に向けて発砲。命中させるための犠牲───騒音により近場でうろちょろしていたゴキブリが動きを止めた


 2発目、ゴキブリに向けて発砲。小さい標的当てられる様な腕前があるとは思えないが『射る』───確信が指先の引き金を引く躊躇を捨てさせた


『ジッ』という何か小さいものが轢き潰された音が鼓膜に届いた


◆◇◆◇◆


「はぁ…はぁ」


 手のひらが痺れる感覚を受け、掴んでいた銃が擦り落ち『ゴッ』と鈍い音が聞こえた


「た、助かりました」


「…っおぇ〜」


「タイラーさん!?」


 とてつもない倦怠感により僕は嘔吐した


◆◇◆◇◆


「大丈夫ですか?」


「はい、一応は」


 鞄を枕がわりに迷宮の天井を眺める休憩時間。なんてスッキリしない時間だろうか


「タイラーさんって魔力が少ないんだね」


「魔力欠乏症って言われましたね」


「!…魔力がないんだ」


「はい」


「じゃあ、さっきのは魔法じゃないの?」


「さっき、銃ですか?」


「?そっちもだけど…

 まぁこのジュウって何?」


「えぇっと」


 どう話したらいいんだろうか?火薬とか言って通じるんだろうか?そもそも僕も知らない。説明できるだけの理解がある訳でもないし


 この世界に来て使っただけだ。しかもたったの3回だ。どう言えば伝わるのだろうか?僕は必死に考えて、搾り出した言葉で言った


「…弓、ですかね」


「弓?クロスボウより小さいこれが?」


「…ですね」


「へぇ、私も使える?」


「使えますが、限りがあるので」


「そうなんだ、便利だけど

 うるさいのはダメだね

 パーティ組む時は事前に知らせるのが良いかも」


「そうですね」


◆◇◆◇◆


「お手数おかけしました」


「まぁ、仕方ないよ

 ゴキスライムだし」


「(まんまの名前なのね)」


 体調が戻り、地上に戻ることになった。シャメルさんに謝罪をしたものの『魔力欠乏症』について教えられる形で撤退の重要性を話してくれた


「魔力欠乏症って言っちゃえば自分で

 魔力を作れないの」


「魔力を作れないとどうなるんですか?」


「ひとつは状態異常に確実に掛かる」


「確実に?」


「対策しないと確実に」


 これは地下3階に行く前にどうにかしないと


「ふたつ目は魔力依存が激しくなる」


 聞きなれない語句が増えていくな。単語それぞれで意味は推測できるが過信は禁物だ


「魔力依存?」


「魔力を他から補填して

 道具の劣化が速かったりするの」


「なるほど」


 ほれ見たことか、聞いてて良かった。となるとナイフが刃こぼれし易かったのはそれが原因かな?気になるところだ


「地上だと大丈夫だけど迷宮の中じゃ

 魔力をモンスターに割かれて

 纏ってる魔力を全部持って行かれるから

 気をつけて」


 ひとりで迷宮に潜る危険性がまたひとつ増えてしまった。2人一組でこれからも潜らなければグレーさんに迷惑をかけてしまうな


「はい、気をつけます」


◆◇◆◇◆


 残弾数19発

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