『手のひらに収まる凶器』
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「…」
3人を宿まで見送った後の就寝前、意を決して『それ』を取り出し、迷宮へ向かう
大体1kgかそれよりやや軽い、興奮か恐怖か身体が震えつつも両手でしっかりと構える。聞き齧った程度の安全措置。引き金には指を掛けずに
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熱を帯びる肌と静かな迷宮、風邪に似た何処か落ち着かない感覚のままに進み続ける
モンスターが出てきて欲しいと願う一方で出てきてくれるなと矛盾を手の中で抑え込む
「…ッ」
されど、ここは迷宮程なくすればモンスターと対面することになる。駆け引きなどなくただ現れた『スライム』を前に固唾を呑む
手を前に突き出し視界に入る真っ黒で無骨な見た目の『銃』。指を掛けただけでも分かる引き金の重さは生殺与奪を決めかねない選択肢のひとつ前に設けられた申し訳程度の壁に思えた
早まる鼓動を押し殺し、呼吸を殺し───迫るスライムに目掛けて引き金を引いた
「…」
呆気なく放たれた銃弾。槍や剣で苦労する相手ではないスライムだったが、それ以上にあっさりと『もやし』に変わった
僅かに軽くなった手の中の凶器と想像していたより軽い反動を受けた手を見る。手の痺れ───反動というより反動を相殺しようと強く握りすぎた結果の産物。普段使わない手の筋肉が『ビキビキ』と痛みを訴えてくる
「…んと」
銃の残弾を確認しようと色々試し、気が付けば自重で弾を保持するパーツが手の中に入った。銃本体が遥かに重いながら弾もかなり重く感じた
「(後何回使えるんだ)」
◆◇◆◇◆
初めて触れる火器を前に不安が増えていく───人数が増えれば自ずと役割の上限が生まれ、あぶれた者は他の役割につきバランスを保たねば崩壊してしまう
集団行動の危ういところだ
加わる3人、グレーさんを合わせ5人となった場合近接5人では通路の都合上無駄が発生する。内2人はいやでも遠距離、中央になるべきだろう
そうなった時、僕は他の人達より近接に向いているとは思えない。質や内容はともかくとして3人組の方が向いていると考えるのが無難
必然的に僕は近接以外につくことになる。そうなった時、銃は火力としては申し分ないのかもしれない。欠点があるとすれば
「(これは消耗品だ)」
残弾数───銃本体とそれが発射する『弾丸』、銃の弾は使えば無くなる。今あるのは21発、撃ち尽くせば攻撃手段として機能をなくす
「(気をつけて使わないと)」
補充方法『ハグレモノの討伐』───銃をドロップしたゴリラと再び戦わなければならないのかと思うと勘弁願いたい気持ちでいっぱいになる
あの時は上手くいったからと言って次もことが上手く運ぶ確証はない。2度と現れないことを祈るばかりだ
「…」
最後に分かったこと───拾い上げた薬莢は瞬きの後、忽然と消えた。皿と同じで手持ちに保持することはできないらしい
銃は『奥の手』として、中距離で扱える武器もしくは隊列を考えるのが良さそうだと思った




