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『僅かな違和感の正体』

◆◇◆◇◆


 ハグレモノ襲来の翌日、気晴らしにテールの迷宮で久しぶりに狩りをした。それと言うのもイバ───手刀女と鉢合わせする可能性が非常に低いと判断しての行動だ


「ん?」


 そこである違和感を覚えた。スライムの動きがやや遅く感じた。動きの軌跡に変化はなく、外見やドロップの内容に変化がある様にも見えなかった


「(動きに慣れたのかな…)」


 スライムの動きに合わせた反撃ができる様になっていた。竹槍とは違う重量の大きい銅槍を使用してだ。成長、とは少し違う異質な違和感を感じた


「(身体を何か変なものが

 覆っている感覚がする)」


 ゴリラと戦った時にも感じた。自分の把握している範囲以上の能力を行使できている事実


 普段であれば喜ばしいことだろう。これが数日程度の期間で起きたことに目を瞑ればの話だ


「(そう言えば)」


 ゴリラを倒そうとしていた手刀女、グレーさんの話を聞くに一撃一殺と思っていたがそれを何度も繰り返していた


 ゴリラは本来それ程の強敵なのだろう。マグロをドロップするゴリラはどれ程の強さなのだろうか?とても興味が湧く


 何はともあれ手刀とは思えない威力。イバの放つ手刀を避けて正解だったと改めて思う


◆◇◆◇◆


 何度かスライムを倒して実感へと至った。本当に僕は『速く』なっている様だ。身体全体の筋肉量の変化はなくただ『速く』なっている


 そんなことがあり得るのだろうか?と思ってはみたものの身近な良い例が思い浮かび納得するに至る───グレーさんだ


 小柄で筋肉質、痩せ気味とは違って明らかに幼いと言う印象を受ける外見。しかし戦闘において彼女の得物は言わずもがなウォーハンマーだ───戦鎚。戦場で見られる工具とは違って人体を破壊することに重きを置いた槌


 少なく見積もって80キロに届かんとするそれを両手ながら揚々と使いこなしている。とても身体の機能だけでは説明がつかない


「(久しぶりにアレを使うか)」


 四の五の考えていても埒が開かない。本来自身の成長なんてものは実感以外に知ることは難しい───しかし、この世界においてはその違和感を明確に知ることができる機能を用意してくれている。早速向かうことにしよう


◆◇◆◇◆


「『鏡よ鏡よ鏡さん

 私は今、何処にいますか?』」


 いつぶりかの『姿写し』に向き合う


〜『平良 清丸』〜


体力 D

魔力 H

STR E

VIT F

INT D

DEX C+(+1)

AGI C


〜『成長性G』〜


「…」


 DEX、機敏さ───動作の速さを指す。これの値に+マークと加算値?が追加されていた


 これではっきりしたことといえば値の法則性だ。テストなどでよく用いられるAに近づく程に評価が高いと言うことが証明されたと見て間違いない


 しかし、不思議なことに僕の他の値に変化はなく『成長性』に至っては『G』であることから望みは薄いのだろう


「(それでも成長していると言うことは)」


 成長性に依存しない値がこの世界に存在しているということであり、僕はその要因に身に覚えがあった


「(ニスペルヘイムの種か)」


『+1』この値の心当たりがこれしか思い浮かばなかった。他の人たちはこのことを知っているのだろうか。いや、恐らく知らないだろう


 よしんば知っているとして、それに該当する人達を僕は3人、一家しか知らない───アダムスファミリーだ


「(邪魔をされなければ良いか)」


 接触してくるかも知れない。ドロップひとつが成長に直結するという時点で口外されては問題が起きかねない代物であるが、もっとも僕から相手にアプローチする気は一切ない


◆◇◆◇◆


「眠」


 テールの地下2階でのこと───眠りスライムにあたり素早く距離を詰めたもののやはり強く催した眠気に踏ん張りへと切り替える


 速さが上がったとて眠りスライムの対策になると言うわけでもなかった。結局のところ『眠っても大丈夫な戦い方』がとても安定しているのは変わりなかった


「(どうしたもんかな)」


「にんじん」


「!?」


 びっくりした


「なんでここにいるんですか」


 人参の収穫を終え、次のモンスターを見つけようと振り返ったそこにはイバさんがいた


「にんじんあるところに私はいる」


 そう言うことらしい

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